ATI認定アレクサンダー・テクニーク教師によるピアノ指導

ピアノ演奏者が知っておきたいお得なこと・2

『親指で打鍵するときに、付け根から内側に入ってしまう原因と対策』

こんにちは。
「信頼される指導力と根拠のある技術を身につける!」ピアノ講師とプレイヤーを応援する 山本玲です。


演奏の際、1の指(親指)を打鍵するとピンと真っすぐな状態になり、付け根部分が毎回内側に引き込まれてしまう現象になる方がいます。
スフェラムジカの教室でもこの癖が付いてしまった生徒さんと時々出会う事があります。早い時期に気付いて意識と対策をすればそれほどの時間も掛からずに治るものですが、気付かずに使い続けると場合によっては痛みを伴うようにもなりますし治すのにも時間を要します。


今回は解剖学的なヒントから1の指(親指)の引き込み打鍵の対策について、書き留めておきます。

  • 原因は?
  • 引き込み状態になる事のデメリット
  • 対策は?



1の指(親指)の引き込みの主な原因は

幼少の頃は手を握るような動作(屈筋)が先に発達するらしく、1の指を打鍵しようとすると、得意な屈曲する筋肉が強く働いてしまうようです。それが癖となって大人になっても抜けない方が時々見られます。(人によってはこの状態をまむし指と呼ぶ方もいます)
演奏の際に掌にある太い筋肉(母指内転筋:下記参照↓)を使う癖がついてしまった事により起こります。

      右手(掌):母子内転筋


上記の筋肉状態が起こると、1の指が強く内側に引き込まれてしまいます。
低年齢の筋肉(骨も)が未発達な時期にピアノを開始した場合、ピアノという楽器が弦楽器と異なり子供向けサイズが展開していない為、負担が強いられるます。正確に身体を動かそうとするほど、脳は筋肉を固め同時収縮するという性質が人間の脳にはあるそうです。このことからも、頑張って強く弾こう!動かそう!とすればするほど筋肉収縮がつよくなってしまう幼児が少なくないようです。


引き込み状態になる事のデメリット

ここで1の指(親指)と2・3・4・5の指の筋肉のつながりについて研究された興味深い記事がありますのでご紹介します。

英語で指はfinger、親指はthumbと異なった名前で呼ばれますが、親指は、他の指の筋肉と解剖学的なつながりが無いので、親指は完全に独立に動くものと思われるかもしれません。しかし、親指を持ち上げると、人差し指も同時につられて上がろうとすることや、小指を伸ばす筋肉が同時に活動したりすることが報告されています。特に、手を開いた状態の方が、親指に他の指はつられやすいようです。これも、指同士が脳で独立していないことを示す証拠でしょう。(ピティナ㏋の古谷晋一氏の記事より抜粋)」

このことからも解るように、指を思い通りにすばやく動かすためには1の指の筋肉を不必要に多く使うことはデメリットとなります。

対策としては

手の重みを使って打鍵する(重力奏法)ことが望ましいのですが、筋肉も骨も未発達の幼児の時期は腕も軽いので大人並みの大きなフォルテは難しいことも理解してあげましょう。ついついしっかりとした音を強要してしまいがちですが、年齢に見合った音のバランスが大切です。不必要な筋肉緊張を引き起こさない事も大切ですが、本来1の指の打鍵の際にバランスよく使うべき長母指外転筋(下記参照↓)も意識を持たせるようにすることでバランスよい打鍵も可能になります。※同様に協力し合あって短母指外転筋も使われています。


右手(回外状態の手の甲):長母指外転筋
右手:回内状態(※実際に鍵盤に手を置いた状態  前腕の2本の骨がクロスする)           ※次回 詳細を投稿します。

また、この筋肉は1の指(手首近くの付け根から)を掌側から手の甲側に向かって回転させたり、手首を上向きに回転させたり(甲を伏せた状態から掌を返す動作等)することを助けます。
1の指の付け根部分が凹まず手全体を広く使えるようにする事で打鍵も容易になり、痛みもなくなると考えられます。
輪ゴムを1の指と5の指に掌側から掛けて長母指外転筋を意識して1の指を手首の付け根から甲の高さまでゆっくりと持ち上げる。
(「正しいピアノ奏法」 御木本澄子)
というエクササイズが効果的と思われます。

ここから左手です

⬇︎

ゴムを付けない場合でも1の指(親指)を2の指(人差し指)の第3関節(MP関節)の上にのせるような運動をするとよいでしょう。若いうちでしたら必ず治りますので諦めずに、新しい指の使い方を身体に覚えさせましょう。コツコツとがポイントです。

今回はとくに1の指について書かせていただきましたが、ピアノは指だけで演奏するものではないことも忘れないでください。

全身を協調させながらの演奏を楽しみましょう!

この内容を動画でもご覧いただけます:https://youtu.be/tNKo6VA03ZM