こんにちは。「信頼される指導力と根拠のある技術をを身につける!」ピアノ講師とプレイヤーを応援する 山本玲です。
演奏中のピアニストは多かれ少なかれ指や手そして腕を使う意識を常にもっています。鍵盤に直接ふれる身体の部分は指になるので上半身に意識をもつ気持ちは理解できます。「指や手・腕に集中する」という言葉で表現することもあると思いますが、一部分に集中するということは、その他の身体の存在を忘れている(意識から離れている)という事でもあり、身体全体を効率的にバランスよく使うことからは離れてしまっている状態になります。(もちろん、演奏家にとって指や手・腕の知識を豊富に持つということは大切です。)
下半身に関してはペダルを踏む時に多少の意識はしますが、関節(股関節・膝関節・足関節など)に意識をもったことはあるでしょうか?
一見、ピアノ演奏と関係のなさそうなこの股関節と脚(膝関節・足関節含む)ですが、上半身に意識が行き過ぎるために、ここを「なかったことにしている」演奏者が私の生徒さんにも多くみられます。股関節は上半身と下半身をつないでいる重要な関節で、互いに関わりあっています。もしここを「なかったこと」にしたり意識を向けなかったりすると繊細な動きで全身のバランスを保っている股関節が固まってしまい、股関節付近でつながっている腕の重要な筋肉をも引き止めて動きの可動域が狭まってしまう恐れがあります。
この下半身のマッピングと機能を理解することは動きの可能性を増やし、演奏の選択肢を増やすことにもつながります。では関節に付着し動きをもたらす主な筋肉を見ていきます。
股関節は身体のほぼ中央に存在し、上半身-下半身の様々な筋肉が付着しています。とくに注目してほしいのが大腰筋と腸骨筋。深層筋は身体の奥深くにある筋肉で筋肉、使っている感覚はなく疲れ知らずという特徴があります(インナーマッスル)(下図)。とてもお得な筋肉なのです。
「ピアニストは鍵盤のいろいろな場所で弾く時に身体を支えるために脚を使うことが出来ます。また体重が座骨ではなく、大腿骨の付け根に伝わってしまうように座っていたり、尾骨に体重が乗ってしまうような「背中に頼った姿勢」で座っていると脚は動かしにくくなります。座ることが快適ではなくなり脚の動きは制限され、ペダルに脚が届きにくくなり鍵盤も弾きにくく不安定な演奏になってしまうでしょう。
機能的に座るためにはお尻の筋肉の緊張を緩めることが不可欠です。そこの筋肉を緩めないと、体重は座骨に伝わらず脚の後ろ側に伝わるのです。体重が尾骨に伝わると腕と胴体の筋肉がそれをカバーしなければならなくなります。この「背中にたよった姿勢」は結果腕や背中の筋肉を緊張させ背中・肩・腕の痛みにつながることもあります。当然、演奏はその弊害を受けることになります」
ピアニストは、骨盤が後ろに傾かないように、股関節が充分に曲がっているか、腰が緩んでいるか、をいつも確認する必要があります。
トーマス・マークの〈ピアニストならだれでも知っておきたい「からだ」のこと〉から抜粋
深層筋は持久力のある筋肉で自覚をするのが難しい・・・ということで、演奏直前にここを目覚めさせる動きをご紹介。
①ピアノの椅子に座り座骨を軸に上半身を後傾させる。この時、脚は床から浮く⇩。
②今度は鍵盤方向に股関節を屈曲させ上半身を倒していく。この時床に脚・身体が乗っていることを感じる。下写真⇩
③椅子の上に座骨を感じるように座り、脊椎の上に頭をふわりとのせる。下写真⇩
④鍵盤の感触を感じるように触れながら弾き始める(曲の冒頭にもよりますが・・・)。下写真⇩
この一連の動きをすると、股関節の筋肉に思いをはせる努力をしなくても自動的に下半身がバランスよく動き始めます。
下半身を含めたことで、全身の筋肉が微細に働き、驚くほど軽いタッチで出したい音が出せるようになります。
是非お試しください。
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