ATI認定アレクサンダー・テクニーク教師によるピアノ指導

年齢とともに暗譜力は衰えるのか?

「若い頃は自然に暗譜が出来たのに、年齢とともに曲を覚えづらくなっている」と大人の音楽愛好家さんから相談を受けたり、諦めにちかいお呟きを聞くことがあります。音楽家に限らず「記憶力の低下」はちまたで飛び交うフレーズですが、これは年齢を重ねていく代償として受け止めなくてはならないのでしょうか?

もくじ
・そもそも暗譜をするメリットは何か
曲を暗譜する時に使う5種類の記憶
・記憶力の老化はあるのか?
・壮年期以降の暗譜の5つのコツ
・まとめ
そもそも暗譜をするメリットは何か

脳は視覚によって情報を得る時、非常に沢山の部位を使うと言われています。暗譜で演奏をしている時は、視覚からの仕事量を減らす事が出来るので、脳にスペース(余裕)が生まれます。その空いたスペースを音楽的な技術や他の仕事に使用することが出来るという訳です。ただ、楽譜を見ていた時に使っていた脳のスペースが空くことで、マイナス思考が入り込むケースもありますのでスペースの使い方には注意が必要です。

曲を暗譜するときに使う5種類の記憶

年齢に関係なく暗譜する・曲を覚えるためには5つの技術を使って記憶しています。

  1. 聴覚的記憶(耳から覚える)
  2. 視覚的記憶(目からの情報で覚える)
  3. 触覚的記憶(手の感覚から覚える)
  4. 運動感覚的記憶(身体全身の運動感覚で覚える)
  5. 概念的記憶(曲の構成や和声から覚える)

この上の5つの記憶技術は各々の・個性(得意不得意含む)・年齢によっても比率は変わってきます。(ここでは説明は割愛させて頂きます)今回は、この記憶を留めておく脳の方に話を進めていきたいと思います。

記憶力の老化はあるのか?

一般的に昔から、年齢とともに「忘れっぽくなる」「記憶しづらくなる」と言われています。たしかに映画や本のタイトル、知人の顔は思い出せても名前がなかなか出てこない経験は年齢を重ねると多くなっていきます。ただ、それが暗譜が困難になる事と単純に同じではないと思うのです。

脳研究者で薬学博士の池谷雄二さんも著書の中で「脳を詳細に調べてみると、神経細胞の数は歳とともに減っていきますが、シナプスの数はむしろ反対に増えていくことがわかる・・・・」と伝えていましたし「歳のせいで覚えが悪いというのは単なる人間の努力不足だ」とも仰っていました。(これは私も腑に落ちる)

そもそも人間は周囲で起こった全てを詳細に記憶出来るようになると崩壊してしまうので、無駄な記憶は消えていくようにデザインされています(短期記憶)。もちろん生死にかかわるものや感情とともに印象に残った出来事は長期保存されますし(長期記憶)興味があるものに対しても長期保存されやすいと言われています。学校の勉強は覚えるために復習を重ねていくことが必須で、その努力から記憶が定着していきます(個人差かなりあり)。これは記憶を覚えようとしつこく繰り返すことで脳の中の海馬(記憶するかどうかを取捨選択する脳の場所)が「こんなに何度も重ねて記憶しようとするものは、生死にかかわる重要なものに違いない」と誤解して長期記憶に入れるからだそうです。また、勉強することに興味がある人(学ぶことに刺激を感じる人)が少ない時間で記憶が定着するのは「脳は興味を持っている事柄に関しては長期保存されやすい」という理由からかもしれません。

学生時代と比べると、壮年期以降では置かれている生活状況ややるべきことも変わっていきます。使わない情報やあまり関わりのなくなった人の名前は海馬が必要性を感じなくなって取り出しにくい場所に保存するという選択をしているのかもしれません。以前はPCと同じで脳も保存しておく容量があると言われていましたが、「スマホ脳」の著者であるアンデシュ・ハンセン医師の「最強脳」によると実は記憶の容量の限界はないそうです。ただ、情報が飽和状態になって取り出しにくくなってしまう懸念はあるということです。

壮年期以降の暗譜の5つのコツ

上でも触れましたが興味を持っている度合いが強ければ強いほど記憶は定着しやすいという事を利用し、曲に取り組むときは「嫌々」ではなく「ワクワク」の感情と共に出来るようセルフコントロールしましょう。年齢を重ねていくと経験値からもリスクのあることは避け、行動や感情のエコ化傾向が強くなっていきます。ここが記憶の定着をしづらくさせている要因の一つだとも私は思うのです。

また脳に多量の血が流れる状態に持っていくために運動を積極的に取り入れましょう。アンデシュ・ハンセン医師は運動をすることで脳細胞間のつながりが強化され記憶力が向上することを著書の中で伝えています。脳に酸素が供給され、身体に前向きな影響を与えるような化学物質やホルモンの分泌が促進されるされるそうです。ハーバード大学で精神医学を研究しているジョン・レディーもスポーツ選手が対象ではありますが、ある調査を行いました。その結果、運動の後にドーパミン、セロトニン、ノルエピネフリン(これらは幸せの化学物質と呼ばれている)が増えているという事を発表しています。このように運動は新しい情報を受け取ったり、記憶を作ったりする準備を整えてくれる最高の秘策と言われています。

以上のことと実際の経験も踏まえたコツ5つ

  • ワクワクする目標を設定する
  • 繰り返し記憶に定着させるのはどの年代でも必須(脳をだます)
  • 発表の場を作る(日常とは異なる場に跳び込む・刺激
  • 日々の出来た事柄を素直に認め喜ぶ(それがたとえ小さな事であっても)
  • 暗譜する前や練習前(または後)に運動を取り入れる脈拍が少し上がる運動を30分程度、長期間続けることで1日中効果が続くようになる)
まとめ

加齢のせいにするのは簡単です。大前提としていくつになっても暗譜は可能だと信じることが大切なのではないでしょうか。悪しき思考の習慣で効果が半減し、時間の無駄になることは避けましょう。

常に新鮮な気持ちで物事に取り組む という事が記憶を定着させるポイントになります。その年代、生活にあった、自分に合うベストな記憶の方法を探求すること、そしてそのプロセス自体を楽しむ事が秘策と言えそうです。

そしてこの暗譜演奏時の脳の「空いたスペースの使い方」と「刺激」を実践し、自分に向いた方法を探求するWSもご用意しております⇩

浜松開催

3/19(日) 13:30〜16:00

場所:クリエート浜松(浜松市中区)

対象スフェラムジカのレッスンを過去に受けたことがある方成人の演奏者(又は3月までにプライベートレッスンを受ける予定のある方・ピアノ以外の演奏も可能です)

参加人数:6名➡残席3名様

参加費:2.000円

演奏時間:1曲5〜10分前後まで(人数によって変わりますがら短い分には構いません)

※県外からのご参加ももちろん可能です。

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