ピアノ演奏者が知っておきたいお得なこと・14

練習中に腰が重くなる方へ

こんにちは。「信頼される指導力と根拠のある技術を身につける!」ピアノ講師とプレイヤーを応援する 山本玲です。

長時間練習を推奨するわけではありませんが、中上級者であれば普段のピアノ練習に1時間~3時間続けて行うことは珍しくないことだと思われます。曲のタイプにもよりますが手・肩の疲労の次に長時間の練習で腰の違和感痛みを覚える方が多いようです。

また、緊急事態宣言の外出制限のなかでピアノに向かう時間が増えた方もいらっしゃるでしょう。今回はピアノ演奏の際軸と腰の骨(腰椎)、それを支えている筋肉を知り、座って快適に演奏するということを考えていきたいと思います。

目次
1.椅子のポジションはミドルCの前?
2.まずは軸骨格の仕組みと役割をを知る
3.腰椎を含むしなやかに連なる脊椎を知る
4.演奏時の軸骨格と腰の筋肉はどうなっているか
5.他の選択肢も考える
6.まとめ

※要点のみ知りたい方は1・2・3・は読み飛ばしてokです。

椅子のポジションはミドルCだけではない

鍵盤は直線状に88鍵・123cmにわたって並んでいます。現代のピアノ学習では真ん中のド(一般的にミドルcと呼ばれている)から一音づつ増やしていく学習法が一般的なこともあり、ピアノの椅子はほぼ真ん中に設置しそこの位置に座ることがごく当たり前とされています。

ただこれは初級ピアノ学習者の曲には当てはまりますが、中級上級になると曲によって頻繁に使われるポジションが異なります。にもかかわらず、初級者の時のポジションのまま弾き続ける方は専門的に学んでいる演奏者にも非常に多いようです。

では高音⇄低音と遠くの鍵盤を弾く際に軸骨格や骨盤がどのように動いているのか見ていきましょう。

まずは軸骨格の仕組みと役割を知る

人の骨はざっくり2つに分けられます

  • 頭と軸=軸骨格
  • 腕と足=付属骨格

今回のテーマである腰にある腰椎が含まれる軸骨格頭蓋骨(咽頭の骨も含む)・脊柱肋骨及び胸骨の体の長い軸に沿う骨すべてを含みます。(幻のツチノコ体系を想像させる図⇩)

付属骨格なしでも生きていくことは可能ですが、この軸骨格なしでは生命は維持できません。

         軸骨格
     画像はvisible bodyより引用

腰椎を含むしなやかに連なる脊椎を知る

                脊椎を右側から見た図
             ⇦背面         前面⇨

上の図は右側から見た脊椎(背骨)の図です。とがった恐竜の棘のようなものが背面になり、身体の中心部分には積み木(orだるま落とし)のような円柱状の椎骨という骨が椎間板というゼリー状の弾力があるクッションを挟んで24個重なっています。魚類はほぼ同じ太さの骨が連なっていますが(重力が上からかからないため椎間板の必要もなし)、人類が直立して生活するようになり、重い身体を支えてバランスを取るためにこの緩やかなカーブと下にいくほど太くしっかりとした椎骨が出来たのだそう。

・頸椎・・とにかく自由度高い万能選手たち、前後に曲げ伸ばし・左右に側屈・回旋もできる・2個の関節面で頭蓋骨を支えています

・胸椎・・・回旋が得意・✖棘の形状から後ろに反ることが出来ません(胸椎の下2つは後ろに反ることも可能で万能選手ともいえます)

・腰椎・・・前後に曲げ伸ばし・左右横に側屈・✖回旋(ねじる)はほぼ出来ません

※椎間板ヘルニアに頸椎腰椎部分で起きるのは、よく動く部分なので椎間板への負担が大きいから   by解剖学者:坂井建夫氏

体重を支えているのは棘の部分ではなくこの円柱状の椎骨と椎間板だという事や、脊椎は一本の棒ではなく沢山の椎骨とクッションの役割をする椎間板がしなやかに繋がりS字型を描いた骨の集まりであるという事、腰椎はこの連なりの一部という事を意識することだけでも動きは変わっていくでしょう。

演奏時の軸骨格と腰の筋肉はどうなっているか

ここからはいよいよ演奏の際の身体を腰回りを中心に見ていきましょう。

ミドルcポジションの中央に座った場合で、指の届かないポジションに指(腕)を持っていった場合を探求します。

今回は高音域を弾くために腕をそちら側へ持っていきます→腕だけでは届かないと確認した時点で(もしくは予測した時点)→腰椎は右へ曲がっていきます(赤色の部分はこの時に使われていると思われる筋肉群)⇩

もう少し身体の奥深くを見てみると、腰方形筋という身体の奥深くにある筋肉(ここでは薄ピンクで示されてます)が側屈を手伝っています⇩。

       腰方形筋(右のみ)

腰方形筋は脊椎の左右に付着していて、片方づつの収縮で体幹を側屈させます。この筋肉は脊柱の安定性に重要な役割を持っていて、どちらかがたくさん働いていたり、また逆にどちらかが弱くなっていたりすると骨盤の高さに左右差がうまれて痛みを発生させたりするようです。

その為、高音域にばかり、もしくは低音域ばかりに偏って腰を側屈させていると腰方形筋の左右差が生まれて重くなったり痛みをもったりするようです。(ゴルフのスイングや野球のバッティングも同じ方向へのスイングのためバランスが悪くなるので要注意)

今回はこの筋肉の使い方による痛みに焦点をあてていますが、筋肉以外の故障で痛みを引き起こす場合もありますので(ヘルニア他)痛みが出た場合は医療機関で診て頂くのが大前提ということをお忘れなくお願いします。ピアノ演奏の場合、もちろん癖もあると思いますが、どちらかに偏って演奏する曲の場合は、練習後に使った腰方形筋とその反対側のストレッチも忘れずに行うことをおススメします。(ストレッチは様々な方法があります。私が行っているストレッチはまた後日アップしたいと思っています)

他の選択肢も考える

選択肢1:座るポジションを変える

ピアノ演奏時もそれ以外もですが、椅子に座るときは坐骨2点と脚2点の合計4点で上半身を安定させます。(厳密には坐骨の前側部分で座ることを意識します)。赤く囲んだ○の部分

ただ、鍵盤の中央からかなり遠い部分まで指を届かせるのに両方の坐骨にバランスよく乗り続けるのは、よほどの体格の持ち主か、極端に、腕が長い方でない限り無理があります。そこで一つ目の選択肢としてはミドルcポジションの前に座る事に拘らず、偏りがちな音域の方に少し座る位置(坐骨の位置)を移動させるのはどうでしょう?ほんの数センチでもかなり腰の負担が変わることが分かると思います。

選択肢2:脊柱起立筋も使い、行きたい方向に上も加える

またミドルCのポジションの前に座ることを選択される場合は高音低音時に座骨の両方の2点に座り続けることに拘らないようにしましょう。時には座骨のどちらかを離し、脊柱起立筋という重力に逆らって上方向に向かう(側屈も手伝う)筋肉群を使いながら指のリードで弾きたいポジションに移動することも選択肢の一つと言えます。その時、脚の支えは多いに活用しましょう。

脊柱起立筋群(棘筋・最長筋・腸肋筋)
作用:身体を上方向に伸ばす・身体を横に曲げる(側屈)

まとめ

まずは身体の中で何がおきているのかを知ることが大切です。そのうえで、座るポジションを曲によって変えることも検討しましょう。人の身体は基本的に頭のてっぺんからつま先までの全身を使って動かすことでバランスを取っていることも忘れずに、可能な限りの選択肢を出し、実験し、その時の自分に合っている場所を見つけることを怠らずに探求してください。