こんにちは。「信頼される指導力と根拠のある技術を身につける!」ピアノ講師とプレイヤーを応援する 山本玲です。
ピアノは指や腕以外にも他の楽器と同様に頭から足の先までの全身をバランスよく使って演奏する楽器です。それを前提に今回はピアニストが最も気にする指(手)と腕についての知識をアップグレードしていただきたいと思います。
普段「指の付け根」と呼んでいる「指骨」の始まりは下の図の➡だと認識している方が多いようです。ピアノ演奏で「オクターブが届かない」とお嘆きの方の多くは、この➡から指を広げようとしている傾向が強いです。(もちろん生まれ持ったサイズが原因の場合もあります)
でも、実際はもっと長く、掌の中の➡から指骨は始まっています↓
指先から手の甲の方向へと反対の手で触ってみても指の骨の長さを感じることは出来ます。ちょうど手首にあたる小さな骨が8個集まるところで突き当たるのが分かるでしょう。本来の指の長さにマッピングが書き換えられることで、指の可動域が広がり、オクターブや広い音域の和音が掴みやすくなります。また打鍵する際、骨同士が関節を通して支えあっていることを感じることで今まで筋肉頼みになりがちだった鍵盤を支える仕事を、骨に任せようという意識が生まれます。(筋肉の過剰な緊張を緩めることで、指がしなやかに俊敏に動く準備も可能になります)
手の中にある筋肉はほぼ掌側に集まっているそうです。骨間筋・虫様筋等といった多くの内在筋があり、ピアノ演奏の際の微細な動きを助けます(開いたり、閉じたり、指をくぐらせたり、またぐような動作、打鍵する際に張りを持たせたり等々)。また甲には腱が通っていますが筋肉の本体は存在しません。(この甲の腱は前腕へとつながります。この前腕に存在する筋肉が指の伸展を担当しています・腕の説明は下へ)
「腕はどこからでしょう?」と生徒さんに尋ねると、大概⇩肩の先を指す方が多いのですが実は腕はここからではありません。✖
腕の正確なマッピングは⇩こちら◎
鎖骨と肩甲骨(後方にうつる逆三角形の骨)も含めたものが腕全体をあらわします。鎖骨の先端(喉の下のくぼみの両サイドにある骨)に触れながら腕を大きく動かしてみると連動して鎖骨も動いていることがわかります。指先から鎖骨と肩甲骨までの長さと関節のつながりが在ることを意識して演奏することは、本来の腕の長さと機能を取り戻し、演奏の可能性を広げるでしょう。関節の部分は電車でいう連結部分です。決して固定することなく自在に動けることを意識することが大切です。腕を交差させて打鍵する時や体幹から遠い鍵盤などを打鍵する際はこの認識が演奏を助けてくれます。
前腕の骨は一本ではなく2本です(小指につながる骨は橈骨・親指につながる骨は尺骨)。2本あることでドアノブを回したりぞうきんを絞ったり、鍵を開けたり閉めたりが可能になります。
ピアノ演奏の際はこんな状態になっています⇩
ピアノを弾くときは2本の骨は回内といって
橈骨が尺骨の上に覆い被さる状態になります。
どちらの骨も緩いカーブがあるため
接触することなく動きが可能にデザインされています。
本のページをめくるのもこの2本の骨の回内・回外にあたります。
ピアノの演奏ではトレモロの動きをするときなどに意識して使うと、指のみを使って弾くときと違い、少ないエネルギーで演奏することが可能になります。
指を曲げたり伸ばしたりする(屈曲・伸展)筋肉はほぼ前腕にあります。
数十年前に主流だった指先を立てて上下に大きく動かすような打鍵(ハイフィンガー奏法)を習った方も多くいると思います。この奏法は前腕にある筋肉を多用するので長時間の打鍵で前腕に疲労を感じる方も多いようです。またこの筋肉の先は腱になって手首にある腱鞘と呼ばれるトンネル状の組織(上図の薄紫の部分)を通って指に付着し動かします。腱と腱鞘が頻繁にこすれあうことで炎症を起こし痛みを引き起こすこともあるので(腱鞘炎)酷使しないよう注意が必要です(「演奏家の手の悩み」酒井直隆より抜粋)。
指や手、腕には他にも観察すべき関節や筋肉は沢山ありますが、はじめにお伝えしたように、ピアノ演奏に必要とされるものはこれに留まりません。身体それぞれの持つ本来の機能を正確に理解することは技術習得の道しるべや近道となりますが、特定の部分のみに意識を集中させるのではなく、身体全体をバランスよく使うことが重要です。是非、知識の引き出しの種類は多く持ち、その状況に応じて使い方を選択して頂きたいと思います。
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