こんにちは。「信頼される指導力と根拠のある技術を身につける!」ピアノ講師とプレイヤーを応援する 山本玲です。
瞬時に音量を増やす場合はそれほどの苦労はないと思われますが、その逆で瞬時に(「間」も取らず)音量を減らす技術に苦労する方は多いと思います。(私も現在、バッハ・ブゾーニの「シャコンヌ」に取り組んでいて、92小節目から93小節目に入るところで実験中)
呼吸で対処する、イメージを用いる、身体構造を考える、と対処方法は様々ありますが、ピアノ演奏における、デクレッシェンドや「間」さえも取らない急激な音量の変化の考え方と対処について、私なりの方法お伝えしたいと思います。
ピアノの音の強弱は打鍵の落下スピードで決まります。強く出したいときは➡落下スピードを速く、逆に弱い音が欲しい場合は➡ゆっくりと落下させ打鍵します。もちろん、一定以下のスピードで打鍵すると打鍵されたハンマーが弦まで届くことが出来ず撥弦出来ないので注意が必要です。
ちまたでは「脱力」という打鍵がブームとなっていますが、正確な表現ではないので、もう少しだけ具体的に順を追って起こっている事を説明すると・・・
・重力を利用して指と腕を落下させ➡鍵盤に落ちる瞬間に数多くある指の伸筋と屈筋を拮抗させて張りを持たせて打鍵します。腕にある指の筋肉は疲れやすいので手の中にある骨間筋や虫様筋を主に使うのがよいでしょう。(もちろん使用するのはこれのみではなく全身にある他の筋肉も少しづつバランスよく使います)
・さらに音量が必要になるときは肋骨のサイドにある前鋸筋(別命ボクサー筋)を取り入れます。前方に突くようにスピードを上げて打鍵をするとさらに音量を増すことが可能になります。
前鋸筋は肩甲骨を前方にスライドさせる働きがありますが、腕立て伏せなどをする際は僧帽筋と共に肩甲骨を固定させて身体を持ち上げます。私はこの腕立て伏せの時の肩甲骨の使い方をffの打鍵の際には使用しています。(肩甲骨を固定し腕を前方に突く動き)
弱い音が欲しい場合は➡スピードを落として落下させ打鍵します。この時肩甲骨を固定する筋肉は必要はなく重力を利用して落下させます。繊細に音が途切れずppを出すには、関節も脇も緩んだ状態であり、なおかつ腕は鎖骨から指先まで続く長い部位だと正確にマッピングすることも大切です。
指や前腕だけに注目しがちな、強弱のコントロール。もうご存じの通り鍵盤に触れている指から遠く離れた軸骨格の影響が非常に強いです。
ffで使われた肩甲骨周囲の筋肉の張りを緩め➡ppに入るということ。これは理解できることですが、これを瞬時に行うという瞬発力が容易ではない。ましてや緊張を伴う本番となるとなおさらです。
そこで⇩
①トップジョイント(脊椎の一番上にふんわりと頭をのせ)を意識。
まずは身体本来の機能を充分に使えるスイッチをオンにします。(それについての解説はコチラ)
②胸郭に固定された肩甲骨を解除(前鋸筋と僧帽筋中部繊維を緩め、動けるようにする)
この二つを同時にしかも瞬時に出来るようになるには、ある程度の習得期間は必要ですが、確実に音色に変化が表れるでしょう。
このケースもそうでしたが、問題が改善しないときはその問題箇所付近にある筋肉よりも、離れたところに問題が隠れているというケースが多いという事も知っておくとお得です。