こんにちは。「信頼される指導力と根拠のある技術を身につける!」ピアノ講師とプレイヤーを応援する 山本玲です。
アレクサンダーテクニークを取り入れたレッスンの現場で頻繁に聞く声掛けが、この「頭が動けて身体全体がついてくる」であることは間違いないでしょう(多少の言葉の選択は異なるかもしれません)。
実は人間本来の機能を最大限に生かす仕組みがこの頭と脊椎の関係に隠されているようです。
アレクサンダーテクニークには7つの原理があるのですが、この頭と脊椎の関係はそのうちの一つで、プライマリーコントロール(人間に本来備わっているバランス調整機能)と呼ばれています。この頭と脊椎のある関節を押し潰すように固めてしまうと本来備わっている機能である動きや演奏(思考も含む)が難しくなります。もちろん、固めたままで練習を積んで(悪しき習慣)しまってもある程度の成長や向上は望めますが、自分自身の100%の力を発揮することは出来ません。これが起きている関節は環椎後頭関節と呼ばれ(下の赤➡の箇所)両サイドの耳の穴を結んだそ真ん中の位置に存在すると言われています。
脊椎動物は「恐怖反射」(びっくり反射とも呼ばれる)という本能を生まれながらに持っています。敵に襲われたときに本能的に「固まる」というアレです。
野生動物のケースでお話しすると、草食動物(被食)が肉食動物(捕食)を見つけた際にとっさに起こる身体の現象です。逃げる➡闘うの前に起こす行動で、頭と脊椎をギュッと押し固めることで身体の動きを止めます。先ずは気配を消すことで捕食動物に気づかれずにやり過ごすという生き残るための第一の行動とも言われています。
高度に成長を遂げた哺乳類の私たちは、現代でこそ猛獣に襲われる心配はありません。ただ、いつどこで襲われるかもしれないという危険察知能力の遺伝子が優れているものだけが生き残り、現代の人間の本能に受け継がれているため「恐怖反射」「びっくり反射」はスタイルを変え、根強く残っているのが現状です。唐突に何か物が飛んできたときのとっさの動き・親や教師に怒鳴られておびえた子供・ステージで演奏する際の過度な緊張状態などでも、かなりの確率でこの反射が起こっていると言えます
動物の骨の周りには、身体を動かすための筋肉が300種、650個もあり、その一つ一つの筋肉の先が腱となって骨に付着して機能しています。様々な分類の仕方がありますが、筋肉の深さで分けると表層筋と深層筋に分けられます。下図は背面の表層にある筋肉。使った感覚がダイレクトに判るのが表層筋で、瞬発的な力を発揮します。
表層筋を何枚も剥がしていくと、深部に持久力はあるものの意識しづらい深層筋が表れます。これは後頭部の例で最も深いところに存在する後頭下筋群⇩
人間(脊椎動物)は 各感覚器官からの刺激を受けてバランスを保っています。また全ての筋肉の中には筋紡錘という身体のバランスを脳に知らせるセンサーが存在しているそうです。歩く時にも脚だけではなく身体全体の筋肉を微調整して助けてくれるのでロボットのような不自然な動きにはならず、バランスの良い自然な動きが可能になるのはこの機能のお陰のようです。後頭下筋群は数ある筋肉の中でも筋紡錘が多く存在するところになります。後頭下筋群は頭部から首の骨上の1番目と2番目の骨にかけてつながっている最も深いところにある対の4つの筋肉の総称です。深層筋なので感じることは出来ませんが、身体の動きを意識することなく微調整してくれる高機能センサーを所持する筋肉群になのです。日常生活で無意識に微調整を行っていて、頭と首を繊細に保つ働きを助けてくれているとても重要な部分にあたると考えられています。
この後頭下筋群の機能を理解することでも、アレクサンダーテクニークで言われている「頭が自由にいつでも繊細に動ける状態で、脊椎の一番上の関節にふんわりとバランスをとっていること」が身体全体を存分に使いこなせるという理解を助ける材料となるでしょう。
マッピングを正しく理解し、意識することは、人間本来の備わっている機能(プライマリーコントロール)を抑制することなく使える状態にに引き上げてくれます。これは演奏のみならず日常の動きや思考を最大限の状態に引き上げることが出来る身体の機能といえます。
まずは日常の動きから意識をすることが大切です!それが望む演奏につながっていくと私は信じています。