ピアノを弾く手って?

演奏するうえで知っておきたい身体のこと 第一弾 「ピアノを弾く手って?」の動画は、「手(指)」を動かしているの骨(関節)と筋肉にフォーカスした内容になっています。

手を故障しがちな演奏者の方、ピアノを習うお子様の保護者の方、また指導に関わる方の豆知識(ヒント)として活用してくだされば嬉しいです。

◍アレクサンダーテクニーク教師(ATI)資格取得のため実習の生徒さんを再募集します!

2015年より音楽家のためのアレクサンダーテクニークの教師資格取得コースにて学び、現在2つのコーチ資格を取得しました。さらなるステップとしてATI(Alexander Technique International)教師資格取得を目指し研鑽に努めています。

その資格取得の課題の一つとして、実習を予定しています。音楽家のためのアレクサンダーテクニークのレッスンに関心があり、プライベートレッスンを受講してみたい方を募集しています。※コロナの状況を踏まえ、現在の開催地は浜松のみでご了承ください。(24時間換気システムを取り入れたスタジオです)

【 実習レッスンを受けたピアニストMさんの感想 】

4月初旬から8月初旬の間、全講座を受講させていただきました。 講座は、私自身の悩みや疑問からアレクサンダーテクニーク(以下はAT)にテーマをつなぎ、学びを得るという形でしたが、私がテーマを出せなかった時には、山本さんが私の言葉から、具現化して学びにつなげてくださったので、自分では思いもよらないところから、深いATの考察ができました。 ピアノ演奏において、普段は、あまり意識したことのない身体の使い方や、精神面でのAT的な思考(演奏時のみならず、生い立ちによる考え方のクセ)にも触れることができ、自分を肯定することができたような?気がします。(ATなんですが、よく当たる占いで鑑定してもらった後の、すっきりした感覚に似ています。) 毎回、時間もあっという間にすぎてしまうほど、楽しく充実していましたし、ためになる資料も用意していただき、結果として、系統立てたATの学びができました。このことを軸にして、今後も、自分なりの、ATの勉強を進めていけたらと思います。ありがとうございました。

  • 音楽にアレクサンダーテクニークを活かしてみたい方(プロに限らず愛好家の方も含みます。)「アレクサンダーテクニークを使って演奏にさらに磨きをかけたい」「演奏の不安を取り除きたい」という願いのある方)
  • アレクサンダーテクニークのレッスンを継続的に受けたことがない方

〈条件〉

  • 2~3ヵ月の間に10レッスン(1レッスン・30分)を受けて頂ける方(連続レッスンもご相談に応じます)。
  • 10レッスン終了後に簡単な感想文をご提出頂ける方。
  • 浜松スタジオ(曜日時間は応相談)でご受講可能な方。

〈レッスン・諸経費〉

個人レッスン/30分×10回/¥25.000(現在の通常レッスン料金のおよそ半額となります。ご協力企画となっておりますので大変お得なレッスン価格です)

条件が可能な方で5名➡残り1名様(現在)にお願いしたいと思っていますので、まずはお気軽にお問い合わせ下さい。

お問い合わせはコチラに⇩

素足でペダルを踏むのはありか?

私は動画やブログで練習段階から靴を履くことをお薦めはしています・・・が、本来は素足好きです。ストッキングやソックスの締め付けが気なるので真冬以外は素足で過ごします。20代まではダンパーペダルも素足で踏んでいましたから、実家のペダルはかなり劣化していい味が出ています。(それもあって現在はスリッパ)。

ところで、もともとピアノはヨーロッパ生まれの楽器ですので、練習段階から靴を履いて弾くのが日常。日本人は室内では素足(もしくはスリッパ)文化です。練習は素足でも➡本番は靴になるので本番前の練習には工夫が必要になってきます。

ピアノのペダル操作を素足でやると、「脚が疲れること」「ペダルが劣化しやすい」というデメリットもありますが、直に感覚が伝わるということは調整をしやすいというメリットもあります。

私の結論ですが・・・本番で裸足で弾くという行為は選択肢としてはありだと思いますが、事前にホールの理解を得なければならないことと、聴衆に演奏以外の要素で刺激を与えてしまう場合があるという覚悟が必要です。(そのうえで素足で弾く選択をしたのであれば、疲れずに弾くコツを習得しましょう)

ペダルを快適に踏む動画も併せてどうぞ。⇩

・・・こぼれ話・・・

素足で弾く!という現代のピアニストで思い浮かぶのはアリス=紗良・オットさんです。なんでも高いヒール着用で本番を迎えたところ、脚がピアノの下に入りきらなくなってしまい、本番でヒールを脱いで弾いたことがきっかけだそうです。

「ピアノは好きだけど練習は嫌い」のサポート術

「ピアノ自体は好きだけど練習は嫌い」・・・これはピアノを演奏する人の多くが感じたことのある感情ではないかと思います。ピアノを教える生業を選んだ私でさえも、「練習しなくても、朝起きたら弾けるようになってる!」などのほぼあり得ない奇跡が起きてくれたらな・・・と考えたものです(真面目に)。今までのブログでも「練習」というワードの記事を数多く取り上げてきましたが、今回は弾く本人ではなく保護者や指導者のサポートする立場から「練習」を考えていきます。

生存と直結する次元ではないピアノ(生存と同レベルに考えられている方も勿論います)を習うという事は「好きか嫌いか」がまず大前提。「練習も嫌いで、ピアノも嫌い」という方には、他に打ち込めるものに時間を割いた方が有意義だとお薦めしますが、「ピアノは好きだけど練習は嫌い」の経験の浅い子供たちの「練習に対する嫌悪感」の理由をひも解き、ピアノ上達のために必要な「練習」にどう導けばよいか?を考えていきたいと思います。

※子供は個性もそれぞれですので固定された方法はありませんのでご承知おきください。

目次
1.楽な方に流れる生き物は人間だけではない
2.そもそもピアノを弾くとは 
3.「練習」の持つ言葉の意味
4.「練習」は量より質
5. 自分自身でどう弾きたいか?を考えられる子供に育てる
6. 小さな成功体験から自信をつける
7.まとめ

楽な方に流れる生き物は人間だけではない

元来、子供のみならず人間は「楽な方、楽な方へと流れる」性質がある生き物ですが他の生物にもこの傾向はみられるようです。

この性質の他の生き物のひとつの例として鶯がいます。鶯は「ホーホケキョッ」と美しく泣いてメスを獲得したり縄張りを守ります。毎年、初春には「ホーホケッケッ・・・」とダメダメサウンドだった鶯たちも、練習によって上達していくさまが我が家の周辺の木々の中からも聞くことが出来ます。これは練習して上達しないと生存していけないからだそうです。ただ、80年前に日本からハワイに渡った鶯は「ホーホピッ」と単純化された鳴き声が主流らしい。周波数や音階も日本のものと比べると単純で少ないとか。これは日本の鶯が季節ごとに移動や縄張り争いをするのに対し、ハワイは同じ場所に留まり、競争が緩やからだからと考えられているのだとか。練習しなくても生きられるのであればそれに越したことはないというのは鶯も同じだったようです。

ピアノを習う子供たちに話を戻します。幼い子供は瞬間瞬間を感情優先に生きている。大人に保護してもらえる身なので日本の鶯のように練習して上達しなければ生きていけないわけではない(脅しや罰を与えれば同じ状況になるかもしれませんが)。大抵の子供は自分の問題点に向き合う事や出来ないものを努力しようということに意味を見出せないのでしょう。もちろん、幼いころから律することが得意だったり、好む方もいますが、人生経験の浅い子供たちは動物的な感覚を優先してしまいがちです。

そもそもピアノを弾くとは

ここでそもそも論。ピアノを弾くということに立ち返ってみたいと思います。ピアノを「弾く」は英語でplay、フランス語ではjouer,ともに「遊ぶ」という意味合いも持ちます。

「ピアノを上達させるにはある程度の痛み(努力・頑張り・犠牲)を伴う」と信じていたのは私だけではなく、勤勉でまじめ気質の日本人はこの感覚に陥る方が多いです。辛かった分だけ幸せはやってくる・・・逆も然りで幸せを求めるにはたくさんの辛さを経験すればいいと錯覚してしまう人も。私も含まれていますが、この考えは根性論が主流だった昭和世代の日本人に多くみられます。ピアノを弾くという事に「遊び」は存在しないという考え方です。

私はピアノを3歳から19歳までは日本人教師、20歳を過ぎてからは何人かのヨーロッパ人教師に師事を受けました。お国の違いだけではないのかもしれませんが、ヨーロッパの教師はピアノを弾く・音楽を教えるという事の根本がplay・jouerのスタンスであったことに、文字通りカルチャーショックを受けました。

先生方のレッスンは音楽に対する愛情に満ち溢れていて、なぜこの曲が素晴らしいのか?どうすればもっと素敵になるのか?の探求心を押さえることが出来ないといったレッスンでした。夢中になっている姿はまるで子供が宝物を説明する様子そのものです。「ここに楽譜があるのに(譜読みをしないで)放っておくことなんて出来ないわ」と新しいおもちゃをもらった子供が包みを待ちきれずにあけるような様子で話す先生もおられ、そのポジティブなオーラが生徒に伝染するのをまざまざと実感しました。

指導者の考え方は、生徒に大きな影響を与えます。ご両親のお考えにもよりますが、これからピアノを子供に・・・とお考えの方には幼い時期に大切なことは技術的な進度ではなく、ピアノを弾くことは「楽しい」という根っこを育ててくれる、そんな導入期の先生を慎重に選択することをお薦め致します。(すでに指導を受けている方もご両親の導き方でかなり違う意識が芽生えるはずです)

練習の持つ言葉の意味

ここで「練習」という言葉に立ち返り、意味を調べてみましょう。

練習・・・技能・芸事などが上達するように同じことを繰り返しならうこと(大辞林第三版)とあり、類義語を調べると稽古・訓練・トレーニング等があります。

稽古・・・武芸・芸事を習う事、学問、学習(大辞林)

訓練・・・ある事を上手くできるように技術・身体的練習を継続的に行わせること(大辞林

トレーニング(training)・・・訓練・教練・養成・練習・鍛錬・調教(weblio)

言葉の持つ意味からも、繰り返し行う・修行、というようなイメージが強く感じます。これは受け取る側の感覚にもよりますが、「楽・楽しい」というイメージの逆で「辛い・長い道のり」の印象が強いように感じます。

練習は量より質

1回弾いただけで出来なかったことが出来るようになるのであれば、誰も練習嫌いにはならないでしょう。出来ないものを出来るようにするという事にはある程度の時間と工夫が必要です。この「時間のかかりそうな険しい道」という負のイメージが子供たちのみならず生徒を練習から遠ざける原因の一つではないでしょうか。

では必ずしも「練習時間の長さは上達に比例する」のか?努力は報われるのか?という問題も出てきます。

一万時間の練習をこなせば、その道のプロ・活躍できるトップの一員に入れるという話をご存じでしょうか?広めたのは「天才!成功する人の法則」の著者 マルコム・グラッドウェルですが、この法則の元となる研究を行ったアンダース・エリクソン教授は単に1万時間かければよいというものではなく「質」も勿論大切だと言及していたそうです。

そう、「量」は無意味とまでは言い切れませんが「質」がもっとも大切だと言えます。

またこれは「練習」という言葉に既にマイナスイメージを持つ子供や、レッスンの時間しかピアノに触れない子供への対策ですが、課題の出し方を「練習する」ではなく➡「チャレンジする」・「挑戦する」・「実験する」に変えてみるのもひとつの手だと思います。いつもと違った視点からピアノを見ることが出来るようになり、言葉一つで変わる子もいます。

自分自身でどう弾きたいか?を考えられる生徒に育てる

ピアノ練習の量を重視するあまり、間違ったやり方を逆に上塗りして身体に染み込ませている様子を時々見かけます。とくに家での練習を数で即したり、練習時間を重要視させた生徒に多いです。

導入期~初級レベルであっても、練習の方向性をどこに向ければよいか?自分自身がどのように弾きたいのか?のイメージを持てるような言葉がけ大切です。それを指導者や保護者の方が根気よく問いかけることによって、考えてピアノに取り組むことの面白さを、自ら育んでいける子供に育つでしょう。

これは週一回程度かかわる指導者のみでは大変難しく、日々一緒に過ごす保護者のお力も必要になります。自分の幼少期も然りですが、自身の力だけで成長出来るようなお子さんも確かに存在しますが、それは「稀」な例だと思っていただくのが賢明です。

成功体験から自信をつける

子供に限らず、誰でも少ない努力で大きな成果が出ることを夢見ます。例えば今日1日で仕上がりに程遠い一曲を暗譜する!などの、1週間の課題をこの日1回の練習でものにするというような行動です。

こんな大きな目標が達成出来たら本望ですが、たいていは成功せずに落ち込むことになります。この繰り返しを続けていれば「練習」が嫌いになるのも当然です。ではどうすれば良いのでしょう?

まずは自分の決めたことが自分自身の力で果たせるという体験をする。欲張らず、毎日2小節でもいいから弾いてみるといったような小さな目標から始めます(親も指導者も一つ成功すると欲が出てしまい、次のステップに進ませがちですが、ここはぐっと辛抱です)。そしてそんなちょっぴりの成功を本人だけではなく周りにいる人間も心から喜びましょう。「ほんの少し手を伸ばせば届くような小さな成功体験を喜べる体質」、その体質が出来ることによって、ゆくゆくは自ら目標を定めて挑戦することを楽しめる人間に成長できると思うのです。

まとめ

1.練習が嫌い=ピアノが嫌いとは限らない
2.導入期は音楽にポジティブなイメージや興味を大切にしている指導者を選ぶ
3.指導者や保護者は子供自身が音楽のイメージを持てるように声掛けする
4.練習は量より質を重視
5.「練習」をポジティブなイメージを持つ言葉に変えて声掛けする
6.「考える子」に育てる
7・小さな成功体験も喜べるも体質を作る

今回は私自身のピアノ指導30年を振り返り、自戒の念を込めて「ピアノは好きだけど練習は嫌い」という生徒に焦点をあてて今現在の考えをまとめました。

子育ても同様ですが、ピアノ演奏も指導方法も対象となる子の性質や環境が異なるため、答えは一つに絞れません。その都度「考える」ことが出来る子供たちを一歩離れたところからアドバイスすることが大切です。そして、ピアノの前に座って何のルールにも縛られず無心に音楽を楽しんでいた子供たちの可能性を思い出し、その可能性の芽を摘んでしまっているのは、もしかしたら周りにいる私たち大人なのかもしれないという事も頭の片隅にいれて頂きたいです。

ピアノ演奏者が知っておきたいお得なこと・14

練習中に腰が重くなる方へ

こんにちは。「信頼される指導力と根拠のある技術を身につける!」ピアノ講師とプレイヤーを応援する 山本玲です。

長時間練習を推奨するわけではありませんが、中上級者であれば普段のピアノ練習に1時間~3時間続けて行うことは珍しくないことだと思われます。曲のタイプにもよりますが手・肩の疲労の次に長時間の練習で腰の違和感痛みを覚える方が多いようです。

また、緊急事態宣言の外出制限のなかでピアノに向かう時間が増えた方もいらっしゃるでしょう。今回はピアノ演奏の際軸と腰の骨(腰椎)、それを支えている筋肉を知り、座って快適に演奏するということを考えていきたいと思います。

目次
1.椅子のポジションはミドルCの前?
2.まずは軸骨格の仕組みと役割をを知る
3.腰椎を含むしなやかに連なる脊椎を知る
4.演奏時の軸骨格と腰の筋肉はどうなっているか
5.他の選択肢も考える
6.まとめ

※要点のみ知りたい方は1・2・3・は読み飛ばしてokです。

椅子のポジションはミドルCだけではない

鍵盤は直線状に88鍵・123cmにわたって並んでいます。現代のピアノ学習では真ん中のド(一般的にミドルcと呼ばれている)から一音づつ増やしていく学習法が一般的なこともあり、ピアノの椅子はほぼ真ん中に設置しそこの位置に座ることがごく当たり前とされています。

ただこれは初級ピアノ学習者の曲には当てはまりますが、中級上級になると曲によって頻繁に使われるポジションが異なります。にもかかわらず、初級者の時のポジションのまま弾き続ける方は専門的に学んでいる演奏者にも非常に多いようです。

では高音⇄低音と遠くの鍵盤を弾く際に軸骨格や骨盤がどのように動いているのか見ていきましょう。

まずは軸骨格の仕組みと役割を知る

人の骨はざっくり2つに分けられます

  • 頭と軸=軸骨格
  • 腕と足=付属骨格

今回のテーマである腰にある腰椎が含まれる軸骨格頭蓋骨(咽頭の骨も含む)・脊柱肋骨及び胸骨の体の長い軸に沿う骨すべてを含みます。(幻のツチノコ体系を想像させる図⇩)

付属骨格なしでも生きていくことは可能ですが、この軸骨格なしでは生命は維持できません。

         軸骨格
     画像はvisible bodyより引用

腰椎を含むしなやかに連なる脊椎を知る

                脊椎を右側から見た図
             ⇦背面         前面⇨

上の図は右側から見た脊椎(背骨)の図です。とがった恐竜の棘のようなものが背面になり、身体の中心部分には積み木(orだるま落とし)のような円柱状の椎骨という骨が椎間板というゼリー状の弾力があるクッションを挟んで24個重なっています。魚類はほぼ同じ太さの骨が連なっていますが(重力が上からかからないため椎間板の必要もなし)、人類が直立して生活するようになり、重い身体を支えてバランスを取るためにこの緩やかなカーブと下にいくほど太くしっかりとした椎骨が出来たのだそう。

・頸椎・・とにかく自由度高い万能選手たち、前後に曲げ伸ばし・左右に側屈・回旋もできる・2個の関節面で頭蓋骨を支えています

・胸椎・・・回旋が得意・✖棘の形状から後ろに反ることが出来ません(胸椎の下2つは後ろに反ることも可能で万能選手ともいえます)

・腰椎・・・前後に曲げ伸ばし・左右横に側屈・✖回旋(ねじる)はほぼ出来ません

※椎間板ヘルニアに頸椎腰椎部分で起きるのは、よく動く部分なので椎間板への負担が大きいから   by解剖学者:坂井建夫氏

体重を支えているのは棘の部分ではなくこの円柱状の椎骨と椎間板だという事や、脊椎は一本の棒ではなく沢山の椎骨とクッションの役割をする椎間板がしなやかに繋がりS字型を描いた骨の集まりであるという事、腰椎はこの連なりの一部という事を意識することだけでも動きは変わっていくでしょう。

演奏時の軸骨格と腰の筋肉はどうなっているか

ここからはいよいよ演奏の際の身体を腰回りを中心に見ていきましょう。

ミドルcポジションの中央に座った場合で、指の届かないポジションに指(腕)を持っていった場合を探求します。

今回は高音域を弾くために腕をそちら側へ持っていきます→腕だけでは届かないと確認した時点で(もしくは予測した時点)→腰椎は右へ曲がっていきます(赤色の部分はこの時に使われていると思われる筋肉群)⇩

もう少し身体の奥深くを見てみると、腰方形筋という身体の奥深くにある筋肉(ここでは薄ピンクで示されてます)が側屈を手伝っています⇩。

       腰方形筋(右のみ)

腰方形筋は脊椎の左右に付着していて、片方づつの収縮で体幹を側屈させます。この筋肉は脊柱の安定性に重要な役割を持っていて、どちらかがたくさん働いていたり、また逆にどちらかが弱くなっていたりすると骨盤の高さに左右差がうまれて痛みを発生させたりするようです。

その為、高音域にばかり、もしくは低音域ばかりに偏って腰を側屈させていると腰方形筋の左右差が生まれて重くなったり痛みをもったりするようです。(ゴルフのスイングや野球のバッティングも同じ方向へのスイングのためバランスが悪くなるので要注意)

今回はこの筋肉の使い方による痛みに焦点をあてていますが、筋肉以外の故障で痛みを引き起こす場合もありますので(ヘルニア他)痛みが出た場合は医療機関で診て頂くのが大前提ということをお忘れなくお願いします。ピアノ演奏の場合、もちろん癖もあると思いますが、どちらかに偏って演奏する曲の場合は、練習後に使った腰方形筋とその反対側のストレッチも忘れずに行うことをおススメします。(ストレッチは様々な方法があります。私が行っているストレッチはまた後日アップしたいと思っています)

他の選択肢も考える

選択肢1:座るポジションを変える

ピアノ演奏時もそれ以外もですが、椅子に座るときは坐骨2点と脚2点の合計4点で上半身を安定させます。(厳密には坐骨の前側部分で座ることを意識します)。赤く囲んだ○の部分

ただ、鍵盤の中央からかなり遠い部分まで指を届かせるのに両方の坐骨にバランスよく乗り続けるのは、よほどの体格の持ち主か、極端に、腕が長い方でない限り無理があります。そこで一つ目の選択肢としてはミドルcポジションの前に座る事に拘らず、偏りがちな音域の方に少し座る位置(坐骨の位置)を移動させるのはどうでしょう?ほんの数センチでもかなり腰の負担が変わることが分かると思います。

選択肢2:脊柱起立筋も使い、行きたい方向に上も加える

またミドルCのポジションの前に座ることを選択される場合は高音低音時に座骨の両方の2点に座り続けることに拘らないようにしましょう。時には座骨のどちらかを離し、脊柱起立筋という重力に逆らって上方向に向かう(側屈も手伝う)筋肉群を使いながら指のリードで弾きたいポジションに移動することも選択肢の一つと言えます。その時、脚の支えは多いに活用しましょう。

脊柱起立筋群(棘筋・最長筋・腸肋筋)
作用:身体を上方向に伸ばす・身体を横に曲げる(側屈)

まとめ

まずは身体の中で何がおきているのかを知ることが大切です。そのうえで、座るポジションを曲によって変えることも検討しましょう。人の身体は基本的に頭のてっぺんからつま先までの全身を使って動かすことでバランスを取っていることも忘れずに、可能な限りの選択肢を出し、実験し、その時の自分に合っている場所を見つけることを怠らずに探求してください。

ピアノ演奏者が知っておきたいお得なこと・13

呼吸の工夫でピアノ演奏をさらに上げる!

こんにちは。「信頼される指導力と根拠のある技術を身につける!」ピアノ講師とプレイヤーを応援する 山本玲です。

管楽器奏者や声楽家は呼吸と音楽のフレーズを一致させなければ演奏は出来ませんが、ピアノ演奏はどうでしょう?

意図的にもコントロール可能な呼吸の動きですが、自律神経の支配を受けていることもあり、日常においては呼吸は無意識の働きです。ピアノ演奏中は技術や演奏の質を高める意識が強く働くため、多くのピアニストは呼吸の状態に気を配ることはほぼないと思われます(難関パートでは息を詰めることも多い)。ただ実際はピアノ演奏中の呼吸も私たちの身体に作用し音楽にも影響を与えています。呼吸の現状を把握することで演奏に効果的な呼吸を探求し、選択して頂きたいと思います。

目次
1.覚えておきたい呼吸を支える場所
2.そもそも呼吸のしくみって?
3.ピアノ演奏中の呼吸で覚えておくとお得なこと
4.まとめ

覚えておきたい「呼吸を支える3つの場所」

  • 肋骨
  • 横隔膜

・・・肺はガス交換の場所で鳥籠のように囲まれた肋骨で守られていて、肋骨一本一本がバケツの取ってのように上方向に持ち上がることで容積を増やすことが出来ます。肺の上部は鎖骨のくぼみのところまで、下はみぞおち、背後は背中まであり想像以上に胸腔内(肋骨内部)を占領しています。

肋骨・・・肋骨の骨と骨の間には肋間筋という筋肉があり、この筋肉が肋骨の間を狭くしたり広くしたりして胸郭内の容積をコントロールしています。この動きと横隔膜が下がることが協力し合って、空気を取り込むことが可能になります。

・横隔膜・・・横隔膜は筋肉です。自律神経の宝庫とも呼ばれているそうですが、主な働きは空気を出し入れする働きを担っています。肋骨の下の部分からパラシュートのように付着していて、そのパラシュートの傘から腰椎に沿って脚のように筋肉が付いています。肋骨の動きも伴いますが、このパラシュート状の横隔膜が上下することで空気が出入りします。↓

    余談ですが・・・横隔膜は焼き肉の部位でいう「ハラミ」

そもそも呼吸の仕組みって?

  1. 横隔膜や外肋間筋が緩み始めると(横隔膜のパラシュート部分が、高い位置へ)肋骨・肺で構成される胸腔の密度は小さくなる。その際に肺に入っていた空気は自然と口や鼻から出ていく呼気から開始することを意識するのがポイント)➡
  2. 横隔膜の筋肉が収縮することで横隔膜自体が下に下がっていき(パラシュートの山が低くなる)、同時に肋骨がバケツの取ってが上がるように上方向に持ちあがり、肺のある胸腔内が広がる
  3. 内部の圧力が低くなり(陰圧)口や鼻から自然に空気が入ります(吸気)➡1・2・3が繰り返され続けるのが呼吸運動)

※呼吸のコツ

・吸う(吸気)時に横隔膜の下にある臓器は押し下げられ、最も下まで行くと骨盤の一番下の骨盤底筋群まで到達します。この時に腹筋群を固めてしまうと内蔵の行き場が限られてしまい、吸う息の量を制限してしまうので沢山の空気を取り込みたい場合は腹筋群は緩めましょう。逆に積極的に吐きたいとき(勢いよく吐く)は腹筋群を使います。

・肋骨は脊柱(背骨)にくっついていてそこにある関節のお陰で上下に自由に動くことが出来ます。地面とつながっている骨に身体の重みを支えてもらい、胸郭の周りの筋肉の支えの仕事を減らすと脊椎と繋がっている肋骨は自由に動けるようになります。また、胸郭の周りの腕を動かすための筋肉の仕事を減らし、背中を柔らかく使うことも呼吸をし易くするコツとなります。

ピアノ演奏中の呼吸で覚えておくとお得なこと

  • 深い呼吸が出来ているとうことは腕(鎖骨や肩甲骨)が呼吸の際に必要な関節を引き留めずに自由に動かせる状態になっている➡指のコントロールの可能性を高くする。・・・深い呼吸をするには胸郭の周りにある余分な緊張を取って呼吸の際に使われる筋肉を自由に動かせるようにすることがポイントとなります。呼吸の仕組みでお伝えしたように吸気の際には肋骨が上方向に持ち上がります。ピアノ演奏時は緊張から鎖骨を引き留めてしまいがちですが、引き留めてしまうことで深い呼吸は出来なくなります。ということは・・・深い呼吸が出来ているということは鎖骨や肩甲骨が自由に動けているということになります。「ピアノ演奏者が知っておきたい大きなこと・10・腕はどこから?」でもお伝えしたように腕は指先から鎖骨までと考えます。腕の根っこである鎖骨や肩甲骨を動かないように押し付けていると本来動くはずの指が動きにくくなります。
  • 曲の開始直前に鼻から深く吸気をすることもお薦めします・・・喉には息を吸い込む筋肉は存在しません。鼻から空気を取り込む動作はこの喉で吸い込もうとする間違った動作を防ぐことが出来るでしょう(口呼吸は喉と鎖骨周りにも緊張を与えがち)。そしてこの鼻呼吸は身体のバランスを保つ頭と脊椎の関係性を良い状態にするともいえます。
  • そもそも呼吸は酸素を取り込み、二酸化炭素を排出するガス交換のための運動です。緊張時に呼吸が浅くなることで十分な酸素が脳に届けられなくなりなり、思考力も落ちる可能性があります。
  • また、吸気の際には交感神経が働き、呼気はリラックス効果が高い副交感神経が働く(セロトニンという脳内ホルモンも分泌)ことから、吐くことを意識することにより副交感神経が働き、落ち着いた状態を保つことが出来ます。

まとめ

呼吸は今回お伝えした以上に奥深いものですが、今回はピアニストが知識として持っていることが望ましいと思われる最低限の情報をお伝えしました。(フレーズ間の呼吸等はほとんどの皆さんが実験済みのこととして説明は省きました。)

演奏時に呼吸の意識をするか?意識をしないことを選択をするのか?の相性や個人差は勿論あると思います。他の技術を取り入れるときと同じく、その都度、実験しその時の自分に合った選択を根気よくやって頂けることを願います

ピアノ演奏者が知っておきたいお得なこと・12

快適なペダル(ダンパーペダル)の踏み方

こんにちは。「信頼される指導力と根拠のある技術を身につける!」ピアノ講師とプレイヤーを応援する 山本玲です。

前回の「ピアノ演奏者が知っておきたいお得なこと・11」では演奏中 脚も意識に含めることで、パフォーマンスの質は確実にアップすることをお伝えしました。

今回の「演奏者が知っておきたいお得なこと」シリーズはペダルを踏む際に知っておくとお得な脚と足のマッピングになります。

ペダリングで大切な「足関節のマッピング」

足(床やペダルに触れる部分から足首と呼ばれる部分)の関節をL字型と思っている方が殆どです。でも実際の足関節はTの字が逆さになっている形です。⇩

        ここが足関節 (逆T)

L字型のミスマッピングでペダルを踏んでしまうと、どこかしらに痛みを感じるようになります。足の動きで重要なことは踵の後ろで起こるのではなく踵の骨の前の足関節で起こるという事。

踵は床についていますが、ペダリングでは膝や股関節の動きも少しですが伴います。膝と股関節も使うということは体重を座骨にのせてバランスをとって座ることも前提として大切なことです。(体重が座骨に伝わると脚は自由に動かせます。)

足関節・膝関節・股関節も微細ながら動きが生じている

ペダルの上に置かれた足が上下に動くと足関節・膝関節・股関節も動きが生じて脚全体に動きが生じます

ピアノは靴の文化圏で誕生した

日本では練習の際に柔らかいスリッパや時には素足で踏む方が多いようですが、そもそもピアノは室内で靴を履く文化圏で生まれた楽器です。そのため素足で長時間ペダルを踏むには無理のある構造と言えます。また素足でのコントロールに慣れてしまうと、厚い皮の靴底でペダルを踏んだ時に少しの力で下がることに気付くでしょう。時折、ステージ本番でペダリングの加減をコントロールすることが出来ず、踏み込みすぎや切り替えがあまくなり濁った音が響き渡る演奏に出会うことがあります。これは本番だけ靴を履いてしまうと起こりやすい例です。練習でも本番と同じ条件でペダリング出来るように配慮することが望ましいでしょう。

まとめ

ペダリングの際の足の動きが起こるのは踵が床に触れている部分ではなくその前にある足関節で起こる(逆T字)。

ミスマッピングで記憶してしまうと、筋肉緊張に繋がり大腿四頭筋や脛、股関節に痛みや違和感を伴う場合がある。

本番と同様のコンディションの履物を選び、練習する。

●そして・・・度々お伝えしている特定の部位のみに意識を集中することを避け、身体全体を意識に含める。※足と脚だけに意識を向けてペダルを操作するのではないという事も覚えておきましょう。すべてのバランスの場所を互いに協調させることで身体の動きは本来の質を取り戻せます。

意識的思考を使う日々のピアノ練習~主観的な感情を振り返りながら~

こんにちは。「信頼される指導力と根拠のある技術を身につける!」ピアノ講師とプレイヤーを応援する 山本玲です。

今回は日々の練習とその根っことなる主観的な感情について心掛けておくとお得なことを「思考」の面からお伝えしたいと思います。

意識の高い人のイラスト(女性)

意識と思考

意識・・・・一般に「起きている状態にある事(覚醒)」または自分の今ある状態や、「周囲の状況などを認識できている状態のこと」を指す。Wikipediaより抜粋

思考・・・・考えや思いを巡らせる行動であり、結論を導き出すなど何らかの一定の状態に達しようとする過程において、筋道や方法などを模索する精神の活動である。Wikipediaより抜粋

タイトルにある「意識的思考」とは今置かれている状況を認識しながら結論を導き出すための考えや思いを巡らせる行動にあたると言えるでしょう。

今、何がやりたくて(出来るようになりたくて)そのためには何を選択するか?

思考活動には意識的思考と、自動的思考の2つのシステムがあるそうです(分類する言葉は他にもあります)。

どちらも、その場にふさわしい使い方や役目を誤らなければ効果的に使うことが出来る思考システムです。自動的思考は脳のエネルギーの消耗が少なく・高速で処理できるというメリットがあります。何も考えずにピアノに向かうとこちらが働き始めるのは生物学的に捉えた人間としては当然といえるでしょう一方、意識的思考は脳のエネルギー消耗も多く、処理が遅いため本能的に使うことを避ける傾向が強くありますが問題決を求める場合には意識的思考が有効でしょう

参考:思考が使用するエネルギー・・・脳は重量換算では全身の約2%であるにもかかわらず、エネルギー消費量換算では全体の約20%のエネルギー消費を行う。厚生労働省のe-ヘルスネットより

脳のイラスト(人体)

核となる主観的な感情を確認する

子供は演奏の結果を親や先生に褒められることを目的としてしまっている場合が多く見受けられます(依存性の高い大人も例外ではない)。アップル創始者の一人であるスティーブジョブスの「人からの承認は意味をなさない」と残した言葉にもそれをうかがい知ることが出来ますが、自分の課題と認識していたつもりが実は他者の課題と気づかず邁進している。これは承認欲求を満たすためのもので、エスカレートすると他者からの評価に怯えることにもつながります。子供たちを教えていると頻繁に出会う複雑な事実ですが、成人しても気づかないままのケースもあります。

日々の練習ごとに目的意識は必要ですが、時折意識して振り返るべきなのが根となる主観的な感情です。何のためにピアノを弾いているのか?また何を望んでいるのか?れがちな自分の方向性を保つことが出来るでしょう。

他者からの評価に怯えることなく、本来の自分の目的・望みを確認しながら、意識的な日々の練習や活動を心掛けたいものです。

ピアノ演奏者が知っておきたいお得なこと・11

演奏中 脚も意識に含めることで、パフォーマンスの質は確実にアップ!

こんにちは。「信頼される指導力と根拠のある技術をを身につける!」ピアノ講師とプレイヤーを応援する 山本玲です

演奏中に意識が集中する身体部門一位は「指」ですが・・・

演奏中のピアニストは多かれ少なかれ指や手そして腕を使う意識を常にもっています。鍵盤に直接ふれる身体の部分は指になるので上半身に意識をもつ気持ちは理解できます。「指や手・腕に集中する」という言葉で表現することもあると思いますが、一部分に集中するということは、その他の身体の存在を忘れている(意識から離れている)という事でもあり、身体全体を効率的にバランスよく使うことからは離れてしまっている状態になります。(もちろん、演奏家にとって指や手・腕の知識を豊富に持つということは大切です。)

下半身の関節をいつでも対応できるように緩めておく

下半身に関してはペダルを踏む時に多少の意識はしますが、関節(股関節・膝関節・足関節など)に意識をもったことはあるでしょうか?

一見、ピアノ演奏と関係のなさそうなこの股関節と脚(膝関節・足関節含む)ですが、上半身に意識が行き過ぎるために、ここを「なかったことにしている」演奏者が私の生徒さんにも多くみられます。股関節は上半身と下半身をつないでいる重要な関節で、互いに関わりあっています。もしここを「なかったこと」にしたり意識を向けなかったりすると繊細な動きで全身のバランスを保っている股関節が固まってしまい、股関節付近でつながっている腕の重要な筋肉をも引き止めて動きの可動域が狭まってしまう恐れがあります。

この下半身のマッピングと機能を理解することは動きの可能性を増やし、演奏の選択肢を増やすことにもつながります。では関節に付着し動きをもたらす主な筋肉を見ていきます。

股関節とその周辺の筋肉の動きを知る

股関節は身体のほぼ中央に存在し、上半身-下半身の様々な筋肉が付着しています。とくに注目してほしいのが大腰筋腸骨筋。深層筋は身体の奥深くにある筋肉で筋肉、使っている感覚はなく疲れ知らずという特徴があります(インナーマッスル)(下図)。とてもお得な筋肉なのです。

ピアノ演奏にも重要な股関節の筋肉(腸腰筋=大腰筋と腸骨筋)
大腰筋の主な動き・・・股関節を屈曲(サッカーボールを蹴る時など)
腸骨筋の主な動き・・・股関節を外側にひねりながら屈曲(脚を組む)

「ピアニストは鍵盤のいろいろな場所で弾く時に身体を支えるために脚を使うことが出来ます。また体重が座骨ではなく、大腿骨の付け根に伝わってしまうように座っていたり、尾骨に体重が乗ってしまうような「背中に頼った姿勢」で座っていると脚は動かしにくくなります。座ることが快適ではなくなり脚の動きは制限され、ペダルに脚が届きにくくなり鍵盤も弾きにくく不安定な演奏になってしまうでしょう。

機能的に座るためにはお尻の筋肉の緊張を緩めることが不可欠です。そこの筋肉を緩めないと、体重は座骨に伝わらず脚の後ろ側に伝わるのです。体重が尾骨に伝わると腕と胴体の筋肉がそれをカバーしなければならなくなります。この「背中にたよった姿勢」は結果腕や背中の筋肉を緊張させ背中・肩・腕の痛みにつながることもあります。当然、演奏はその弊害を受けることになります」

ピアニストは、骨盤が後ろに傾かないように、股関節が充分に曲がっているか、腰が緩んでいるか、をいつも確認する必要があります。

トーマス・マークの〈ピアニストならだれでも知っておきたい「からだ」のこと〉から抜粋

演奏前に効果的な股関節周りをほぐすエクササイズ

深層筋は持久力のある筋肉で自覚をするのが難しい・・・ということで、演奏直前にここを目覚めさせる動きをご紹介。

①ピアノの椅子に座り座骨を軸に上半身を後傾させる。この時、脚は床から浮く⇩。

②今度は鍵盤方向に股関節を屈曲させ上半身を倒していく。この時床に脚・身体が乗っていることを感じる。下写真⇩

③椅子の上に座骨を感じるように座り、脊椎の上に頭をふわりとのせる。下写真⇩


④鍵盤の感触を感じるように触れながら弾き始める(曲の冒頭にもよりますが・・・)。下写真⇩

この一連の動きをすると、股関節の筋肉に思いをはせる努力をしなくても自動的に下半身がバランスよく動き始めます。

下半身を含めたことで、全身の筋肉が微細に働き、驚くほど軽いタッチで出したい音が出せるようになります。

是非お試しください。

まだまだ身体を知るとお得なことがいっぱい!演奏をさらに磨きたい方はこちらのワークショップでお会いしましょう!

ピアノ演奏者のためのワークショップではこんなことを探求しレッスンをしています。興味のある方はお問い合わせください⇩

ピアノ演奏者が知っておきたいお得なこと・10

鍵盤に触れる指、その指を遠隔操作する腕を知る!

こんにちは。「信頼される指導力と根拠のある技術を身につける!」ピアノ講師とプレイヤーを応援する 山本玲です。

ピアノは指や腕以外にも他の楽器と同様に頭から足の先までの全身をバランスよく使って演奏する楽器です。それを前提に今回はピアニストが最も気にする指(手)と腕についての知識をアップグレードしていただきたいと思います。

指の長さを正確にマッピングする!

普段「指の付け根」と呼んでいる「指骨」の始まりは下の図の➡だと認識している方が多いようです。ピアノ演奏で「オクターブが届かない」とお嘆きの方の多くは、この➡から指を広げようとしている傾向が強いです。(もちろん生まれ持ったサイズが原因の場合もあります)

            右手の掌側

でも、実際はもっと長く、掌の中のから指骨は始まっています↓

          右手の掌側:赤➡が指の始まり

指先から手の甲の方向へと反対の手で触ってみても指の骨の長さを感じることは出来ます。ちょうど手首にあたる小さな骨が8個集まるところで突き当たるのが分かるでしょう。本来の指の長さにマッピングが書き換えられることで、指の可動域が広がり、オクターブや広い音域の和音が掴みやすくなります。また打鍵する際、骨同士が関節を通して支えあっていることを感じることで今まで筋肉頼みになりがちだった鍵盤を支える仕事を、骨に任せようという意識が生まれます。(筋肉の過剰な緊張を緩めることで、指がしなやかに俊敏に動く準備も可能になります)

手の中にある筋肉の役割とは?

手の中にある筋肉はほぼ掌側に集まっているそうです。骨間筋・虫様筋等といった多くの内在筋があり、ピアノ演奏の際の微細な動きを助けます(開いたり、閉じたり、指をくぐらせたり、またぐような動作、打鍵する際に張りを持たせたり等々)。また甲には腱が通っていますが筋肉の本体は存在しません。(この甲の腱は前腕へとつながります。この前腕に存在する筋肉が指の伸展を担当しています・腕の説明は下へ)

右手の掌側:皮膚の上から見て盛り上がっていることからもわかるように、様々な筋肉がついています。
右手の甲側:(薄い紫がかった白の筋が腱、骨と骨の間に見えるのが骨間筋)

腕はどこから?

「腕はどこからでしょう?」と生徒さんに尋ねると、大概⇩肩の先を指す方が多いのですが実は腕はここからではありません。

腕の正確なマッピングこちら

鎖骨と肩甲骨(後方にうつる逆三角形の骨)も含めたものが腕全体をあらわします。鎖骨の先端(喉の下のくぼみの両サイドにある骨)に触れながら腕を大きく動かしてみると連動して鎖骨も動いていることがわかります。指先から鎖骨と肩甲骨までの長さと関節のつながりが在ることを意識して演奏することは、本来の腕の長さと機能を取り戻し、演奏の可能性を広げるでしょう。関節の部分は電車でいう連結部分です。決して固定することなく自在に動けることを意識することが大切です。腕を交差させて打鍵する時や体幹から遠い鍵盤などを打鍵する際はこの認識が演奏を助けてくれます。

前腕の中も正確にマッピング!

前腕の骨は一本ではなく2本です(小指につながる骨は橈骨・親指につながる骨は尺骨)。2本あることでドアノブを回したりぞうきんを絞ったり、鍵を開けたり閉めたりが可能になります。

ピアノ演奏の際はこんな状態になっています⇩

ピアノ弾くとき、前腕の2つの骨は交差している!!

ピアノを弾くときは2本の骨は回内といって
橈骨が尺骨の上に覆い被さる状態になります。
どちらの骨も緩いカーブがあるため
接触することなく動きが可能にデザインされています。
本のページをめくるのもこの2本の骨の回内・回外にあたります。
ピアノの演奏ではトレモロの動きをするときなどに意識して使うと、指のみを使って弾くときと違い、少ないエネルギーで演奏することが可能になります。

指を動かす筋肉は前腕の中にもある!

   右前腕・手の掌側は指を曲げる筋肉(例:じゃんけんのグーを出す)
    右前腕・手の甲側は指を伸ばす筋肉(例:じゃんけんのパーを出す)

指を曲げたり伸ばしたりする(屈曲・伸展)筋肉はほぼ前腕にあります

数十年前に主流だった指先を立てて上下に大きく動かすような打鍵(ハイフィンガー奏法)を習った方も多くいると思います。この奏法は前腕にある筋肉を多用するので長時間の打鍵で前腕に疲労を感じる方も多いようです。またこの筋肉の先は腱になって手首にある腱鞘と呼ばれるトンネル状の組織(上図の薄紫の部分)を通って指に付着し動かします。腱と腱鞘が頻繁にこすれあうことで炎症を起こし痛みを引き起こすこともあるので(腱鞘炎)酷使しないよう注意が必要です(「演奏家の手の悩み」酒井直隆より抜粋)。

結論!ピアノ演奏に必要な関節や筋肉とは?

指や手、腕には他にも観察すべき関節や筋肉は沢山ありますが、はじめにお伝えしたように、ピアノ演奏に必要とされるものはこれに留まりません。身体それぞれの持つ本来の機能を正確に理解することは技術習得の道しるべや近道となりますが、特定の部分のみに意識を集中させるのではなく、身体全体をバランスよく使うことが重要です。是非、知識の引き出しの種類は多く持ち、その状況に応じて使い方を選択して頂きたいと思います。

鍵盤に触れる指、その指を遠隔操作する腕を知る!ピアノ演奏者のためのワークショップではこんなことを探求しレッスンをしています。興味のある方はお問い合わせください⇩