ピアノ演奏者が知っておきたいお得なこと・12

快適なペダル(ダンパーペダル)の踏み方

こんにちは。「信頼される指導力と根拠のある技術を身につける!」ピアノ講師とプレイヤーを応援する 山本玲です。

前回の「ピアノ演奏者が知っておきたいお得なこと・11」では演奏中 脚も意識に含めることで、パフォーマンスの質は確実にアップすることをお伝えしました。

今回の「演奏者が知っておきたいお得なこと」シリーズはペダルを踏む際に知っておくとお得な脚と足のマッピングになります。

ペダリングで大切な「足関節のマッピング」

足(床やペダルに触れる部分から足首と呼ばれる部分)の関節をL字型と思っている方が殆どです。でも実際の足関節はTの字が逆さになっている形です。⇩

        ここが足関節 (逆T)

L字型のミスマッピングでペダルを踏んでしまうと、どこかしらに痛みを感じるようになります。足の動きで重要なことは踵の後ろで起こるのではなく踵の骨の前の足関節で起こるという事。

踵は床についていますが、ペダリングでは膝や股関節の動きも少しですが伴います。膝と股関節も使うということは体重を座骨にのせてバランスをとって座ることも前提として大切なことです。(体重が座骨に伝わると脚は自由に動かせます。)

足関節・膝関節・股関節も微細ながら動きが生じている

ペダルの上に置かれた足が上下に動くと足関節・膝関節・股関節も動きが生じて脚全体に動きが生じます

ピアノは靴の文化圏で誕生した

日本では練習の際に柔らかいスリッパや時には素足で踏む方が多いようですが、そもそもピアノは室内で靴を履く文化圏で生まれた楽器です。そのため素足で長時間ペダルを踏むには無理のある構造と言えます。また素足でのコントロールに慣れてしまうと、厚い皮の靴底でペダルを踏んだ時に少しの力で下がることに気付くでしょう。時折、ステージ本番でペダリングの加減をコントロールすることが出来ず、踏み込みすぎや切り替えがあまくなり濁った音が響き渡る演奏に出会うことがあります。これは本番だけ靴を履いてしまうと起こりやすい例です。練習でも本番と同じ条件でペダリング出来るように配慮することが望ましいでしょう。

まとめ

ペダリングの際の足の動きが起こるのは踵が床に触れている部分ではなくその前にある足関節で起こる(逆T字)。

ミスマッピングで記憶してしまうと、筋肉緊張に繋がり大腿四頭筋や脛、股関節に痛みや違和感を伴う場合がある。

本番と同様のコンディションの履物を選び、練習する。

●そして・・・度々お伝えしている特定の部位のみに意識を集中することを避け、身体全体を意識に含める。※足と脚だけに意識を向けてペダルを操作するのではないという事も覚えておきましょう。すべてのバランスの場所を互いに協調させることで身体の動きは本来の質を取り戻せます。

意識的思考を使う日々のピアノ練習~主観的な感情を振り返りながら~

こんにちは。「信頼される指導力と根拠のある技術を身につける!」ピアノ講師とプレイヤーを応援する 山本玲です。

今回は日々の練習とその根っことなる主観的な感情について心掛けておくとお得なことを「思考」の面からお伝えしたいと思います。

意識の高い人のイラスト(女性)

意識と思考

意識・・・・一般に「起きている状態にある事(覚醒)」または自分の今ある状態や、「周囲の状況などを認識できている状態のこと」を指す。Wikipediaより抜粋

思考・・・・考えや思いを巡らせる行動であり、結論を導き出すなど何らかの一定の状態に達しようとする過程において、筋道や方法などを模索する精神の活動である。Wikipediaより抜粋

タイトルにある「意識的思考」とは今置かれている状況を認識しながら結論を導き出すための考えや思いを巡らせる行動にあたると言えるでしょう。

今、何がやりたくて(出来るようになりたくて)そのためには何を選択するか?

思考活動には意識的思考と、自動的思考の2つのシステムがあるそうです(分類する言葉は他にもあります)。

どちらも、その場にふさわしい使い方や役目を誤らなければ効果的に使うことが出来る思考システムです。自動的思考は脳のエネルギーの消耗が少なく・高速で処理できるというメリットがあります。何も考えずにピアノに向かうとこちらが働き始めるのは生物学的に捉えた人間としては当然といえるでしょう一方、意識的思考は脳のエネルギー消耗も多く、処理が遅いため本能的に使うことを避ける傾向が強くありますが問題決を求める場合には意識的思考が有効でしょう

参考:思考が使用するエネルギー・・・脳は重量換算では全身の約2%であるにもかかわらず、エネルギー消費量換算では全体の約20%のエネルギー消費を行う。厚生労働省のe-ヘルスネットより

脳のイラスト(人体)

核となる主観的な感情を確認する

子供は演奏の結果を親や先生に褒められることを目的としてしまっている場合が多く見受けられます(依存性の高い大人も例外ではない)。アップル創始者の一人であるスティーブジョブスの「人からの承認は意味をなさない」と残した言葉にもそれをうかがい知ることが出来ますが、自分の課題と認識していたつもりが実は他者の課題と気づかず邁進している。これは承認欲求を満たすためのもので、エスカレートすると他者からの評価に怯えることにもつながります。子供たちを教えていると頻繁に出会う複雑な事実ですが、成人しても気づかないままのケースもあります。

日々の練習ごとに目的意識は必要ですが、時折意識して振り返るべきなのが根となる主観的な感情です。何のためにピアノを弾いているのか?また何を望んでいるのか?れがちな自分の方向性を保つことが出来るでしょう。

他者からの評価に怯えることなく、本来の自分の目的・望みを確認しながら、意識的な日々の練習や活動を心掛けたいものです。

ピアノ演奏者が知っておきたいお得なこと・11

演奏中 脚も意識に含めることで、パフォーマンスの質は確実にアップ!

こんにちは。「信頼される指導力と根拠のある技術をを身につける!」ピアノ講師とプレイヤーを応援する 山本玲です

演奏中に意識が集中する身体部門一位は「指」ですが・・・

演奏中のピアニストは多かれ少なかれ指や手そして腕を使う意識を常にもっています。鍵盤に直接ふれる身体の部分は指になるので上半身に意識をもつ気持ちは理解できます。「指や手・腕に集中する」という言葉で表現することもあると思いますが、一部分に集中するということは、その他の身体の存在を忘れている(意識から離れている)という事でもあり、身体全体を効率的にバランスよく使うことからは離れてしまっている状態になります。(もちろん、演奏家にとって指や手・腕の知識を豊富に持つということは大切です。)

下半身の関節をいつでも対応できるように緩めておく

下半身に関してはペダルを踏む時に多少の意識はしますが、関節(股関節・膝関節・足関節など)に意識をもったことはあるでしょうか?

一見、ピアノ演奏と関係のなさそうなこの股関節と脚(膝関節・足関節含む)ですが、上半身に意識が行き過ぎるために、ここを「なかったことにしている」演奏者が私の生徒さんにも多くみられます。股関節は上半身と下半身をつないでいる重要な関節で、互いに関わりあっています。もしここを「なかったこと」にしたり意識を向けなかったりすると繊細な動きで全身のバランスを保っている股関節が固まってしまい、股関節付近でつながっている腕の重要な筋肉をも引き止めて動きの可動域が狭まってしまう恐れがあります。

この下半身のマッピングと機能を理解することは動きの可能性を増やし、演奏の選択肢を増やすことにもつながります。では関節に付着し動きをもたらす主な筋肉を見ていきます。

股関節とその周辺の筋肉の動きを知る

股関節は身体のほぼ中央に存在し、上半身-下半身の様々な筋肉が付着しています。とくに注目してほしいのが大腰筋腸骨筋。深層筋は身体の奥深くにある筋肉で筋肉、使っている感覚はなく疲れ知らずという特徴があります(インナーマッスル)(下図)。とてもお得な筋肉なのです。

ピアノ演奏にも重要な股関節の筋肉(腸腰筋=大腰筋と腸骨筋)
大腰筋の主な動き・・・股関節を屈曲(サッカーボールを蹴る時など)
腸骨筋の主な動き・・・股関節を外側にひねりながら屈曲(脚を組む)

「ピアニストは鍵盤のいろいろな場所で弾く時に身体を支えるために脚を使うことが出来ます。また体重が座骨ではなく、大腿骨の付け根に伝わってしまうように座っていたり、尾骨に体重が乗ってしまうような「背中に頼った姿勢」で座っていると脚は動かしにくくなります。座ることが快適ではなくなり脚の動きは制限され、ペダルに脚が届きにくくなり鍵盤も弾きにくく不安定な演奏になってしまうでしょう。

機能的に座るためにはお尻の筋肉の緊張を緩めることが不可欠です。そこの筋肉を緩めないと、体重は座骨に伝わらず脚の後ろ側に伝わるのです。体重が尾骨に伝わると腕と胴体の筋肉がそれをカバーしなければならなくなります。この「背中にたよった姿勢」は結果腕や背中の筋肉を緊張させ背中・肩・腕の痛みにつながることもあります。当然、演奏はその弊害を受けることになります」

ピアニストは、骨盤が後ろに傾かないように、股関節が充分に曲がっているか、腰が緩んでいるか、をいつも確認する必要があります。

トーマス・マークの〈ピアニストならだれでも知っておきたい「からだ」のこと〉から抜粋

演奏前に効果的な股関節周りをほぐすエクササイズ

深層筋は持久力のある筋肉で自覚をするのが難しい・・・ということで、演奏直前にここを目覚めさせる動きをご紹介。

①ピアノの椅子に座り座骨を軸に上半身を後傾させる。この時、脚は床から浮く⇩。

②今度は鍵盤方向に股関節を屈曲させ上半身を倒していく。この時床に脚・身体が乗っていることを感じる。下写真⇩

③椅子の上に座骨を感じるように座り、脊椎の上に頭をふわりとのせる。下写真⇩


④鍵盤の感触を感じるように触れながら弾き始める(曲の冒頭にもよりますが・・・)。下写真⇩

この一連の動きをすると、股関節の筋肉に思いをはせる努力をしなくても自動的に下半身がバランスよく動き始めます。

下半身を含めたことで、全身の筋肉が微細に働き、驚くほど軽いタッチで出したい音が出せるようになります。

是非お試しください。

まだまだ身体を知るとお得なことがいっぱい!演奏をさらに磨きたい方はこちらのワークショップでお会いしましょう!

ピアノ演奏者のためのワークショップではこんなことを探求しレッスンをしています。興味のある方はお問い合わせください⇩

ピアノ演奏者が知っておきたいお得なこと・10

鍵盤に触れる指、その指を遠隔操作する腕を知る!

こんにちは。「信頼される指導力と根拠のある技術を身につける!」ピアノ講師とプレイヤーを応援する 山本玲です。

ピアノは指や腕以外にも他の楽器と同様に頭から足の先までの全身をバランスよく使って演奏する楽器です。それを前提に今回はピアニストが最も気にする指(手)と腕についての知識をアップグレードしていただきたいと思います。

指の長さを正確にマッピングする!

普段「指の付け根」と呼んでいる「指骨」の始まりは下の図の➡だと認識している方が多いようです。ピアノ演奏で「オクターブが届かない」とお嘆きの方の多くは、この➡から指を広げようとしている傾向が強いです。(もちろん生まれ持ったサイズが原因の場合もあります)

            右手の掌側

でも、実際はもっと長く、掌の中のから指骨は始まっています↓

          右手の掌側:赤➡が指の始まり

指先から手の甲の方向へと反対の手で触ってみても指の骨の長さを感じることは出来ます。ちょうど手首にあたる小さな骨が8個集まるところで突き当たるのが分かるでしょう。本来の指の長さにマッピングが書き換えられることで、指の可動域が広がり、オクターブや広い音域の和音が掴みやすくなります。また打鍵する際、骨同士が関節を通して支えあっていることを感じることで今まで筋肉頼みになりがちだった鍵盤を支える仕事を、骨に任せようという意識が生まれます。(筋肉の過剰な緊張を緩めることで、指がしなやかに俊敏に動く準備も可能になります)

手の中にある筋肉の役割とは?

手の中にある筋肉はほぼ掌側に集まっているそうです。骨間筋・虫様筋等といった多くの内在筋があり、ピアノ演奏の際の微細な動きを助けます(開いたり、閉じたり、指をくぐらせたり、またぐような動作、打鍵する際に張りを持たせたり等々)。また甲には腱が通っていますが筋肉の本体は存在しません。(この甲の腱は前腕へとつながります。この前腕に存在する筋肉が指の伸展を担当しています・腕の説明は下へ)

右手の掌側:皮膚の上から見て盛り上がっていることからもわかるように、様々な筋肉がついています。
右手の甲側:(薄い紫がかった白の筋が腱、骨と骨の間に見えるのが骨間筋)

腕はどこから?

「腕はどこからでしょう?」と生徒さんに尋ねると、大概⇩肩の先を指す方が多いのですが実は腕はここからではありません。

腕の正確なマッピングこちら

鎖骨と肩甲骨(後方にうつる逆三角形の骨)も含めたものが腕全体をあらわします。鎖骨の先端(喉の下のくぼみの両サイドにある骨)に触れながら腕を大きく動かしてみると連動して鎖骨も動いていることがわかります。指先から鎖骨と肩甲骨までの長さと関節のつながりが在ることを意識して演奏することは、本来の腕の長さと機能を取り戻し、演奏の可能性を広げるでしょう。関節の部分は電車でいう連結部分です。決して固定することなく自在に動けることを意識することが大切です。腕を交差させて打鍵する時や体幹から遠い鍵盤などを打鍵する際はこの認識が演奏を助けてくれます。

前腕の中も正確にマッピング!

前腕の骨は一本ではなく2本です(小指につながる骨は橈骨・親指につながる骨は尺骨)。2本あることでドアノブを回したりぞうきんを絞ったり、鍵を開けたり閉めたりが可能になります。

ピアノ演奏の際はこんな状態になっています⇩

ピアノ弾くとき、前腕の2つの骨は交差している!!

ピアノを弾くときは2本の骨は回内といって
橈骨が尺骨の上に覆い被さる状態になります。
どちらの骨も緩いカーブがあるため
接触することなく動きが可能にデザインされています。
本のページをめくるのもこの2本の骨の回内・回外にあたります。
ピアノの演奏ではトレモロの動きをするときなどに意識して使うと、指のみを使って弾くときと違い、少ないエネルギーで演奏することが可能になります。

指を動かす筋肉は前腕の中にもある!

   右前腕・手の掌側は指を曲げる筋肉(例:じゃんけんのグーを出す)
    右前腕・手の甲側は指を伸ばす筋肉(例:じゃんけんのパーを出す)

指を曲げたり伸ばしたりする(屈曲・伸展)筋肉はほぼ前腕にあります

数十年前に主流だった指先を立てて上下に大きく動かすような打鍵(ハイフィンガー奏法)を習った方も多くいると思います。この奏法は前腕にある筋肉を多用するので長時間の打鍵で前腕に疲労を感じる方も多いようです。またこの筋肉の先は腱になって手首にある腱鞘と呼ばれるトンネル状の組織(上図の薄紫の部分)を通って指に付着し動かします。腱と腱鞘が頻繁にこすれあうことで炎症を起こし痛みを引き起こすこともあるので(腱鞘炎)酷使しないよう注意が必要です(「演奏家の手の悩み」酒井直隆より抜粋)。

結論!ピアノ演奏に必要な関節や筋肉とは?

指や手、腕には他にも観察すべき関節や筋肉は沢山ありますが、はじめにお伝えしたように、ピアノ演奏に必要とされるものはこれに留まりません。身体それぞれの持つ本来の機能を正確に理解することは技術習得の道しるべや近道となりますが、特定の部分のみに意識を集中させるのではなく、身体全体をバランスよく使うことが重要です。是非、知識の引き出しの種類は多く持ち、その状況に応じて使い方を選択して頂きたいと思います。

鍵盤に触れる指、その指を遠隔操作する腕を知る!ピアノ演奏者のためのワークショップではこんなことを探求しレッスンをしています。興味のある方はお問い合わせください⇩

ピアノ演奏者が知っておきたいお得なこと・9

ffから瞬時にppを出すとき(subito piano)の身体の扱い方

こんにちは。「信頼される指導力と根拠のある技術を身につける!」ピアノ講師とプレイヤーを応援する 山本玲です。

瞬時に音量を増やす場合はそれほどの苦労はないと思われますが、その逆で瞬時に(「間」も取らず)音量を減らす技術に苦労する方は多いと思います。(私も現在、バッハ・ブゾーニの「シャコンヌ」に取り組んでいて、92小節目から93小節目に入るところで実験中)

呼吸で対処する、イメージを用いる、身体構造を考える、と対処方法は様々ありますが、ピアノ演奏における、デクレッシェンドや「間」さえも取らない急激な音量の変化の考え方と対処について、私なりの方法お伝えしたいと思います。

~そもそもffを出している時、身体には何が起こっているか?~

ピアノの音の強弱は打鍵の落下スピードで決まります。強く出したいときは➡落下スピードを速く、逆に弱い音が欲しい場合は➡ゆっくりと落下させ打鍵します。もちろん、一定以下のスピードで打鍵すると打鍵されたハンマーが弦まで届くことが出来ず撥弦出来ないので注意が必要です。

ちまたでは「脱力」という打鍵がブームとなっていますが、正確な表現ではないので、もう少しだけ具体的に順を追って起こっている事を説明すると・・・

・重力を利用して指と腕を落下させ➡鍵盤に落ちる瞬間に数多くある指の伸筋と屈筋を拮抗させて張りを持たせて打鍵します。腕にある指の筋肉は疲れやすいので手の中にある骨間筋や虫様筋を主に使うのがよいでしょう。(もちろん使用するのはこれのみではなく全身にある他の筋肉も少しづつバランスよく使います)

・さらに音量が必要になるときは肋骨のサイドにある前鋸筋(別命ボクサー筋)を取り入れます。前方に突くようにスピードを上げて打鍵をするとさらに音量を増すことが可能になります。

前鋸は肩甲骨を前方にスライドさせる働きがありますが、腕立て伏せなどをする際は僧帽筋と共に肩甲骨を固定させて身体を持ち上げます。私はこの腕立て伏せの時の肩甲骨の使い方をffの打鍵の際には使用しています。(肩甲骨を固定し腕を前方に突く動き)

            前鋸筋
          僧帽筋
    この中部繊維を肩甲骨固定に使用

~ではppを出している時の身体は?~

弱い音が欲しい場合は➡スピードを落として落下させ打鍵します。この時肩甲骨を固定する筋肉は必要はなく重力を利用して落下させます。繊細に音が途切れずppを出すには、関節も脇も緩んだ状態であり、なおかつ腕は鎖骨から指先まで続く長い部位だと正確にマッピングすることも大切です。

~では本題のff➡ppの瞬間でやることとは~

指や前腕だけに注目しがちな、強弱のコントロール。もうご存じの通り鍵盤に触れている指から遠く離れた軸骨格の影響が非常に強いです。

ffで使われた肩甲骨周囲の筋肉の張りを緩め➡ppに入るということ。これは理解できることですが、これを瞬時に行うという瞬発力が容易ではない。ましてや緊張を伴う本番となるとなおさらです。

そこで⇩

①トップジョイント(脊椎の一番上にふんわりと頭をのせ)を意識。

まずは身体本来の機能を充分に使えるスイッチをオンにします。(それについての解説はコチラ

②胸郭に固定された肩甲骨を解除(前鋸筋と僧帽筋中部繊維を緩め、動けるようにする)

この二つを同時にしかも瞬時に出来るようになるには、ある程度の習得期間は必要ですが、確実に音色に変化が表れるでしょう。

このケースもそうでしたが、問題が改善しないときはその問題箇所付近にある筋肉よりも、離れたところに問題が隠れているというケースが多いという事も知っておくとお得です。

ピアノ演奏者が知っておきたいお得なこと・8

演奏の「方向性」を考える

こんにちは。「信頼される指導力と根拠のある技術を身につける!」ピアノ講師とプレイヤーを応援する 山本玲です。

私がピアノ演奏に取り入れている「アレクサンダーテクニーク」という技術の中に7つの原理というものがあり、その中の一つに[direction]という原理があります。

[direction]は日本語では「方向」「指示」「命令」「動き」「管理」等と訳されますが、アレクサンダーテクニークで使用される際は「方向性」と訳されることが多いようです。辞書(実用日本語表現辞典)には「何かの物事を進める場合の進め方や方針の在り方などのこと」とあり、「目的に至る手段」という考え方がしっくりくるようです。

~F.Mアレクサンダー氏の「方向性と抑制」~

アレクサンダーテクニークの生みの親であるF・Mアレクサンダー氏の著書「the use of the self」の中には彼の経験を含めて「方向性」に関することが書き残されています(以下抜粋)。

・使い方の方向性を感覚に頼ってはいけない

・自分の使い方の方向性(自分を使う時)にどう指示を与えているか?

・最初の結果を達成しようという刺激への本能的な反応は、はじめに抑制されただけではなく、新しい使い方の方向性が、出されている間中、ずっと抑制され続けていることになる。

私の場合は「抑制」という言葉はあまり意識して使わないようにしています。(方向性やプランを確実に実行することであえて「抑制」ということを実行に加えなくてもいいのではないか?という考え方からです)現在継承されているアレクサンダーテクニークの技術にも変化は見受けられますが、この本を読む限り、執筆した当時の彼は常に「方向性」のなかに「抑制」をセットにして考えていたように感じます。

~演奏に必要な「方向性」とは~

では私たち演奏家が演奏する際に方向性を定めるにはどうすればよいのでしょう?

歩く・立つ・座るなどの日常動作も「動き」であり、その際にも手順が大切ですが、演奏においてはさらに情報を処理し続けながら動きの指示も多く・複雑になっていきます。

どのような動きであっても全く同じ定型のプランというものは存在しません。とくに複雑化する音楽(演奏)においてはなおさらですが、おおよその計画の必要性は感じます。その下地があったうえで、その場その時に応じた対処法を身に着ける必要があるのではないかと私は思うのです。

演奏の方向性=望みの演奏をする

次は具体的なプランについて以下にまとめてみました。

①頭が動けるように脊椎の一番上にふんわりとのせる(この身体本来の動きが可能になるスタートボタンは必須!

②次に望み・到達したい演奏を考える

③②のやりたい演奏をにするにはどんな技術?何が必要か?を考える

④それに必要なパーツ(関節や筋肉)の使い方を選択する

ステージでは身体の筋感覚に頼る自動演奏に任せることも経験上必要な場面はありますが、とくに技術的に難しいパッセージの個所などでは順序立てた明確な選択が必要なように感じます。

ただ、私たち演奏家、とくに専門的に学ぶ意識が強ければ強いほど、より高い技術を追いがちです。単なるアクロバットな演奏に陥らぬよう、まずは何を表現したいのか?という一番の根幹となる「方向性」を大切にしたいものです。

ピアノ演奏の時にも 人間に本来備わっている機能の邪魔をしない

「頭が動けて身体全体がついてくる」と演奏も動きも驚くほど変わる ?!

こんにちは。「信頼される指導力と根拠のある技術を身につける!」ピアノ講師とプレイヤーを応援する 山本玲です。

アレクサンダーテクニークを取り入れたレッスンの現場で頻繁に聞く声掛けが、この「頭が動けて身体全体がついてくる」であることは間違いないでしょう(多少の言葉の選択は異なるかもしれません)。

実は人間本来の機能を最大限に生かす仕組みがこの頭と脊椎の関係に隠されているようです。

頭・脊椎の本来の機能=プライマリーコントロール

アレクサンダーテクニークには7つの原理があるのですが、この頭と脊椎の関係はそのうちの一つで、プライマリーコントロール(人間に本来備わっているバランス調整機能)と呼ばれています。この頭と脊椎のある関節を押し潰すように固めてしまうと本来備わっている機能である動きや演奏(思考も含む)が難しくなります。もちろん、固めたままで練習を積んで(悪しき習慣)しまってもある程度の成長や向上は望めますが、自分自身の100%の力を発揮することは出来ません。これが起きている関節は環椎後頭関節と呼ばれ(下の赤➡の箇所)両サイドの耳の穴を結んだそ真ん中の位置に存在すると言われています。

環椎後頭関節の位置

そもそも、何故押し固めをするのでしょう?

脊椎動物は「恐怖反射」(びっくり反射とも呼ばれる)という本能を生まれながらに持っています。敵に襲われたときに本能的に「固まる」というアレです。

野生動物のケースでお話しすると、草食動物(被食)が肉食動物(捕食)を見つけた際にとっさに起こる身体の現象です。逃げる➡闘うの前に起こす行動で、頭と脊椎をギュッと押し固めることで身体の動きを止めます。先ずは気配を消すことで捕食動物に気づかれずにやり過ごすという生き残るための第一の行動とも言われています。

高度に成長を遂げた哺乳類の私たちは、現代でこそ猛獣に襲われる心配はありません。ただ、いつどこで襲われるかもしれないという危険察知能力の遺伝子が優れているものだけが生き残り、現代の人間の本能に受け継がれているため「恐怖反射」「びっくり反射」はスタイルを変え、根強く残っているのが現状です。唐突に何か物が飛んできたときのとっさの動き・親や教師に怒鳴られておびえた子供・ステージで演奏する際の過度な緊張状態などでも、かなりの確率でこの反射が起こっていると言えます

実際にこの関節で起こっている筋肉の働きを明確に分析する

動物の骨の周りには、身体を動かすための筋肉が300種、650個もあり、その一つ一つの筋肉の先が腱となって骨に付着して機能しています。様々な分類の仕方がありますが、筋肉の深さで分けると表層筋と深層筋に分けられます。下図は背面の表層にある筋肉。使った感覚がダイレクトに判るのが表層筋で、瞬発的な力を発揮します。

       表層筋

表層筋を何枚も剥がしていくと、深部に持久力はあるものの意識しづらい深層筋が表れます。これは後頭部の例で最も深いところに存在する後頭下筋群

<後頭下筋群>は姿勢を自動調整するセンサーが豊富でバランスを調整する機能を持つと考えられている

人間(脊椎動物)は 各感覚器官からの刺激を受けてバランスを保っています。また全ての筋肉の中には筋紡錘という身体のバランスを調整するセンサーが存在しているそうです。歩く時にも脚だけではなく身体全体の筋肉を微調整して助けてくれるのでロボットのような不自然な動きにはならず、バランスの良い自然な動きが可能になるのはこの機能のお陰のようです。後頭下筋群は数ある筋肉の中でも筋紡錘が多く存在するところになります。後頭下筋群は頭部から首の骨上の1番目と2番目の骨にかけてつながっている最も深いところにある対の4つの筋肉の総称です。深層筋なので感じることは出来ませんが、身体の動きを意識することなく微調整してくれる高機能センサーを所持する筋肉群になのです。日常生活で無意識に微調整を行っていて、頭と首を繊細に保つ働きをしているとても重要な部分にあたると考えられています。

この後頭下筋群の機能を理解することでも、アレクサンダーテクニークで言われている頭が自由にいつでも繊細に動ける状態で、脊椎の一番上の関節にふんわりとバランスをとっていること」が身体全体を存分に使いこなせるという理解を助ける材料となるでしょう。

マッピングを正しく理解し、意識することは、人間本来の備わっている機能(プライマリーコントロール)を抑制することなく使える状態にに引き上げてくれます。これは演奏のみならず日常の動きや思考を最大限の状態に引き上げることが出来る身体の機能といえます。

まずは日常の動きから意識をすることが大切です!それが望む演奏につながっていくと私は信じています。

ピアノ演奏者が知っておきたいお得なこと・7

緊張を味方につけるには! その2

こんにちは。「信頼される指導力と根拠のある技術を身につける!」ピアノ講師とプレイヤーを応援する 山本玲です。

11・4の「緊張の正体を知って、演奏力を伸ばす!」の資料作りが思いのほか楽しく、

しかも

ワークショップ開催のために学びを深めたおかげで、自分自身の本番にも変化がありました。

現在、まとめているものは主に緊張で起こる自律神経系の身体の変化ですが、インプットしやすいようにまとめたものを当日お配りする予定です。

これまでの「交感神経と副交感神経」のみの知識から➡「多重迷走神経の理論」も含め、アップデートしています(HPにも添付したかったのですが、何故かコピーできず・・・残念)。HPの投稿ではその神経システムから見た「緊張の変化」を簡単な文章ですが綴ってみました。

ステージ・本番での緊張の3ステップ(自律神経)を知る」

日常では人が人として健全に社会的な繋がりを保つため「腹側迷走神経複合体」という神経がはたらいています。相手の内面を理解する力と互いの関係性の中で協力し合う力です。

ただ環境や状況が変化もしくは悪化し、人に助けを求めることで解決できなくなった場合(ステージでの本番)➡「交感神経」が優位に働き逃走闘争モード(緊張)に変わります。ソワソワや手の震え、または手に汗をかいたり口が渇き心臓の鼓動が速くなるような身体の変化が表れます。

身体がそのような対応をしても打開出来ないとなった場合(緊張の度が超えた時や絶体絶命の危機など)➡「背側迷走神経複合体」の防衛反応オンになり、身体は硬直し乖離状態(心と身体の解離)になります。野生動物でいう「死んだふり」「省エネモード」にあたります。ステージで何も感じなくなり、演奏する気もなくなる心理状態がそれにあたります。

このような1~2、または1~3までのステップで本番の緊張は起こります。人間や動物は「見えないもの」や「「理解できないもの」に恐怖や不安を感じます。緊張の解決策を求める前に、このことを「知っておくこと」は実は非常に大切なプロセスでもあります。

11月4日(祝) 本番でいつも通り!を望む大人のピアニストさんのためのレッスン「緊張の正体を知って、演奏力を伸ばす!」では参加者の体験にも寄り添って探求をしていく予定です。

2名ほどお席が空いております。ご興味おありの方はこちらからどうぞ↓

ショートコード

ピアノ演奏者が知っておきたいお得なこと・6 

緊張を味方につけるには!その1

こんにちは。「信頼される指導力と根拠のある技術を身につける!」ピアノ講師とプレイヤーを応援する 山本玲です。

頼りになるセロトニンを味方につける方法!

●口角を上げる

数年前になりますが、息子の習うバレエ教室の参観会に行った時のこと。
レッスン中、指導の先生から
「口角を上げて」
というアドバイスがありました。

真剣に取り組むあまり、口をへの字にしながら取り組む子供たちに
口角を引き上げることで見栄えだけではなく
☆頭も上向きの方向に向かう事を伝え、
そして脊椎を長くし続けることにより
しなやかさをもった回転が可能になる

そんな事を仰っていました。


そんな
「口角を上げる」
という事で思い出した効果がもう一つ!


たとえ楽しくなかったとしても口角を上げることで→
脳が騙され、気持ちが上向きになり元気になる

という事

脳に「幸せ」という信号が送られ、神経伝達物質の「※セロトニン」が分泌され
興奮のアクセル役「ノルアドレナリン」「ドーパミン」暴走を抑え心のバランスを整えるブレーキの役割を担い
心身がリラックスし、最適な覚醒状態にする。
という仕組みです。

また日ごろから、神経伝達物質のセロトニン分泌の多い脳に変える方法を以下に挙げてみました↓

●セロトニンを増やす食材

セロトニンが脳内で作られるにはトリプトファンという必須アミノ酸が必要になるそうです。豆腐・納豆・味噌・醤油などの大豆食品、チーズ・牛乳・ヨーグルトなどの乳製品,米などの穀類、そのほか ごま・ピーナッツ・卵・バナナ、などにトリプトファンというが多く含まれており、なおかつ取り込みやすいとのこと。

ステージ前の軽食にバナナを摂取する演奏者が多いのもうなずけます。ちなみにバナナと一緒に牛乳の組み合わせが効果的です。

●セロトニンを活性化させる運動

ウオーキング・ジョギング・自転車こぎ・スクワットなどの日常生活レベルのリズム運動。(ガムをかむ・歯磨きをするなどの一定のリズムでも効果はあるとか)おススメは早朝の人通りが少ない時間のウオーキングを5分~30分を集中して3か月以上は続ける続けることで神経構造そのものが変わっていくそうです。

●太陽の光を浴びる

日光を浴びることで睡眠ホルモンのメラトニンの分泌が止まり、セロトニンの分泌スイッチが入る。

●グルーミング

聞きなれない言葉ですが・・・ペットをなでる・スキンシップ・マッサージをする行為になります。気の置けない人とゆっくり会話する行為も含まれます。ようするに心と心を通わせたという事実と行動が大切でこの行為は男女差なくオキシトシンという物質が分泌されるようです。このオキシトシンはセロトニン活性を誘発をするそうです。

以上になりますが、一番即効性があるのは「口角を上げる」ことですね。ストレスと上手に付き合い、ステージや本番の演奏をより自分らしいものにしていきましょう!

緊張の正体をもっと知りたい方はこちらのワークショップがおすすめです。↓

大人のピアニストさんの為の講座が11月4日に開催されます。




口角を上げる効能と効果

*セロトニン
俗に言う「幸せホルモン」
(人間の精神面に大きな影響を与える神経伝達物質でノルアドレナリンとドーパミンと並ぶ三大神経伝達物質)

☆セロトニンは姿勢を保つ抗重力筋にも働きかける。

ピアノ演奏者が知っておきたいお得なこと・5

『効果的に時間を使う練習』

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こんにちは。「信頼される指導力と根拠のある技術を身につける!」ピアノ講師とプレイヤーを応援する 山本玲です。

春から夏にかけ、様々なステージやコンクール、セミナーにチャレンジするお子さんがお教室でも多くみられます。
最近のお子さんは習い事も多く、忙しい毎日を過ごしていますので効果的な練習をするよう指導してます。
ただ
どうしても非効率的な「反復練習」をしてしまう生徒さんが多い・・・・

反復練習は前回の「演奏者が知っておきたいお得な事・4『反復練習の意義を知ることで身体の故障を引き起こすことなく、効果的に結果を手に入れる!』」でもお伝えしたように、やり方によっては間違った使い方をインプットしてしまう危険性もあります。プランのない、惰性的な繰り返しの練習で偶然弾けるのを待つのは、非効率ともいえます。

お教室では以下の「練習方法」を指導しています(低学年以下の生徒さんは親御さんのご協力が必要になります)。

演奏

①情報収集

②分析

③プラン(選択肢)

④実験

⑤フィードバック

上の図を解説すると・・・
①情報収集・・・演奏後、その日(またはその練習で)望むイメージで弾けなかった箇所をピックアップ⇨一つだけチョイスする。
②分析・・・何故そのような事が起きるのか?を分析し原因を明確にする。(運指・目線・準備・テンポ・表現etc・・・)
③プラン・・・②の分析に沿って、解決できると思われるそれぞれの具体的なプランを考えられるだけ出す。
④実験・・・②で出したプランを一つ試す。
⑤フィードバック・・・④の実験を客観的に振り返る。(結果を踏まえ、他の改革案を検討する)
(最適なプランが見つかるまで③プラン(選択肢)⇨④実験⇨⑤フィードバックを繰り返す。)

また、集中力の続かない低学年のお子さんには長時間の練習よりも1回に20分前後の短時間練習を数回取ることもお薦めしています

勿論
「弾きたいイメージを明確にもつ」
「ニュートラルポジションで坐骨に座る(頭がふんわりと脊椎に乗り、背中を長く広くする。骨で体重を支え、不必要な筋肉は使用しない)」
ことは大前提です。