ピアノ演奏者が知っておきたいお得なこと・14

練習中に腰が重くなる方へ

こんにちは。「信頼される指導力と根拠のある技術を身につける!」ピアノ講師とプレイヤーを応援する 山本玲です。

長時間練習を推奨するわけではありませんが、中上級者であれば普段のピアノ練習に1時間~3時間続けて行うことは珍しくないことだと思われます。曲のタイプにもよりますが手・肩の疲労の次に長時間の練習で腰の違和感痛みを覚える方が多いようです。

また、緊急事態宣言の外出制限のなかでピアノに向かう時間が増えた方もいらっしゃるでしょう。今回はピアノ演奏の際軸と腰の骨(腰椎)、それを支えている筋肉を知り、座って快適に演奏するということを考えていきたいと思います。

目次
1.椅子のポジションはミドルCの前?
2.まずは軸骨格の仕組みと役割をを知る
3.腰椎を含むしなやかに連なる脊椎を知る
4.演奏時の軸骨格と腰の筋肉はどうなっているか
5.他の選択肢も考える
6.まとめ

※要点のみ知りたい方は1・2・3・は読み飛ばしてokです。

椅子のポジションはミドルCだけではない

鍵盤は直線状に88鍵・123cmにわたって並んでいます。現代のピアノ学習では真ん中のド(一般的にミドルcと呼ばれている)から一音づつ増やしていく学習法が一般的なこともあり、ピアノの椅子はほぼ真ん中に設置しそこの位置に座ることがごく当たり前とされています。

ただこれは初級ピアノ学習者の曲には当てはまりますが、中級上級になると曲によって頻繁に使われるポジションが異なります。にもかかわらず、初級者の時のポジションのまま弾き続ける方は専門的に学んでいる演奏者にも非常に多いようです。

では高音⇄低音と遠くの鍵盤を弾く際に軸骨格や骨盤がどのように動いているのか見ていきましょう。

まずは軸骨格の仕組みと役割を知る

人の骨はざっくり2つに分けられます

  • 頭と軸=軸骨格
  • 腕と足=付属骨格

今回のテーマである腰にある腰椎が含まれる軸骨格頭蓋骨(咽頭の骨も含む)・脊柱肋骨及び胸骨の体の長い軸に沿う骨すべてを含みます。(幻のツチノコ体系を想像させる図⇩)

付属骨格なしでも生きていくことは可能ですが、この軸骨格なしでは生命は維持できません。

         軸骨格
     画像はvisible bodyより引用

腰椎を含むしなやかに連なる脊椎を知る

                脊椎を右側から見た図
             ⇦背面         前面⇨

上の図は右側から見た脊椎(背骨)の図です。とがった恐竜の棘のようなものが背面になり、身体の中心部分には積み木(orだるま落とし)のような円柱状の椎骨という骨が椎間板というゼリー状の弾力があるクッションを挟んで24個重なっています。魚類はほぼ同じ太さの骨が連なっていますが(重力が上からかからないため椎間板の必要もなし)、人類が直立して生活するようになり、重い身体を支えてバランスを取るためにこの緩やかなカーブと下にいくほど太くしっかりとした椎骨が出来たのだそう。

・頸椎・・とにかく自由度高い万能選手たち、前後に曲げ伸ばし・左右に側屈・回旋もできる・2個の関節面で頭蓋骨を支えています

・胸椎・・・回旋が得意・✖棘の形状から後ろに反ることが出来ません(胸椎の下2つは後ろに反ることも可能で万能選手ともいえます)

・腰椎・・・前後に曲げ伸ばし・左右横に側屈・✖回旋(ねじる)はほぼ出来ません

※椎間板ヘルニアに頸椎腰椎部分で起きるのは、よく動く部分なので椎間板への負担が大きいから   by解剖学者:坂井建夫氏

体重を支えているのは棘の部分ではなくこの円柱状の椎骨と椎間板だという事や、脊椎は一本の棒ではなく沢山の椎骨とクッションの役割をする椎間板がしなやかに繋がりS字型を描いた骨の集まりであるという事、腰椎はこの連なりの一部という事を意識することだけでも動きは変わっていくでしょう。

演奏時の軸骨格と腰の筋肉はどうなっているか

ここからはいよいよ演奏の際の身体を腰回りを中心に見ていきましょう。

ミドルcポジションの中央に座った場合で、指の届かないポジションに指(腕)を持っていった場合を探求します。

今回は高音域を弾くために腕をそちら側へ持っていきます→腕だけでは届かないと確認した時点で(もしくは予測した時点)→腰椎は右へ曲がっていきます(赤色の部分はこの時に使われていると思われる筋肉群)⇩

もう少し身体の奥深くを見てみると、腰方形筋という身体の奥深くにある筋肉(ここでは薄ピンクで示されてます)が側屈を手伝っています⇩。

       腰方形筋(右のみ)

腰方形筋は脊椎の左右に付着していて、片方づつの収縮で体幹を側屈させます。この筋肉は脊柱の安定性に重要な役割を持っていて、どちらかがたくさん働いていたり、また逆にどちらかが弱くなっていたりすると骨盤の高さに左右差がうまれて痛みを発生させたりするようです。

その為、高音域にばかり、もしくは低音域ばかりに偏って腰を側屈させていると腰方形筋の左右差が生まれて重くなったり痛みをもったりするようです。(ゴルフのスイングや野球のバッティングも同じ方向へのスイングのためバランスが悪くなるので要注意)

今回はこの筋肉の使い方による痛みに焦点をあてていますが、筋肉以外の故障で痛みを引き起こす場合もありますので(ヘルニア他)痛みが出た場合は医療機関で診て頂くのが大前提ということをお忘れなくお願いします。ピアノ演奏の場合、もちろん癖もあると思いますが、どちらかに偏って演奏する曲の場合は、練習後に使った腰方形筋とその反対側のストレッチも忘れずに行うことをおススメします。(ストレッチは様々な方法があります。私が行っているストレッチはまた後日アップしたいと思っています)

他の選択肢も考える

選択肢1:座るポジションを変える

ピアノ演奏時もそれ以外もですが、椅子に座るときは坐骨2点と脚2点の合計4点で上半身を安定させます。(厳密には坐骨の前側部分で座ることを意識します)。赤く囲んだ○の部分

ただ、鍵盤の中央からかなり遠い部分まで指を届かせるのに両方の坐骨にバランスよく乗り続けるのは、よほどの体格の持ち主か、極端に、腕が長い方でない限り無理があります。そこで一つ目の選択肢としてはミドルcポジションの前に座る事に拘らず、偏りがちな音域の方に少し座る位置(坐骨の位置)を移動させるのはどうでしょう?ほんの数センチでもかなり腰の負担が変わることが分かると思います。

選択肢2:脊柱起立筋も使い、行きたい方向に上も加える

またミドルCのポジションの前に座ることを選択される場合は高音低音時に座骨の両方の2点に座り続けることに拘らないようにしましょう。時には座骨のどちらかを離し、脊柱起立筋という重力に逆らって上方向に向かう(側屈も手伝う)筋肉群を使いながら指のリードで弾きたいポジションに移動することも選択肢の一つと言えます。その時、脚の支えは多いに活用しましょう。

脊柱起立筋群(棘筋・最長筋・腸肋筋)
作用:身体を上方向に伸ばす・身体を横に曲げる(側屈)

まとめ

まずは身体の中で何がおきているのかを知ることが大切です。そのうえで、座るポジションを曲によって変えることも検討しましょう。人の身体は基本的に頭のてっぺんからつま先までの全身を使って動かすことでバランスを取っていることも忘れずに、可能な限りの選択肢を出し、実験し、その時の自分に合っている場所を見つけることを怠らずに探求してください。

F・M・アレクサンダー物語

こんにちは。「信頼される指導力と根拠のある技術を身につける!」ピアノ講師とプレイヤーを応援する 山本玲です。

このHPでちょいちょい見かける「アレクサンダー・テクニーク」というワード。某大手音楽カンパニーの本棚にその名の書籍が並ぶようになったとはいえ、「アレサンダー・テクニーク」と言い間違われたりしてまだまだ認知度が高くなったとは言い難い(私も学び始め初期はアレサンダーと言ってたし)。今回はふんわりと頭の片隅に置いておいてもらえたらいいなって感じの柔らかなノンフィクションといま現代のアレクサンダーテクニークの個人的意見です。

目次
1.F・M・アレクサンダーの物語
2.あの人も学んでいた!?
3.アレクサンダーテクニークの根本となった原理

F・M・アレクサンダー物語

むかしむかし、そんな遠い昔でもない100年くらい前のむかし、オーストラリアのタスマニア島というところに10人兄弟の1番上としてアレクサンダーさんが生まれました。釣りや狩り、乗馬など、のどかな少年時代を過ごしたアレクサンダーさんでしたが20歳になると大都会メルボルンに渡ります。演劇が大好きだった彼は働きながら朗誦家(ろうしょうか)という舞台で詩を朗読する勉強をはじめました。

ところが、ある日舞台でいつものように朗読していると声が出なくなるというハプニングが起こります。その後もかすれたり声が出なくなることが続き、お医者さんからも「声を出さなければ治るでしょう」といったアドバイスしかもらえませんでした。そこで彼は自分自身で舞台に立った時に起こる声の不調の原因を探し始めました。たくさんの鏡を用意して自分を観察するのに長い年月をかけました。ついに、普段の生活での話し方には見られない、舞台で声を出すときだけにやってしまっている必要のないことに気付きます

      「ワタシ アタマ オシサゲテ イルネ!」

ほんのちょっぴりの動きではありましたが、彼は頭を後ろに下に押し下げ口から息を吸う喉の部分(咽頭)を押していることに気付いたのです。

これがその後、身体のパフォーマンス能力を上げると広まっていった「アレクサンダー・テクニーク」の発見でした。それからメルボルンやシドニーで声を使う人たちに教えることをはじめ、徐々にお医者さんたちにも認められていきました。その後、彼はテクニークをさらに広めるため、ロンドンアメリカに渡り、次の世代につないでいくお弟子さんたちを育て、演劇界だけにとどまらずアレクサンダーテクニークは世界中に広がっていきました。今では欧米の音楽大学で正規の授業として取り入れられています。

        おしまい

あの人も学んでいた!

アレクサンダーテクニークを受けた有名人

俳優:ロビン ウイリアムズ、キアヌ リーブス、ビクトリア ベッカム、パトリック スチュアート、クリストファー リーブス、ヒラリー スワンク他・・・

ミュージシャン:ポール マッカートニー、スティング、松任谷由美、鈴木重子、他・・・

指揮者:サー コリン デヴィス他・・・

声楽家:エマ カークビー他・・・

バイオリニスト:ユーディー メニューイ他・・・

アレクサンダーテクニークの根本となった原理

F・M・アレクサンダーさんの死後、沢山のお弟子さんたちに技術は受け継がれていきましたが、伝わり方も多様化していったと言えるでしょう。私自身も解剖学をヒントにしてアレクサンダーテクニークの技術を使うのを好みますが、F・M・アレクサンダーさんが最初に発見した「頭と脊椎の関係がからだ全体のバランスを決定づける」という原理(7つの原理のうちの一つ)は本来の身体の動きを取り戻すために最も大切なことで、解剖学の知識や思考のくせなどを考え直す前の第一に、思い出すべきポイントだと考えています。

   まずは頭を脊椎の上にふんわりとのせて!

練習する量(努力)に上達の見返りを求めていませんか?

こんにちは。「信頼される指導力と根拠のある技術を身につける!」ピアノ講師とプレイヤーを応援する 山本玲です。

ピアノの上達や、何かしらの技術を習得するという事には練習は不可欠です。練習した時間に比例した結果が与えられはず・・・「努力は裏切らない・努力は報われる」と殆どの人々が思っている(願っている)ように感じます。・・・でもそれを言葉のまま信じてよいのでしょうか?

目次
1.努力は裏切らないって本当?
2.目的を持った練習の重要性
3.意味のある工夫とプロセス(手順・方法)

「努力は裏切らない・報われる」って本当?

坂道を登る人のイラスト

常に時計の針を気にしながら、「練習時間」の記録更新に喜びを覚えた幼い時期を過ごした方は少なくないのではないでしょうか(もれなく私も)。学び始めの曲の場合、反復練習も必要ではありますが、指導者や保護者の誤った声掛けによっては時間をかけてやった分だけ上達できると思い込んでしまうことがあります。

関節痛のイラスト(手首)

さらに目的(望み)から結果までの間のプロセスをすっ跳ばしたやみくもな反復練習は時間の浪費だけでは済まず、手の故障に繋がる場合もあります。

目的を持った練習の重要性

旧100ドル札のイラスト
ベンジャミン・フランクリン👆

アメリカの建国の父ベンジャミン・フランクリン(時は金なりの名言を持つ)も「同じことを何度も繰り返しながら違う結果を期待することを「狂気」という」と言ったと記録されていますし、

何を練習したか?ではなく、いかに練習したかが重要であるとは ピアニストであり最良の解釈家として高く評価されているバックハウスの言葉。
「ただ練習すれば良いのではなく、どのように練習するのかを”考える”ことがとでも大切である」と語っていたそうです。

意味のある工夫とプロセス(手順・方法)を考える

ピアノだけに留まらない事ですが、何かを習得したいと思い立った時に気持ち的な焦りから数打てば当たる「がむしゃら」行動に出がちです。ここでまず大切なのが、冷静に手順・方法を考えること。以前に記事に書いたものと類似しますが・・・
①のぞみを明確(具体的に一つに絞る)にする②観察する③分析する④プランを立てる⑤実験する⑥結果を判断する
仮にこれがプランAとして、そのプランAが思い描いた結果に至らなかった場合は、プランBを練るべく②~⑥を繰り返す。

観察を伴い、方法を工夫した思考錯誤が上達への近道だと思うのです。(自分一人で限界がある場合は指導者等に観察してもらう選択も出る)

量を求めるのではなく質にこだわった練習を重ねた場合の「努力」に限り「努力は裏切らない・努力が報われる」と言えるのかもしれません。

※コロナの緊急事態宣言もあり、実習生の募集は一旦締め切らせて頂きます。5月以降に再度募集のご連絡を申し上げます。

 


ピアノ演奏者が知っておきたいお得なこと・13

呼吸の工夫でピアノ演奏をさらに上げる!

こんにちは。「信頼される指導力と根拠のある技術を身につける!」ピアノ講師とプレイヤーを応援する 山本玲です。

管楽器奏者や声楽家は呼吸と音楽のフレーズを一致させなければ演奏は出来ませんが、ピアノ演奏はどうでしょう?

意図的にもコントロール可能な呼吸の動きですが、自律神経の支配を受けていることもあり、日常においては呼吸は無意識の働きです。ピアノ演奏中は技術や演奏の質を高める意識が強く働くため、多くのピアニストは呼吸の状態に気を配ることはほぼないと思われます(難関パートでは息を詰めることも多い)。ただ実際はピアノ演奏中の呼吸も私たちの身体に作用し音楽にも影響を与えています。呼吸の現状を把握することで演奏に効果的な呼吸を探求し、選択して頂きたいと思います。

目次
1.覚えておきたい呼吸を支える場所
2.そもそも呼吸のしくみって?
3.ピアノ演奏中の呼吸で覚えておくとお得なこと
4.まとめ

覚えておきたい「呼吸を支える3つの場所」

  • 肋骨
  • 横隔膜

・・・肺はガス交換の場所で鳥籠のように囲まれた肋骨で守られていて、肋骨一本一本がバケツの取ってのように上方向に持ち上がることで容積を増やすことが出来ます。肺の上部は鎖骨のくぼみのところまで、下はみぞおち、背後は背中まであり想像以上に胸腔内(肋骨内部)を占領しています。

肋骨・・・肋骨の骨と骨の間には肋間筋という筋肉があり、この筋肉が肋骨の間を狭くしたり広くしたりして胸郭内の容積をコントロールしています。この動きと横隔膜が下がることが協力し合って、空気を取り込むことが可能になります。

・横隔膜・・・横隔膜は筋肉です。自律神経の宝庫とも呼ばれているそうですが、主な働きは空気を出し入れする働きを担っています。肋骨の下の部分からパラシュートのように付着していて、そのパラシュートの傘から腰椎に沿って脚のように筋肉が付いています。肋骨の動きも伴いますが、このパラシュート状の横隔膜が上下することで空気が出入りします。↓

    余談ですが・・・横隔膜は焼き肉の部位でいう「ハラミ」

そもそも呼吸の仕組みって?

  1. 横隔膜や外肋間筋が緩み始めると(横隔膜のパラシュート部分が、高い位置へ)肋骨・肺で構成される胸腔の密度は小さくなる。その際に肺に入っていた空気は自然と口や鼻から出ていく呼気から開始することを意識するのがポイント)➡
  2. 横隔膜の筋肉が収縮することで横隔膜自体が下に下がっていき(パラシュートの山が低くなる)、同時に肋骨がバケツの取ってが上がるように上方向に持ちあがり、肺のある胸腔内が広がる
  3. 内部の圧力が低くなり(陰圧)口や鼻から自然に空気が入ります(吸気)➡1・2・3が繰り返され続けるのが呼吸運動)

※呼吸のコツ

・吸う(吸気)時に横隔膜の下にある臓器は押し下げられ、最も下まで行くと骨盤の一番下の骨盤底筋群まで到達します。この時に腹筋群を固めてしまうと内蔵の行き場が限られてしまい、吸う息の量を制限してしまうので沢山の空気を取り込みたい場合は腹筋群は緩めましょう。逆に積極的に吐きたいとき(勢いよく吐く)は腹筋群を使います。

・肋骨は脊柱(背骨)にくっついていてそこにある関節のお陰で上下に自由に動くことが出来ます。地面とつながっている骨に身体の重みを支えてもらい、胸郭の周りの筋肉の支えの仕事を減らすと脊椎と繋がっている肋骨は自由に動けるようになります。また、胸郭の周りの腕を動かすための筋肉の仕事を減らし、背中を柔らかく使うことも呼吸をし易くするコツとなります。

ピアノ演奏中の呼吸で覚えておくとお得なこと

  • 深い呼吸が出来ているとうことは腕(鎖骨や肩甲骨)が呼吸の際に必要な関節を引き留めずに自由に動かせる状態になっている➡指のコントロールの可能性を高くする。・・・深い呼吸をするには胸郭の周りにある余分な緊張を取って呼吸の際に使われる筋肉を自由に動かせるようにすることがポイントとなります。呼吸の仕組みでお伝えしたように吸気の際には肋骨が上方向に持ち上がります。ピアノ演奏時は緊張から鎖骨を引き留めてしまいがちですが、引き留めてしまうことで深い呼吸は出来なくなります。ということは・・・深い呼吸が出来ているということは鎖骨や肩甲骨が自由に動けているということになります。「ピアノ演奏者が知っておきたい大きなこと・10・腕はどこから?」でもお伝えしたように腕は指先から鎖骨までと考えます。腕の根っこである鎖骨や肩甲骨を動かないように押し付けていると本来動くはずの指が動きにくくなります。
  • 曲の開始直前に鼻から深く吸気をすることもお薦めします・・・喉には息を吸い込む筋肉は存在しません。鼻から空気を取り込む動作はこの喉で吸い込もうとする間違った動作を防ぐことが出来るでしょう(口呼吸は喉と鎖骨周りにも緊張を与えがち)。そしてこの鼻呼吸は身体のバランスを保つ頭と脊椎の関係性を良い状態にするともいえます。
  • そもそも呼吸は酸素を取り込み、二酸化炭素を排出するガス交換のための運動です。緊張時に呼吸が浅くなることで十分な酸素が脳に届けられなくなりなり、思考力も落ちる可能性があります。
  • また、吸気の際には交感神経が働き、呼気はリラックス効果が高い副交感神経が働く(セロトニンという脳内ホルモンも分泌)ことから、吐くことを意識することにより副交感神経が働き、落ち着いた状態を保つことが出来ます。

まとめ

呼吸は今回お伝えした以上に奥深いものですが、今回はピアニストが知識として持っていることが望ましいと思われる最低限の情報をお伝えしました。(フレーズ間の呼吸等はほとんどの皆さんが実験済みのこととして説明は省きました。)

演奏時に呼吸の意識をするか?意識をしないことを選択をするのか?の相性や個人差は勿論あると思います。他の技術を取り入れるときと同じく、その都度、実験しその時の自分に合った選択を根気よくやって頂けることを願います

ピアノ演奏者が知っておきたいお得なこと・12

快適なペダル(ダンパーペダル)の踏み方

こんにちは。「信頼される指導力と根拠のある技術を身につける!」ピアノ講師とプレイヤーを応援する 山本玲です。

前回の「ピアノ演奏者が知っておきたいお得なこと・11」では演奏中 脚も意識に含めることで、パフォーマンスの質は確実にアップすることをお伝えしました。

今回の「演奏者が知っておきたいお得なこと」シリーズはペダルを踏む際に知っておくとお得な脚と足のマッピングになります。

ペダリングで大切な「足関節のマッピング」

足(床やペダルに触れる部分から足首と呼ばれる部分)の関節をL字型と思っている方が殆どです。でも実際の足関節はTの字が逆さになっている形です。⇩

        ここが足関節 (逆T)

L字型のミスマッピングでペダルを踏んでしまうと、どこかしらに痛みを感じるようになります。足の動きで重要なことは踵の後ろで起こるのではなく踵の骨の前の足関節で起こるという事。

踵は床についていますが、ペダリングでは膝や股関節の動きも少しですが伴います。膝と股関節も使うということは体重を座骨にのせてバランスをとって座ることも前提として大切なことです。(体重が座骨に伝わると脚は自由に動かせます。)

足関節・膝関節・股関節も微細ながら動きが生じている

ペダルの上に置かれた足が上下に動くと足関節・膝関節・股関節も動きが生じて脚全体に動きが生じます

ピアノは靴の文化圏で誕生した

日本では練習の際に柔らかいスリッパや時には素足で踏む方が多いようですが、そもそもピアノは室内で靴を履く文化圏で生まれた楽器です。そのため素足で長時間ペダルを踏むには無理のある構造と言えます。また素足でのコントロールに慣れてしまうと、厚い皮の靴底でペダルを踏んだ時に少しの力で下がることに気付くでしょう。時折、ステージ本番でペダリングの加減をコントロールすることが出来ず、踏み込みすぎや切り替えがあまくなり濁った音が響き渡る演奏に出会うことがあります。これは本番だけ靴を履いてしまうと起こりやすい例です。練習でも本番と同じ条件でペダリング出来るように配慮することが望ましいでしょう。

まとめ

ペダリングの際の足の動きが起こるのは踵が床に触れている部分ではなくその前にある足関節で起こる(逆T字)。

ミスマッピングで記憶してしまうと、筋肉緊張に繋がり大腿四頭筋や脛、股関節に痛みや違和感を伴う場合がある。

本番と同様のコンディションの履物を選び、練習する。

●そして・・・度々お伝えしている特定の部位のみに意識を集中することを避け、身体全体を意識に含める。※足と脚だけに意識を向けてペダルを操作するのではないという事も覚えておきましょう。すべてのバランスの場所を互いに協調させることで身体の動きは本来の質を取り戻せます。

意識的思考を使う日々のピアノ練習~主観的な感情を振り返りながら~

こんにちは。「信頼される指導力と根拠のある技術を身につける!」ピアノ講師とプレイヤーを応援する 山本玲です。

今回は日々の練習とその根っことなる主観的な感情について心掛けておくとお得なことを「思考」の面からお伝えしたいと思います。

意識の高い人のイラスト(女性)

意識と思考

意識・・・・一般に「起きている状態にある事(覚醒)」または自分の今ある状態や、「周囲の状況などを認識できている状態のこと」を指す。Wikipediaより抜粋

思考・・・・考えや思いを巡らせる行動であり、結論を導き出すなど何らかの一定の状態に達しようとする過程において、筋道や方法などを模索する精神の活動である。Wikipediaより抜粋

タイトルにある「意識的思考」とは今置かれている状況を認識しながら結論を導き出すための考えや思いを巡らせる行動にあたると言えるでしょう。

今、何がやりたくて(出来るようになりたくて)そのためには何を選択するか?

思考活動には意識的思考と、自動的思考の2つのシステムがあるそうです(分類する言葉は他にもあります)。

どちらも、その場にふさわしい使い方や役目を誤らなければ効果的に使うことが出来る思考システムです。自動的思考は脳のエネルギーの消耗が少なく・高速で処理できるというメリットがあります。何も考えずにピアノに向かうとこちらが働き始めるのは生物学的に捉えた人間としては当然といえるでしょう一方、意識的思考は脳のエネルギー消耗も多く、処理が遅いため本能的に使うことを避ける傾向が強くありますが問題決を求める場合には意識的思考が有効でしょう

参考:思考が使用するエネルギー・・・脳は重量換算では全身の約2%であるにもかかわらず、エネルギー消費量換算では全体の約20%のエネルギー消費を行う。厚生労働省のe-ヘルスネットより

脳のイラスト(人体)

核となる主観的な感情を確認する

子供は演奏の結果を親や先生に褒められることを目的としてしまっている場合が多く見受けられます(依存性の高い大人も例外ではない)。アップル創始者の一人であるスティーブジョブスの「人からの承認は意味をなさない」と残した言葉にもそれをうかがい知ることが出来ますが、自分の課題と認識していたつもりが実は他者の課題と気づかず邁進している。これは承認欲求を満たすためのもので、エスカレートすると他者からの評価に怯えることにもつながります。子供たちを教えていると頻繁に出会う複雑な事実ですが、成人しても気づかないままのケースもあります。

日々の練習ごとに目的意識は必要ですが、時折意識して振り返るべきなのが根となる主観的な感情です。何のためにピアノを弾いているのか?また何を望んでいるのか?れがちな自分の方向性を保つことが出来るでしょう。

他者からの評価に怯えることなく、本来の自分の目的・望みを確認しながら、意識的な日々の練習や活動を心掛けたいものです。

ピアノを弾く「身体」と「思考」の使い方レッスン 

第二回目の3/8(日)ワークショップは若干のお席がご用意出来そうです。

第二回目は1回目の身体の使い方の復習も含みますが「演奏の本番」に対処した内容になります。ステージ上での自分の身体と思考に何がおきているのかをまずは正確に把握することから始めます。

アマチュア演奏家も、

プロの演奏家も

そして指導者も、

ステージで思い通りに弾きたい気持ちは同じです。



演奏中の思考はパフォーマンスに大きな影響を与える

こんにちは。「信頼される指導力と根拠のある技術をを身につける!」ピアノ講師とプレイヤーを応援する 山本玲です

先日、某テレビ局の「てっ○ん・・」という番組のワンコーナーであるピアノ対決を視聴。以前からその番組の存在は知っていましたが、同じ演奏する立場として様々な感情が沸き上がってくるため、視聴する事はありませんでしたが、今回は思考が身体に与える影響について興味が沸き、観察することに。

芸能人であるピアニスト数名(大多数が音大卒)が二つの課題演奏の合計点て頂上を決めるというこのコーナー、

1stステージの課題は三曲弾いてノーミスであれば300点、ミスが有ればその分減点で競いあう(5つ以上のミスで演奏終了)というもの。加点は一切無し

2ndステージ表現力・正確性・リズム・難易度・音色の5つを審査項目とし、25名の審査員が挑戦者の演奏を採点していくもの。

両方のステージ演奏では必ず楽譜が置いてある。

加点なし・減点法での採点

私が注目したのは1stステージ。

聴衆を音楽の世界に誘うのに雑音(ミスタッチ)が無いに越したことはないし、ミスタッチによる減点は、分かりやすく公平性はあるように思えます。ただ、長年音楽をやってきたものとしては、「ミスタッチ減点法」の減点オンリー審査は正直言って表現をしたい音楽家にとっては驚きの採点方法であるし複雑な気持ちであります(個人的感想です)。

音楽を表現するということについては今回のお題ではないので・・・「ミスタッチをしてはいけない演奏」というケースの本番中の演奏者の思考が身体に与える影響を考えてみます。パネルモニターにミスのマークが点滅し、演奏者はとにかく別の音に引っかからないように注意して演奏しなければならない。(もしかしたら和音の1音が抜けた場合はミスにはなっていないかかもしれませんが)

「ミスしないように」の呪縛にとらわれた演奏者の様子(観察)

番組中の演奏者のほとんどはこの審査中、ポロポロとミスをする。(隣で観ていた素人の夫はほぼ分からない程度のミスも多い)。肩は上がり首が本来の長さより短く見える。また手の甲には腱がクッキリと浮きあがり続けたままで、力を抜く間も与えていない。プレッシャーを想定し準備をしてきたとは思いますが、なかなか想定内にはいってない様子。

何がミスを引き起こしているのか?

  • おそらく1stステージはノーミス演奏ということだけを念頭にこの課題に取り組んできた方がほとんど。
  • アドレナリン過剰状態
  • 練習の際にはパーフェクト演奏を可能にしたに違いないとは思われますが、練習環境と異なる環境下での演奏で筋肉が通常と異なる張りになることで、通常の想定していたコントロールでは対応できなくなることを想定して準備した方が少ないように見えた。
  • 暗譜をして練習していたであろう演奏者も楽譜が設置されることによって、時折楽譜に目をやらずにはいられなくなっていた練習時と異なる状況でコントロールが微細に狂う
  • さらに恐怖と緊張で頭と脊椎が固まっている為、四肢が動きづらくなっている。
  • ミスをしてはいけないという1stステージの否定系の指示を自分自身にし続けていることが最大の原因〜してはダメという否定形を判断できない脳が混乱し、ミスを引き起こしている。

改善点は?

  • まずは準備。可能な限り同じような体験が出来るようなプレッシャー体験を数多くする。私ならば・・人数もそれなりに用意し、ミスも聴衆に数えてもらうようなリハーサルを数回行う。
  • その際、お題の「ミスをしたら減点」を念頭に演奏した場合と、「正確な音を弾く」ということに照準を当てて演奏した場合の違いを自分自身で分析し、弾きやすいほうを採用する。

脳のクセを理解

演奏中に関わらず、脳は否定形の指示を理解できないことを自覚しましょう。

おおよそ演奏者は

  • 間違えないように
  • 止まらないように

‥という否定文を作成して演奏することが多いと思いますが、脳は肯定文のイメージしか画像に置き換えられません。間違えないようにの「間違える」という画像を頭にくっきりと描いてしまいます

脳のクセに対応する

では何をイメージすればよいのか?

「ミスをしないように」を➡「正確な音を弾く」「その音の鍵盤を正確におさえる(弾く)」などと、否定文➡肯定文の書き換えを行うことをおススメします。

本番の演奏はかなりの練習を行っているため、指も自動演奏化できる状態になっています。その分、頭の中にスペースが空き、余計なことを考えがちです。この余分に出来たスペースに否定的な思考を加えるのではなく、是非、音楽に関する肯定的な思考を加えて下さい。

演奏中の思考はパフォーマンスに影響します。良い方向に繋がるような習慣を手に入れまることをおススメします。

まだまだ身体を知るとお得なことがいっぱい!演奏をさらに磨きたい方はこちらのワークショップでお会いしましょう!

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ピアノ演奏者のためのワークショップではこんなことを探求しレッスンをしています。興味のある方はお問い合わせください⇩