ピアノを弾く「身体」と「思考」の使い方レッスン 

第二回目の3/8(日)ワークショップは若干のお席がご用意出来そうです。

第二回目は1回目の身体の使い方の復習も含みますが「演奏の本番」に対処した内容になります。ステージ上での自分の身体と思考に何がおきているのかをまずは正確に把握することから始めます。

アマチュア演奏家も、

プロの演奏家も

そして指導者も、

ステージで思い通りに弾きたい気持ちは同じです。



演奏中の思考はパフォーマンスに大きな影響を与える

こんにちは。「信頼される指導力を身につける!」ピアノ講師を応援する 山本玲です

先日、某テレビ局の「てっ○ん・・」という番組のワンコーナーであるピアノ対決を視聴。以前からその番組の存在は知っていましたが、同じ演奏する立場として様々な感情が沸き上がってくるため、視聴する事はありませんでしたが、今回は思考が身体に与える影響について興味が沸き、観察することに。

芸能人であるピアニスト数名(大多数が音大卒)が二つの課題演奏の合計点て頂上を決めるというこのコーナー、

1stステージの課題は三曲弾いてノーミスであれば300点、ミスが有ればその分減点で競いあう(5つ以上のミスで演奏終了)というもの。加点は一切無し

2ndステージ表現力・正確性・リズム・難易度・音色の5つを審査項目とし、25名の審査員が挑戦者の演奏を採点していくもの。

両方のステージ演奏では必ず楽譜が置いてある。

加点なし・減点法での採点

私が注目したのは1stステージ。

聴衆を音楽の世界に誘うのに雑音(ミスタッチ)が無いに越したことはないし、ミスタッチによる減点は、分かりやすく公平性はあるように思えます。ただ、長年音楽をやってきたものとしては、「ミスタッチ減点法」の減点オンリー審査は正直言って表現をしたい音楽家にとっては驚きの採点方法であるし複雑な気持ちであります(個人的感想です)。

音楽を表現するということについては今回のお題ではないので・・・「ミスタッチをしてはいけない演奏」というケースの本番中の演奏者の思考が身体に与える影響を考えてみます。パネルモニターにミスのマークが点滅し、演奏者はとにかく別の音に引っかからないように注意して演奏しなければならない。(もしかしたら和音の1音が抜けた場合はミスにはなっていないかかもしれませんが)

「ミスしないように」の呪縛にとらわれた演奏者の様子(観察)

番組中の演奏者のほとんどはこの審査中、ポロポロとミスをする。(隣で観ていた素人の夫はほぼ分からない程度のミスも多い)。肩は上がり首が本来の長さより短く見える。また手の甲には腱がクッキリと浮きあがり続けたままで、力を抜く間も与えていない。プレッシャーを想定し準備をしてきたとは思いますが、なかなか想定内にはいってない様子。

何がミスを引き起こしているのか?

  • おそらく1stステージはノーミス演奏ということだけを念頭にこの課題に取り組んできた方がほとんど。
  • アドレナリン過剰状態
  • 練習の際にはパーフェクト演奏を可能にしたに違いないとは思われますが、練習環境と異なる環境下での演奏で筋肉が通常と異なる張りになることで、通常の想定していたコントロールでは対応できなくなることを想定して準備した方が少ないように見えた。
  • 暗譜をして練習していたであろう演奏者も楽譜が設置されることによって、時折楽譜に目をやらずにはいられなくなっていた練習時と異なる状況でコントロールが微細に狂う
  • さらに恐怖と緊張で頭と脊椎が固まっている為、四肢が動きづらくなっている。
  • ミスをしてはいけないという1stステージの否定系の指示を自分自身にし続けていることが最大の原因〜してはダメという否定形を判断できない脳が混乱し、ミスを引き起こしている。

改善点は?

  • まずは準備。可能な限り同じような体験が出来るようなプレッシャー体験を数多くする。私ならば・・人数もそれなりに用意し、ミスも聴衆に数えてもらうようなリハーサルを数回行う。
  • その際、お題の「ミスをしたら減点」を念頭に演奏した場合と、「正確な音を弾く」ということに照準を当てて演奏した場合の違いを自分自身で分析し、弾きやすいほうを採用する。

脳のクセを理解

演奏中に関わらず、脳は否定形の指示を理解できないことを自覚しましょう。

おおよそ演奏者は

  • 間違えないように
  • 止まらないように

‥という否定文を作成して演奏することが多いと思いますが、脳は肯定文のイメージしか画像に置き換えられません。間違えないようにの「間違える」という画像を頭にくっきりと描いてしまいます

脳のクセに対応する

では何をイメージすればよいのか?

「ミスをしないように」を➡「正確な音を弾く」「その音の鍵盤を正確におさえる(弾く)」などと、否定文➡肯定文の書き換えを行うことをおススメします。

本番の演奏はかなりの練習を行っているため、指も自動演奏化できる状態になっています。その分、頭の中にスペースが空き、余計なことを考えがちです。この余分に出来たスペースに否定的な思考を加えるのではなく、是非、音楽に関する肯定的な思考を加えて下さい。

演奏中の思考はパフォーマンスに影響します。良い方向に繋がるような習慣を手に入れまることをおススメします。

まだまだ身体を知るとお得なことがいっぱい!演奏をさらに磨きたい方はこちらのワークショップでお会いしましょう!

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ピアノ演奏者のためのワークショップではこんなことを探求しレッスンをしています。興味のある方はお問い合わせください⇩

ピアノ演奏者が知っておきたいお得なこと・11

演奏中 脚も意識に含めることで、パフォーマンスの質は確実にアップ!

こんにちは。「信頼される指導力を身につける!」ピアノ講師を応援する 山本玲です

演奏中に意識が集中する身体部門一位は「指」ですが・・・

演奏中のピアニストは多かれ少なかれ指や手そして腕を使う意識を常にもっています。鍵盤に直接ふれる身体の部分は指になるので上半身に意識をもつ気持ちは理解できます。「指や手・腕に集中する」という言葉で表現することもあると思いますが、一部分に集中するということは、その他の身体の存在を忘れている(意識から離れている)という事でもあり、身体全体を効率的にバランスよく使うことからは離れてしまっている状態になります。(もちろん、演奏家にとって指や手・腕の知識を豊富に持つということは大切です。)

下半身の関節をいつでも対応できるように緩めておく

下半身に関してはペダルを踏む時に多少の意識はしますが、関節(股関節・膝関節・足関節など)に意識をもったことはあるでしょうか?

一見、ピアノ演奏と関係のなさそうなこの股関節と脚(膝関節・足関節含む)ですが、上半身に意識が行き過ぎるために、ここを「なかったことにしている」演奏者が私の生徒さんにも多くみられます。股関節は上半身と下半身をつないでいる重要な関節で、互いに関わりあっています。もしここを「なかったこと」にしたり意識を向けなかったりすると繊細な動きで全身のバランスを保っている股関節が固まってしまい、股関節付近でつながっている腕の重要な筋肉をも引き止めて動きの可動域が狭まってしまう恐れがあります。

この下半身のマッピングと機能を理解することは動きの可能性を増やし、演奏の選択肢を増やすことにもつながります。では関節に付着し動きをもたらす主な筋肉を見ていきます。

股関節とその周辺の筋肉の動きを知る

股関節は身体のほぼ中央に存在し、上半身-下半身の様々な筋肉が付着しています。とくに注目してほしいのが大腰筋腸骨筋。深層筋は身体の奥深くにある筋肉で筋肉、使っている感覚はなく疲れ知らずという特徴があります(インナーマッスル)(下図)。とてもお得な筋肉なのです。

ピアノ演奏にも重要な股関節の筋肉(腸腰筋=大腰筋と腸骨筋)
大腰筋の主な動き・・・股関節を屈曲(サッカーボールを蹴る時など)
腸骨筋の主な動き・・・股関節を外側にひねりながら屈曲(脚を組む)

「ピアニストは鍵盤のいろいろな場所で弾く時に身体を支えるために脚を使うことが出来ます。また体重が座骨ではなく、大腿骨の付け根に伝わってしまうように座っていたり、尾骨に体重が乗ってしまうような「背中に頼った姿勢」で座っていると脚は動かしにくくなります。座ることが快適ではなくなり脚の動きは制限され、ペダルに脚が届きにくくなり鍵盤も弾きにくく不安定な演奏になってしまうでしょう。

機能的に座るためにはお尻の筋肉の緊張を緩めることが不可欠です。そこの筋肉を緩めないと、体重は座骨に伝わらず脚の後ろ側に伝わるのです。体重が尾骨に伝わると腕と胴体の筋肉がそれをカバーしなければならなくなります。この「背中にたよった姿勢」は結果腕や背中の筋肉を緊張させ背中・肩・腕の痛みにつながることもあります。当然、演奏はその弊害を受けることになります」

ピアニストは、骨盤が後ろに傾かないように、股関節が充分に曲がっているか、腰が緩んでいるか、をいつも確認する必要があります。

トーマス・マークの〈ピアニストならだれでも知っておきたい「からだ」のこと〉から抜粋

演奏前に効果的な股関節周りをほぐすエクササイズ

深層筋は持久力のある筋肉で自覚をするのが難しい・・・ということで、演奏直前にここを目覚めさせる動きをご紹介。

①ピアノの椅子に座り座骨を軸に上半身を後傾させる。この時、脚は床から浮く⇩。

②今度は鍵盤方向に股関節を屈曲させ上半身を倒していく。この時床に脚・身体が乗っていることを感じる。下写真⇩

③椅子の上に座骨を感じるように座り、脊椎の上に頭をふわりとのせる。下写真⇩


④鍵盤の感触を感じるように触れながら弾き始める(曲の冒頭にもよりますが・・・)。下写真⇩

この一連の動きをすると、股関節の筋肉に思いをはせる努力をしなくても自動的に下半身がバランスよく動き始めます。

下半身を含めたことで、全身の筋肉が微細に働き、驚くほど軽いタッチで出したい音が出せるようになります。

是非お試しください。

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ピアノ演奏時の習慣的な身体の使い方

こんにちは。「信頼される指導力を身につける!」ピアノ講師を応援する 山本玲です。

「緊張して何をどう弾いたか覚えていない・・・」の状況でも弾ききれるのは何故か?

これはステージから袖に戻ってきた生徒さんからよく聞く言葉です。楽器をある程度の期間取り組んできたことのある演奏者であれば何度か経験があるのではないでしょうか。(ハノンやテクニックなどの教本を半寝しながら弾くのも似たような現象です)

演奏は練習を積み重ねることで良くも悪くも自動演奏のように無意識、または別のことを考えていても弾きとおすことが出来るようになります。(これは演奏者だけでななく、アスリートも当てはまる部分があるように思います。)「筋肉が覚える」という言い方をする人もいますが、反復練習によって脳から筋肉に伝わる情報が速くなった神経路のミエリン化と呼ばれている現象ともいえるようです(詳細はこちらの記事へ)。

本番に限りませんが、繰り返しの動作によって一連の動作が出来るようになった、もしくは出来るようにさせる名称といえば、「習慣」「癖」「ルーティン」が思い浮かびます。本番にかかわる準備の選択肢として加える可能性でこの事を考えてみたと思います。

3つの言葉の意味を辞書で調べると‥

これらの言葉は同じように使われることもあるようですが、少しづつニュアンスが違うようです。

<習慣>

後天的に獲得された個体の反応様式。刺激に対して自動的に解発されやすく,変化の少い一定の形をもつことが多い。生体のもつ多くの種類の反応が習慣になりうるが,典型的なものは種々の筋運動で,これらは条件づけや知覚運動学習により習慣化されると考えられ。ある動機のもとで獲得された習慣は,のちにその動機が消失しても,他の動機のもとで解発される。これを習慣の機能的自律性という。通常,ある反応が習慣といわれるまで自動化し,定型化するためには,かなり多数回の反復が必要とされる。動物の日常行動を支配しているものは,下等動物では本能であるのに対して,高等動物になるほど習慣の比重が大きくなるといわれる。。(ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典より)

<癖>

(くせ)とは、人が無意識のうちに、あるいは特に強く意識することなく行う習慣的な行動のことである。手足や体の動かし方、話し方などで同様な状況のもとで常に自動的に繰り返される傾向。広い意味では習慣の一種とみられるが、極端な場合には通常よりも不必要に偏向した反応として現れる自分は気づいていないという場合が多い。また、気づいていたとしても、特に強く意識せずに行っている行動も含む。一般に、高齢になるほど習慣で行動する傾向が強まり、そのため癖が付くとなかなか直らない傾向になる事が多い。 (Wikipediaより)

演奏における習慣(癖)は良くも悪くも繰り返しによって覚えた身体の使い方と思われます。

<ルーティン>

ルーティン(routine)」の語源は、「ルート(route)」。「ルート」にはいつも通る決まった道という意味。
「ルーティン」も毎日の仕事や家事、決まりきった質問や型通りの検査、またコンピューターでの一連の動作など同じことの繰り返しを意味する

~余談になりますが・・・演奏家やアスリートには本番前に行うルーティン、または癖があると言われています。小澤征爾さんは本番前に必ず木製のものを3回「トントントン」と叩くそうですし、去年現役を引退されたイチロ-さんの打席に入る前後のルーティンもよく知られています。プロである方はストレスなく自然に動きに入っていけるよう何かしらの決まった行動を持っていますが、中にはそこに縛られることを嫌ってあえていつもと違う行動をすると言っておられる方もいました。ルーティンに縛られないことがルーティンなのかもしれません~

ルーティンは、は習慣や癖とは少し異なっていて1つの決まった流れとして使われることが多いようです。演奏家においては心身状態をよいものに切り替える「スイッチ」を作るために有効です。それをきっかけに冷静な心理状態をキープもしくは取り戻す)ことを目的として取り入れている演奏家やアスリートは多いようです。

「習慣」「癖」「ルーティン」は別もの?

「習慣」も「癖」も後天的なもので、ある刺激に対して無意識のうちに自動的に繰り返されることは同様ですが、「癖」のひびきには「悪しき習慣」のイメージが少しあるように感じます。ルーティンは動機が意識的であると言えます。

誤った習慣的な使い方の影響

習慣となった使い方が誤っていた場合、それが習慣で強化されているがゆえに他のものに置き換えることは大変難しいといえます。もう一つの新たな使い方を取り入れたとしても、以前のしっくりした感覚にすがってしまうのです。

「今」の自分に最適なかたちで取り入れる

「習慣」や「癖」は瞬時に適応可能な動きなので、うまく使うことで演奏中も多くの動作を処理することが可能になるメリットがあります。私も演奏中に選択を切り替えることは頻繁にあります。何らかの演奏トラブルが起きた際はもちろん、感情面に集中したいときなども飛行機の操縦桿のように演奏者の判断で自動と自操を切り替えています。

人は心も身体も日々変化していく生き物です「習慣的な身体の使い方」・・・良かれと思っている「習慣」「癖」「ルーティン」も、今の自分に本当に必要なことなのか?何のために行っているのか?ということを棚卸し、選択し直す作業もときには必要なことだと私は考えます

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ピアノ演奏者が知っておきたいお得なこと・10

鍵盤に触れる指、その指を遠隔操作する腕を知る!

こんにちは。「信頼される指導力を身につける!」ピアノ講師を応援する 山本玲です。

ピアノは指や腕以外にも他の楽器と同様に頭から足の先までの全身をバランスよく使って演奏する楽器です。それを前提に今回はピアニストが最も気にする指(手)と腕についての知識をアップグレードしていただきたいと思います。

指の長さを正確にマッピングする!

普段「指の付け根」と呼んでいる「指骨」の始まりは下の図の➡だと認識している方が多いようです。ピアノ演奏で「オクターブが届かない」とお嘆きの方の多くは、この➡から指を広げようとしている傾向が強いです。(もちろん生まれ持ったサイズが原因の場合もあります)

            右手の掌側

でも、実際はもっと長く、掌の中のから指骨は始まっています↓

          右手の掌側:赤➡が指の始まり

指先から手の甲の方向へと反対の手で触ってみても指の骨の長さを感じることは出来ます。ちょうど手首にあたる小さな骨が8個集まるところで突き当たるのが分かるでしょう。本来の指の長さにマッピングが書き換えられることで、指の可動域が広がり、オクターブや広い音域の和音が掴みやすくなります。また打鍵する際、骨同士が関節を通して支えあっていることを感じることで今まで筋肉頼みになりがちだった鍵盤を支える仕事を、骨に任せようという意識が生まれます。(筋肉の過剰な緊張を緩めることで、指がしなやかに俊敏に動く準備も可能になります)

手の中にある筋肉の役割とは?

手の中にある筋肉はほぼ掌側に集まっているそうです。骨間筋・虫様筋等といった多くの内在筋があり、ピアノ演奏の際の微細な動きを助けます(開いたり、閉じたり、指をくぐらせたり、またぐような動作、打鍵する際に張りを持たせたり等々)。また甲には腱が通っていますが筋肉の本体は存在しません。(この甲の腱は前腕へとつながります。この前腕に存在する筋肉が指の伸展を担当しています・腕の説明は下へ)

右手の掌側:皮膚の上から見て盛り上がっていることからもわかるように、様々な筋肉がついています。
右手の甲側:(薄い紫がかった白の筋が腱、骨と骨の間に見えるのが骨間筋)

腕はどこから?

「腕はどこからでしょう?」と生徒さんに尋ねると、大概⇩肩の先を指す方が多いのですが実は腕はここからではありません。

腕の正確なマッピングこちら

鎖骨と肩甲骨(後方にうつる逆三角形の骨)も含めたものが腕全体をあらわします。鎖骨の先端(喉の下のくぼみの両サイドにある骨)に触れながら腕を大きく動かしてみると連動して鎖骨も動いていることがわかります。指先から鎖骨と肩甲骨までの長さと関節のつながりが在ることを意識して演奏することは、本来の腕の長さと機能を取り戻し、演奏の可能性を広げるでしょう。関節の部分は電車でいう連結部分です。決して固定することなく自在に動けることを意識することが大切です。腕を交差させて打鍵する時や体幹から遠い鍵盤などを打鍵する際はこの認識が演奏を助けてくれます。

前腕の中も正確にマッピング!

前腕の骨は一本ではなく2本です(小指につながる骨は橈骨・親指につながる骨は尺骨)。2本あることでドアノブを回したりぞうきんを絞ったり、鍵を開けたり閉めたりが可能になります。

ピアノ演奏の際はこんな状態になっています⇩

ピアノ弾くとき、前腕の2つの骨は交差している!!

ピアノを弾くときは2本の骨は回内といって
橈骨が尺骨の上に覆い被さる状態になります。
どちらの骨も緩いカーブがあるため
接触することなく動きが可能にデザインされています。
本のページをめくるのもこの2本の骨の回内・回外にあたります。
ピアノの演奏ではトレモロの動きをするときなどに意識して使うと、指のみを使って弾くときと違い、少ないエネルギーで演奏することが可能になります。

指を動かす筋肉は前腕の中にもある!

   右前腕・手の掌側は指を曲げる筋肉(例:じゃんけんのグーを出す)
    右前腕・手の甲側は指を伸ばす筋肉(例:じゃんけんのパーを出す)

指を曲げたり伸ばしたりする(屈曲・伸展)筋肉はほぼ前腕にあります

数十年前に主流だった指先を立てて上下に大きく動かすような打鍵(ハイフィンガー奏法)を習った方も多くいると思います。この奏法は前腕にある筋肉を多用するので長時間の打鍵で前腕に疲労を感じる方も多いようです。またこの筋肉の先は腱になって手首にある腱鞘と呼ばれるトンネル状の組織(上図の薄紫の部分)を通って指に付着し動かします。腱と腱鞘が頻繁にこすれあうことで炎症を起こし痛みを引き起こすこともあるので(腱鞘炎)酷使しないよう注意が必要です(「演奏家の手の悩み」酒井直隆より抜粋)。

結論!ピアノ演奏に必要な関節や筋肉とは?

指や手、腕には他にも観察すべき関節や筋肉は沢山ありますが、はじめにお伝えしたように、ピアノ演奏に必要とされるものはこれに留まりません。身体それぞれの持つ本来の機能を正確に理解することは技術習得の道しるべや近道となりますが、特定の部分のみに意識を集中させるのではなく、身体全体をバランスよく使うことが重要です。是非、知識の引き出しの種類は多く持ち、その状況に応じて使い方を選択して頂きたいと思います。

鍵盤に触れる指、その指を遠隔操作する腕を知る!ピアノ演奏者のためのワークショップではこんなことを探求しレッスンをしています。興味のある方はお問い合わせください⇩

ピアノを弾く「身体」と「思考」の使い方レッスン を開催します。

こんにちは。「信頼される指導力を身につける!」ピアノ講師を応援する 山本玲です。

今までのワークショップは1回3時間で少人数開催でした。

ただ、レッスン時間が毎回駆け足で終了する感が否めない(私のまとめ方が問題なのかも・・という説もある)。

ということで・・・

今回は2回シリーズで開催することに致しました!

お題を絞ることも狙いですが、1回目でインプットしたものをご自宅に持ち帰って実験➡家での実験により出てきた疑問、さらに知りたくなった事などを2回目でご質問頂ければワークショップもより効果的になります。

勿論、1回のみのご参加も可能です。

ピアノ演奏者が知っておきたいお得なこと・9

ffから瞬時にppを出すとき(subito piano)の身体の扱い方

こんにちは。「信頼される指導力を身につける!」ピアノ講師を応援する 山本玲です。

瞬時に音量を増やす場合はそれほどの苦労はないと思われますが、その逆で瞬時に(「間」も取らず)音量を減らす技術に苦労する方は多いと思います。(私も現在、バッハ・ブゾーニの「シャコンヌ」に取り組んでいて、92小節目から93小節目に入るところで実験中)

呼吸で対処する、イメージを用いる、身体構造を考える、と対処方法は様々ありますが、ピアノ演奏における、デクレッシェンドや「間」さえも取らない急激な音量の変化の考え方と対処について、私なりの方法お伝えしたいと思います。

~そもそもffを出している時、身体には何が起こっているか?~

ピアノの音の強弱は打鍵の落下スピードで決まります。強く出したいときは➡落下スピードを速く、逆に弱い音が欲しい場合は➡ゆっくりと落下させ打鍵します。もちろん、一定以下のスピードで打鍵すると打鍵されたハンマーが弦まで届くことが出来ず撥弦出来ないので注意が必要です。

ちまたでは「脱力」という打鍵がブームとなっていますが、正確な表現ではないので、もう少しだけ具体的に順を追って起こっている事を説明すると・・・

・重力を利用して指と腕を落下させ➡鍵盤に落ちる瞬間に数多くある指の伸筋と屈筋を拮抗させて張りを持たせて打鍵します。腕にある指の筋肉は疲れやすいので手の中にある骨間筋や虫様筋を主に使うのがよいでしょう。(もちろん使用するのはこれのみではなく全身にある他の筋肉も少しづつバランスよく使います)

・さらに音量が必要になるときは肋骨のサイドにある前鋸筋(別命ボクサー筋)を取り入れます。前方に突くようにスピードを上げて打鍵をするとさらに音量を増すことが可能になります。

前鋸は肩甲骨を前方にスライドさせる働きがありますが、腕立て伏せなどをする際は僧帽筋と共に肩甲骨を固定させて身体を持ち上げます。私はこの腕立て伏せの時の肩甲骨の使い方をffの打鍵の際には使用しています。(肩甲骨を固定し腕を前方に突く動き)

            前鋸筋
          僧帽筋
    この中部繊維を肩甲骨固定に使用

~ではppを出している時の身体は?~

弱い音が欲しい場合は➡スピードを落として落下させ打鍵します。この時肩甲骨を固定する筋肉は必要はなく重力を利用して落下させます。繊細に音が途切れずppを出すには、関節も脇も緩んだ状態であり、なおかつ腕は鎖骨から指先まで続く長い部位だと正確にマッピングすることも大切です。

~では本題のff➡ppの瞬間でやることとは~

指や前腕だけに注目しがちな、強弱のコントロール。もうご存じの通り鍵盤に触れている指から遠く離れた軸骨格の影響が非常に強いです。

ffで使われた肩甲骨周囲の筋肉の張りを緩め➡ppに入るということ。これは理解できることですが、これを瞬時に行うという瞬発力が容易ではない。ましてや緊張を伴う本番となるとなおさらです。

そこで⇩

①トップジョイント(脊椎の一番上にふんわりと頭をのせ)を意識。

まずは身体本来の機能を充分に使えるスイッチをオンにします。(それについての解説はコチラ

②胸郭に固定された肩甲骨を解除(前鋸筋と僧帽筋中部繊維を緩め、動けるようにする)

この二つを同時にしかも瞬時に出来るようになるには、ある程度の習得期間は必要ですが、確実に音色に変化が表れるでしょう。

このケースもそうでしたが、問題が改善しないときはその問題箇所付近にある筋肉よりも、離れたところに問題が隠れているというケースが多いという事も知っておくとお得です。

ピアノ演奏者が知っておきたいお得なこと・8

演奏の「方向性」を考える

こんにちは。「信頼される指導力を身につける!」ピアノ講師を応援する 山本玲です。

私がピアノ演奏に取り入れている「アレクサンダーテクニーク」という技術の中に7つの原理というものがあり、その中の一つに[direction]という原理があります。

[direction]は日本語では「方向」「指示」「命令」「動き」「管理」等と訳されますが、アレクサンダーテクニークで使用される際は「方向性」と訳されることが多いようです。辞書(実用日本語表現辞典)には「何かの物事を進める場合の進め方や方針の在り方などのこと」とあり、「目的に至る手段」という考え方がしっくりくるようです。

~F.Mアレクサンダー氏の「方向性と抑制」~

アレクサンダーテクニークの生みの親であるF・Mアレクサンダー氏の著書「the use of the self」の中には彼の経験を含めて「方向性」に関することが書き残されています(以下抜粋)。

・使い方の方向性を感覚に頼ってはいけない

・自分の使い方の方向性(自分を使う時)にどう指示を与えているか?

・最初の結果を達成しようという刺激への本能的な反応は、はじめに抑制されただけではなく、新しい使い方の方向性が、出されている間中、ずっと抑制され続けていることになる。

私の場合は「抑制」という言葉はあまり意識して使わないようにしています。(方向性やプランを確実に実行することであえて「抑制」ということを実行に加えなくてもいいのではないか?という考え方からです)現在継承されているアレクサンダーテクニークの技術にも変化は見受けられますが、この本を読む限り、執筆した当時の彼は常に「方向性」のなかに「抑制」をセットにして考えていたように感じます。

~演奏に必要な「方向性」とは~

では私たち演奏家が演奏する際に方向性を定めるにはどうすればよいのでしょう?

歩く・立つ・座るなどの日常動作も「動き」であり、その際にも手順が大切ですが、演奏においてはさらに情報を処理し続けながら動きの指示も多く・複雑になっていきます。

どのような動きであっても全く同じ定型のプランというものは存在しません。とくに複雑化する音楽(演奏)においてはなおさらですが、おおよその計画の必要性は感じます。その下地があったうえで、その場その時に応じた対処法を身に着ける必要があるのではないかと私は思うのです。

演奏の方向性=望みの演奏をする

次は具体的なプランについて以下にまとめてみました。

①頭が動けるように脊椎の一番上にふんわりとのせる(この身体本来の動きが可能になるスタートボタンは必須!

②次に望み・到達したい演奏を考える

③②のやりたい演奏をにするにはどんな技術?何が必要か?を考える

④それに必要なパーツ(関節や筋肉)の使い方を選択する

ステージでは身体の筋感覚に頼る自動演奏に任せることも経験上必要な場面はありますが、とくに技術的に難しいパッセージの個所などでは順序立てた明確な選択が必要なように感じます。

ただ、私たち演奏家、とくに専門的に学ぶ意識が強ければ強いほど、より高い技術を追いがちです。単なるアクロバットな演奏に陥らぬよう、まずは何を表現したいのか?という一番の根幹となる「方向性」を大切にしたいものです。

ピアノ演奏の時にも 人間に本来備わっている機能の邪魔をしない

「頭が動けて身体全体がついてくる」と演奏も動きも驚くほど変わる ?!

こんにちは。「信頼される指導力を身につける!」ピアノ講師を応援する 山本玲です。

アレクサンダーテクニークを取り入れたレッスンの現場で頻繁に聞く声掛けが、この「頭が動けて身体全体がついてくる」であることは間違いないでしょう(多少の言葉の選択は異なるかもしれません)。

実は人間本来の機能を最大限に生かす仕組みがこの頭と脊椎の関係に隠されているようです。

頭・脊椎の本来の機能=プライマリーコントロール

アレクサンダーテクニークには7つの原理があるのですが、この頭と脊椎の関係はそのうちの一つで、プライマリーコントロール(人間に本来備わっているバランス調整機能)と呼ばれています。この頭と脊椎のある関節を押し潰すように固めてしまうと本来備わっている機能である動きや演奏(思考も含む)が難しくなります。もちろん、固めたままで練習を積んで(悪しき習慣)しまってもある程度の成長や向上は望めますが、自分自身の100%の力を発揮することは出来ません。これが起きている関節は環椎後頭関節と呼ばれ(下の赤➡の箇所)両サイドの耳の穴を結んだそ真ん中の位置に存在すると言われています。

環椎後頭関節の位置

そもそも、何故押し固めをするのでしょう?

脊椎動物は「恐怖反射」(びっくり反射とも呼ばれる)という本能を生まれながらに持っています。敵に襲われたときに本能的に「固まる」というアレです。

野生動物のケースでお話しすると、草食動物(被食)が肉食動物(捕食)を見つけた際にとっさに起こる身体の現象です。逃げる➡闘うの前に起こす行動で、頭と脊椎をギュッと押し固めることで身体の動きを止めます。先ずは気配を消すことで捕食動物に気づかれずにやり過ごすという生き残るための第一の行動とも言われています。

高度に成長を遂げた哺乳類の私たちは、現代でこそ猛獣に襲われる心配はありません。ただ、いつどこで襲われるかもしれないという危険察知能力の遺伝子が優れているものだけが生き残り、現代の人間の本能に受け継がれているため「恐怖反射」「びっくり反射」はスタイルを変え、根強く残っているのが現状です。唐突に何か物が飛んできたときのとっさの動き・親や教師に怒鳴られておびえた子供・ステージで演奏する際の過度な緊張状態などでも、かなりの確率でこの反射が起こっていると言えます

実際にこの関節で起こっている筋肉の働きを明確に分析する

動物の骨の周りには、身体を動かすための筋肉が300種、650個もあり、その一つ一つの筋肉の先が腱となって骨に付着して機能しています。様々な分類の仕方がありますが、筋肉の深さで分けると表層筋と深層筋に分けられます。下図は背面の表層にある筋肉。使った感覚がダイレクトに判るのが表層筋で、瞬発的な力を発揮します。

       表層筋

表層筋を何枚も剥がしていくと、深部に持久力はあるものの意識しづらい深層筋が表れます。これは後頭部の例で最も深いところに存在する後頭下筋群

<後頭下筋群>は姿勢を自動調整するセンサーが豊富でバランスを調整する機能を持つと考えられている

人間(脊椎動物)は 各感覚器官からの刺激を受けてバランスを保っています。また全ての筋肉の中には筋紡錘という身体のバランスを調整するセンサーが存在しているそうです。歩く時にも脚だけではなく身体全体の筋肉を微調整して助けてくれるのでロボットのような不自然な動きにはならず、バランスの良い自然な動きが可能になるのはこの機能のお陰のようです。後頭下筋群は数ある筋肉の中でも筋紡錘が多く存在するところになります。後頭下筋群は頭部から首の骨上の1番目と2番目の骨にかけてつながっている最も深いところにある対の4つの筋肉の総称です。深層筋なので感じることは出来ませんが、身体の動きを意識することなく微調整してくれる高機能センサーを所持する筋肉群になのです。日常生活で無意識に微調整を行っていて、頭と首を繊細に保つ働きをしているとても重要な部分にあたると考えられています。

この後頭下筋群の機能を理解することでも、アレクサンダーテクニークで言われている頭が自由にいつでも繊細に動ける状態で、脊椎の一番上の関節にふんわりとバランスをとっていること」が身体全体を存分に使いこなせるという理解を助ける材料となるでしょう。

マッピングを正しく理解し、意識することは、人間本来の備わっている機能(プライマリーコントロール)を抑制することなく使える状態にに引き上げてくれます。これは演奏のみならず日常の動きや思考を最大限の状態に引き上げることが出来る身体の機能といえます。

まずは日常の動きから意識をすることが大切です!それが望む演奏につながっていくと私は信じています。

レッスンやワークショップで講師の軸となっているもの

こんにちは。「信頼される指導力を身につける!」ピアノ講師を応援する 山本玲です。

唐突ですが・・・

フライト中に何らかのトラブルで機内が急減圧した場合、酸素マスクが目の前に降下されます。この時、あなたが小さなお子さんを持つ親であったとして取るであろう行動を予測してみてください。

10キロ上空を飛行する機内では正確に意識を保てるのは30秒ほど。まずはお子さんにマスクを付ける前にご自身の酸素マスクを装着するのが取るべき正しい行動です自分の安全を確保することが出来なければ他者を助けることも出来ない。これはその例として頻繁に出される話です。

●「まずは自分の面倒をみる」=アレクサンダーテクニークレッスンの基本

「自分の面倒をみる」ことは個人レッスンやワークショップの講師として生徒さんや参加者の皆様の前に立ってアドバイスをする際、今の私が最も大切にしている考えです。

過去のレッスンの現場では「自分の面倒を見ていない(自分自身の身体を忘れた使い方)」状態の私を生徒さん方はお手本にしてしまう事も多々ありました。

日本では「相手を尊重し優先する」自己犠牲が美徳とされている慣習もあるため、指導する立場で「自分優先」とも受け取られてしまいがちな行動は、違和感を抱く人も多いでしょう。

それでも、私が学ぶアレクサンダーテクニークは演奏や指導の際の前提として、酸素マスクの話と同様に「まずは自分の面倒をみる」ということを第一に優先します。

「自分自身を信頼する」

先日開催したワークショップでは「自分の面倒をみる」とともに「自分自身を信頼する」ということもつけ加えました。

今どきのポジティブシンキング的なスキルで捉えるとすれば、自分を信頼するのも簡単そうな作業ですが、本来の意味で信じて頼りにすることは、自分自身に対してもそれなりの根拠が必要になります。

その根拠となるものを蓄えられたと実感したときに私は初めて「自分自身を信頼する」ことが出来、レッスンやワークショップの時間を充実したものに出来るのだと思っています。

「自分の面倒をみる」

「自分を信頼する」

今現在、この2つが私の中のアレクサンダーテクニークレッスンの軸となり、そして基本となっています。

同様の条件下で行われたNASAのシミュレーションテストを見たことがあります。体内の酸素飽和レベルが下がり低酸素症になると、基本的な人間としての機能が完全に停止していきます。ほんの数分でごく普通の理性的な人間が、ものの形も判別できない、手も動かせない、自分の身を守ることもできない別人と変わってしまいます。