◍アレクサンダーテクニーク教師(ATI)資格取得のため実習の生徒さんを再募集します!

2015年より音楽家のためのアレクサンダーテクニークの教師資格取得コースにて学び、現在2つのコーチ資格を取得しました。さらなるステップとしてATI(Alexander Technique International)教師資格取得を目指し研鑽に努めています。

その資格取得の課題の一つとして、実習を予定しています。音楽家のためのアレクサンダーテクニークのレッスンに関心があり、プライベートレッスンを受講してみたい方を募集しています。※コロナの状況を踏まえ、現在の開催地は浜松のみでご了承ください。(24時間換気システムを取り入れたスタジオです)

【 実習レッスンを受けたピアニストMさんの感想 】

4月初旬から8月初旬の間、全講座を受講させていただきました。 講座は、私自身の悩みや疑問からアレクサンダーテクニーク(以下はAT)にテーマをつなぎ、学びを得るという形でしたが、私がテーマを出せなかった時には、山本さんが私の言葉から、具現化して学びにつなげてくださったので、自分では思いもよらないところから、深いATの考察ができました。 ピアノ演奏において、普段は、あまり意識したことのない身体の使い方や、精神面でのAT的な思考(演奏時のみならず、生い立ちによる考え方のクセ)にも触れることができ、自分を肯定することができたような?気がします。(ATなんですが、よく当たる占いで鑑定してもらった後の、すっきりした感覚に似ています。) 毎回、時間もあっという間にすぎてしまうほど、楽しく充実していましたし、ためになる資料も用意していただき、結果として、系統立てたATの学びができました。このことを軸にして、今後も、自分なりの、ATの勉強を進めていけたらと思います。ありがとうございました。

  • 音楽にアレクサンダーテクニークを活かしてみたい方(プロに限らず愛好家の方も含みます。)「アレクサンダーテクニークを使って演奏にさらに磨きをかけたい」「演奏の不安を取り除きたい」という願いのある方)
  • アレクサンダーテクニークのレッスンを継続的に受けたことがない方

〈条件〉

  • 2~3ヵ月の間に10レッスン(1レッスン・30分)を受けて頂ける方(連続レッスンもご相談に応じます)。
  • 10レッスン終了後に簡単な感想文をご提出頂ける方。
  • 浜松スタジオ(曜日時間は応相談)でご受講可能な方。

〈レッスン・諸経費〉

個人レッスン/30分×10回/¥25.000(現在の通常レッスン料金のおよそ半額となります。ご協力企画となっておりますので大変お得なレッスン価格です)

条件が可能な方で5名➡残り1名様(現在)にお願いしたいと思っていますので、まずはお気軽にお問い合わせ下さい。

お問い合わせはコチラに⇩

ピアノを弾く手って?

演奏するうえで知っておきたい身体のこと 第一弾 「ピアノを弾く手って?」の動画は、「手(指)」を動かしているの骨(関節)と筋肉にフォーカスした内容になっています。

手を故障しがちな演奏者の方、ピアノを習うお子様の保護者の方、また指導に関わる方の豆知識(ヒント)として活用してくだされば嬉しいです。

素足でペダルを踏むのはありか?

私は動画やブログで練習段階から靴を履くことをお薦めはしています・・・が、本来は素足好きです。ストッキングやソックスの締め付けが気なるので真冬以外は素足で過ごします。20代まではダンパーペダルも素足で踏んでいましたから、実家のペダルはかなり劣化していい味が出ています。(それもあって現在はスリッパ)。

ところで、もともとピアノはヨーロッパ生まれの楽器ですので、練習段階から靴を履いて弾くのが日常。日本人は室内では素足(もしくはスリッパ)文化です。練習は素足でも➡本番は靴になるので本番前の練習には工夫が必要になってきます。

ピアノのペダル操作を素足でやると、「脚が疲れること」「ペダルが劣化しやすい」というデメリットもありますが、直に感覚が伝わるということは調整をしやすいというメリットもあります。

私の結論ですが・・・本番で裸足で弾くという行為は選択肢としてはありだと思いますが、事前にホールの理解を得なければならないことと、聴衆に演奏以外の要素で刺激を与えてしまう場合があるという覚悟が必要です。(そのうえで素足で弾く選択をしたのであれば、疲れずに弾くコツを習得しましょう)

ペダルを快適に踏む動画も併せてどうぞ。⇩

・・・こぼれ話・・・

素足で弾く!という現代のピアニストで思い浮かぶのはアリス=紗良・オットさんです。なんでも高いヒール着用で本番を迎えたところ、脚がピアノの下に入りきらなくなってしまい、本番でヒールを脱いで弾いたことがきっかけだそうです。

「エリーゼのために」を弾く!

「ピアノを楽しむための身体マッピングとメンタルの知識」シリーズ第2弾

今回の動画ではベートーヴェン作曲の 「エリーゼのために」を取り上げてみました。 発表会でも人気の曲ですが曲の背景を知り、技術的な面をクリアーするコツをつかんで演奏を楽しみましょう。

動画配信を始めました。

ピアノを楽しむための身体マッピングとメンタルの知識」の動画を非公開で配信しておりましたが、嬉しい事に、ご要望の声もありピアノ演奏家・愛好家の方に向けて公開を始めました。「ピアノ奏者が知っておきたいお得なこと」のページに投稿した記事を動画にまとめ直したものもありますので、どうぞ合わせてご覧ください。(チャンネル登録もして頂けると大変嬉しいです)

レッスンやワークショップの合間に、2週に1本ほどの不定期公開です。

検索ワード:スフェラムジカ

最新動画:発表会・ステージ対策シリーズ Vol.3「本番当日に心掛けたい身体と思考の関係」https://youtu.be/cD9eutlWJDA

各部位の観察と動きが起こる関係性

~解剖実習(オンライン)を経験したことで気づかされたこと~

全ての音楽家に必要とまでは申しませんが、解剖学的な学びも演奏に取り入れることは大切だと思っています。

音楽家である私が今現在興味のあることの中に「身体のことを知る」という欲求があります。この知りたいという欲求から今年の5月にはコロラド州のデンバーで解剖合宿に参加する予定でした。しかし・・・世界はこの状況になり、1年前から準備していた合宿も延期が繰り返され現在に至ります。

そんな中、日本ではお盆と呼ばれる時期にコロラド州デンバーからのオンラインで5日間の解剖実習体験をさせて頂くことが出来ました。先生方や学びを提供してくださったドナー(アグネス)、そして通訳の方には本当に感謝です。

生命活動をしている「人」と活動を終えた「人」では異なることは勿論多い。このような学びに異論を唱える音楽家も少なくないようですが、自分の中の「探求欲」に従って動き、学ぶことを信じています。

今回の体験は深く濃い学びでしたので、1つの記事にまとめることは難しいのですが、部分(各部位)と全体(身体全部)の繋がりと関係性にしぼり、観察をまとめてみたいと思います。

目次
1.音楽家が解剖学を学ぶということ
2.オンライン筋膜解剖
3.筋膜解剖の著者の言葉から
4.まとめ

音楽家が解剖学を学ぶということ

私が学生の頃(30年近く前)身体を痛めたことで、その部位に負担がかからないように注意するようなメンテナンス的な学びはありました。ただ、演奏技術的なことで解剖学的な指導を受けたことはありませんでしたし、率先して取り入れていた演奏家も周りにはいませんでした。もちろんこれは私の周りに限ったことだけだったのかもしれませんが、日本の演奏家が学びの一環として身体のしくみを探求することを取り入れるのが一般的になったのは、それから少しばかり後になってのことのような気がします。

アスリートが身体で起こっていることを科学的に分析し、数値化したものを取り入れる事は、相当前から抵抗なく行われていたと思われます。音楽の世界ではどうだったのでしょう?おそらく数値化することや技術に特化することが本質から逸れているように扱われてしまう風潮があったことは否めません。(少なくとも私の周りでは、抽象的で感覚的な指導、そして経験値からの指導が主流でした)ただここ最近はそのような感覚重視の考えだけに留まらず、芸術も様々な学び方と考え方が受け入れられてきているのではないでしょうか。

オンライン筋膜解剖

さて、話を解剖実習の方に戻したいと思います。今回のオンライン筋膜解剖(3時間×5日間・休憩なし)は私の不安をよそに滞りなく進んでいきました(オンラインとはいえ自分に異変が起こるかも?と多少なりとも心配していた)。解剖を進めていくコロラド州のご献体アグネスとチームがいるオペ室(解剖室?)、解説者のトーマス・マイヤース氏、東京からの通訳の3か所からのオンライン実況です。

※ここからは医療関係者ではない素人のレポート的な内容になるので興味のない方は「筋膜解剖の著者の言葉から」へお進みください。

第1日目は表皮・真皮・皮下組織の三層を観察:死後ということでご献体(アグネスと名付けられたので以後アグネスと呼ぶ)は硬直状態とばかり思っていましたが、この筋膜解剖では薬品(ホルマリンなど)が一切使用されていない冷凍の身体だったため、アグネスの関節は自由に動かすことが可能でした。一時的に死後硬直はあるようですが、その後は外からの力で動くようです。

また筋膜は表層部分だけを覆っているものではなく、皮下組織を覆っているものと、筋肉を覆っているもの等いくつかの種類に分けられているそうです(料理の時に鶏肉の肉と皮の間に在る薄い透明な膜は浅筋膜だったと知る)。各部位を包みこみ、間を縫うように(絡み合うようにという表現の方が適切かもしれない)神経や血管が張り巡らされていました。その様子はまるでWEBのようです。上肢の筋膜は動きが多いこともあり、体重を支える下腿の筋膜に比べて薄いものでもありました。筋膜は動きを制限するものでもありますが、それとともに動きやすくするものでもあると解説してくれたのはトーマス氏。手首にも在る腱を束ねる支帯はそれ自体が独立したものではなく筋膜が厚みを増して帯状のトンネルとなっているということもピアニストとして知ることが出来たのは幸いです。

第2日目は首・肩周りの観察:昨日と同様にアグネスの首は右を向いたり、頷くような動作も柔軟に出来ました。首は小さなエリアですが動きにかかわっている大切な部分ですし、鎖骨を通して上肢に伝わっている様子です。表皮をめくった後に動かすことで、たくさんの小さな筋肉の動きが合わさって大きな動きとなっているのが見えました。すべての筋構造が筋膜と関わって動くことで筋肉が孤立せずに連続している様子です。

その後は声帯・大胸筋・三角筋・・・・肩こりで悩む主婦としては僧帽筋も興味深く観察出来ました。表皮の上から見ると、盛り上がったように見える筋肉ですが意外にも薄っぺら・・・ただトーマス氏によると薄くても大きな力は発揮出来る筋肉だと仰っていました。ピアノを弾くうえでは腕の動きにに関わる筋肉も押さえておきたいところです。外腹斜筋→前鋸筋→広背筋と繋がっている様子も興味深かったです。また中年真っ盛りの女性としては憎い脂肪も、じつは伝達や分配にも関係していると知り(ケガも防いでくれるし)あらためて無駄なものはないと実感です。

第3日目は関節と下肢:私の経験でもある事なのですが、上肢のどこかに痛みがあると下肢がガクガクしたり違和感を感じたりします。これは筋膜のラインが繋がっていることから起こる事だそうで、上肢からの筋膜ラインのつながりを学びました。大腿四頭筋が後ろ側まで回り込んでいる様子やハムストリングの二筋がカヌーに乗り込んでいる様子に似ている形であるという事なども興味深く拝見しましたが、中でも衝撃だったのは坐骨神経です。ピアニストは長時間固い椅子(柔らかい椅子もあるけれど高さが変えやすいものは固い)に座り続けることも多いので、生徒さんからも坐骨神経痛の相談をされたことがあります。ただ恥ずかしながら「坐骨神経痛」と漠然と記憶しているだけで、まさかこの神経自体がこんなにも太くて長いとは想像もしませんでした。梨状筋から始まってハムストリング→膝の裏を通過し足底まで続く神経で、(名前も変わりながら)枝分かれし、なんと長さは1メートルにも及んでいました。後から調べたのですが、人体の神経の中で一番長いそうです。

第4日目は腹腔:お腹の中の内臓と対面する前は、4日目とはいえ緊張が走りました。内臓に達する前に筋肉で最も?メジャーな4層の腹筋群の層を観察していきます。腹筋群自体の役割は沢山ありますが、まず第一に骨がない部分なので内臓を守るお役目があります。個人的には水泳選手を見ていて、6パックと呼ばれているのに8パックに分かれているのが不思議でならなかったのですが、やはりアグネスの腹直筋も8個に分かれていて安心しました。(このホットサンドのように分かれている白線という腱画は、内蔵の重さを支えるのに骨がないため、必要になったということです)。そして、骨盤にとまっている腹直筋が収縮すると肋骨が引っ張られ呼吸を制限するという事実もトーマス氏は仰っておられました。このことは吹奏楽系の演奏者は周知の事実ですが、直接関係のなさそうなピアニストであっても呼吸が演奏に影響することは経験上あることです。

第5日目は骨盤底:アグネスの死因は肛門の癌であったために人工肛門を付けておられました(ご献体の病状などは事前に知らされていないので開腹しないと分からないらしい)。この為、前日に骨盤底の観察が出来ず、執刀してくださったトッド・ガルシア氏が5日目の実習時間までに観察できる状態にまで技術を駆使してしあげてくださいました。その他にも1日に1万7千回呼吸のために動く横隔膜を観察。

筋膜解剖の著者の言葉から

5日間のオンラインの解剖は貴重な体験でしたが、それ以上に心に強く刻まれたことがありました。初日の冒頭に「アナトミートレイン」の著者、トーマス・W・マイヤース氏が仰っていた言葉を書き留めておきましたのでご紹介します。

「一般的な解剖学では筋を単独のものとしてとらえます。人間を車に例えるとすれば、各筋や臓器は部品と考え、それぞれの機能を持つ部品を集めてボディーに詰めて精巧な車になる・・・といったイメージです。解剖学の書籍では部位を解剖学的に分離することで覚えやすくしていますが、私たちの身体は元々は一つの細胞であったことを忘れてはなりません。植物も一つの種から枝分かれして成長していくように、それぞれの部位は単独で存在しているのではなく複合的に関わりあっています。」

まとめ

これまでの身体の中の動きの知識は本で読んだり、聞いたりしたことだけのものでした。もちろん実際に自分で動くことや演奏は出来ますが身体の中を見ることは出来ません。それでも理解していた「つもり」でしたが、今回の解剖実習で「つもり」になっていたことに気付かされました。部位それぞれの機能を知ることも大切ですが、互いに関わりあいがある・・・それも、その時の状況によって影響され方も様々。今後も演奏するものとして自分を実験材料にしていくことは勿論、学びは生きている限り続くと思います。少し大げさな表現でしたが・・・これからも自分の興味のあることを掘り下げ、自分自身の演奏や生徒さんへのアドバイスのヒントを集めていくことが出来そうです。

※5日間の内容を分かり易くまとめる力がなく、とりとめもない児童の感想文のような記事になってしまいました。ここまで読んで頂けたことを感謝致します。

「ピアノは好きだけど練習は嫌い」のサポート術

「ピアノ自体は好きだけど練習は嫌い」・・・これはピアノを演奏する人の多くが感じたことのある感情ではないかと思います。ピアノを教える生業を選んだ私でさえも、「練習しなくても、朝起きたら弾けるようになってる!」などのほぼあり得ない奇跡が起きてくれたらな・・・と考えたものです(真面目に)。今までのブログでも「練習」というワードの記事を数多く取り上げてきましたが、今回は弾く本人ではなく保護者や指導者のサポートする立場から「練習」を考えていきます。

生存と直結する次元ではないピアノ(生存と同レベルに考えられている方も勿論います)を習うという事は「好きか嫌いか」がまず大前提。「練習も嫌いで、ピアノも嫌い」という方には、他に打ち込めるものに時間を割いた方が有意義だとお薦めしますが、「ピアノは好きだけど練習は嫌い」の経験の浅い子供たちの「練習に対する嫌悪感」の理由をひも解き、ピアノ上達のために必要な「練習」にどう導けばよいか?を考えていきたいと思います。

※子供は個性もそれぞれですので固定された方法はありませんのでご承知おきください。

目次
1.楽な方に流れる生き物は人間だけではない
2.そもそもピアノを弾くとは 
3.「練習」の持つ言葉の意味
4.「練習」は量より質
5. 自分自身でどう弾きたいか?を考えられる子供に育てる
6. 小さな成功体験から自信をつける
7.まとめ

楽な方に流れる生き物は人間だけではない

元来、子供のみならず人間は「楽な方、楽な方へと流れる」性質がある生き物ですが他の生物にもこの傾向はみられるようです。

この性質の他の生き物のひとつの例として鶯がいます。鶯は「ホーホケキョッ」と美しく泣いてメスを獲得したり縄張りを守ります。毎年、初春には「ホーホケッケッ・・・」とダメダメサウンドだった鶯たちも、練習によって上達していくさまが我が家の周辺の木々の中からも聞くことが出来ます。これは練習して上達しないと生存していけないからだそうです。ただ、80年前に日本からハワイに渡った鶯は「ホーホピッ」と単純化された鳴き声が主流らしい。周波数や音階も日本のものと比べると単純で少ないとか。これは日本の鶯が季節ごとに移動や縄張り争いをするのに対し、ハワイは同じ場所に留まり、競争が緩やからだからと考えられているのだとか。練習しなくても生きられるのであればそれに越したことはないというのは鶯も同じだったようです。

ピアノを習う子供たちに話を戻します。幼い子供は瞬間瞬間を感情優先に生きている。大人に保護してもらえる身なので日本の鶯のように練習して上達しなければ生きていけないわけではない(脅しや罰を与えれば同じ状況になるかもしれませんが)。大抵の子供は自分の問題点に向き合う事や出来ないものを努力しようということに意味を見出せないのでしょう。もちろん、幼いころから律することが得意だったり、好む方もいますが、人生経験の浅い子供たちは動物的な感覚を優先してしまいがちです。

そもそもピアノを弾くとは

ここでそもそも論。ピアノを弾くということに立ち返ってみたいと思います。ピアノを「弾く」は英語でplay、フランス語ではjouer,ともに「遊ぶ」という意味合いも持ちます。

「ピアノを上達させるにはある程度の痛み(努力・頑張り・犠牲)を伴う」と信じていたのは私だけではなく、勤勉でまじめ気質の日本人はこの感覚に陥る方が多いです。辛かった分だけ幸せはやってくる・・・逆も然りで幸せを求めるにはたくさんの辛さを経験すればいいと錯覚してしまう人も。私も含まれていますが、この考えは根性論が主流だった昭和世代の日本人に多くみられます。ピアノを弾くという事に「遊び」は存在しないという考え方です。

私はピアノを3歳から19歳までは日本人教師、20歳を過ぎてからは何人かのヨーロッパ人教師に師事を受けました。お国の違いだけではないのかもしれませんが、ヨーロッパの教師はピアノを弾く・音楽を教えるという事の根本がplay・jouerのスタンスであったことに、文字通りカルチャーショックを受けました。

先生方のレッスンは音楽に対する愛情に満ち溢れていて、なぜこの曲が素晴らしいのか?どうすればもっと素敵になるのか?の探求心を押さえることが出来ないといったレッスンでした。夢中になっている姿はまるで子供が宝物を説明する様子そのものです。「ここに楽譜があるのに(譜読みをしないで)放っておくことなんて出来ないわ」と新しいおもちゃをもらった子供が包みを待ちきれずにあけるような様子で話す先生もおられ、そのポジティブなオーラが生徒に伝染するのをまざまざと実感しました。

指導者の考え方は、生徒に大きな影響を与えます。ご両親のお考えにもよりますが、これからピアノを子供に・・・とお考えの方には幼い時期に大切なことは技術的な進度ではなく、ピアノを弾くことは「楽しい」という根っこを育ててくれる、そんな導入期の先生を慎重に選択することをお薦め致します。(すでに指導を受けている方もご両親の導き方でかなり違う意識が芽生えるはずです)

練習の持つ言葉の意味

ここで「練習」という言葉に立ち返り、意味を調べてみましょう。

練習・・・技能・芸事などが上達するように同じことを繰り返しならうこと(大辞林第三版)とあり、類義語を調べると稽古・訓練・トレーニング等があります。

稽古・・・武芸・芸事を習う事、学問、学習(大辞林)

訓練・・・ある事を上手くできるように技術・身体的練習を継続的に行わせること(大辞林

トレーニング(training)・・・訓練・教練・養成・練習・鍛錬・調教(weblio)

言葉の持つ意味からも、繰り返し行う・修行、というようなイメージが強く感じます。これは受け取る側の感覚にもよりますが、「楽・楽しい」というイメージの逆で「辛い・長い道のり」の印象が強いように感じます。

練習は量より質

1回弾いただけで出来なかったことが出来るようになるのであれば、誰も練習嫌いにはならないでしょう。出来ないものを出来るようにするという事にはある程度の時間と工夫が必要です。この「時間のかかりそうな険しい道」という負のイメージが子供たちのみならず生徒を練習から遠ざける原因の一つではないでしょうか。

では必ずしも「練習時間の長さは上達に比例する」のか?努力は報われるのか?という問題も出てきます。

一万時間の練習をこなせば、その道のプロ・活躍できるトップの一員に入れるという話をご存じでしょうか?広めたのは「天才!成功する人の法則」の著者 マルコム・グラッドウェルですが、この法則の元となる研究を行ったアンダース・エリクソン教授は単に1万時間かければよいというものではなく「質」も勿論大切だと言及していたそうです。

そう、「量」は無意味とまでは言い切れませんが「質」がもっとも大切だと言えます。

またこれは「練習」という言葉に既にマイナスイメージを持つ子供や、レッスンの時間しかピアノに触れない子供への対策ですが、課題の出し方を「練習する」ではなく➡「チャレンジする」・「挑戦する」・「実験する」に変えてみるのもひとつの手だと思います。いつもと違った視点からピアノを見ることが出来るようになり、言葉一つで変わる子もいます。

自分自身でどう弾きたいか?を考えられる生徒に育てる

ピアノ練習の量を重視するあまり、間違ったやり方を逆に上塗りして身体に染み込ませている様子を時々見かけます。とくに家での練習を数で即したり、練習時間を重要視させた生徒に多いです。

導入期~初級レベルであっても、練習の方向性をどこに向ければよいか?自分自身がどのように弾きたいのか?のイメージを持てるような言葉がけ大切です。それを指導者や保護者の方が根気よく問いかけることによって、考えてピアノに取り組むことの面白さを、自ら育んでいける子供に育つでしょう。

これは週一回程度かかわる指導者のみでは大変難しく、日々一緒に過ごす保護者のお力も必要になります。自分の幼少期も然りですが、自身の力だけで成長出来るようなお子さんも確かに存在しますが、それは「稀」な例だと思っていただくのが賢明です。

成功体験から自信をつける

子供に限らず、誰でも少ない努力で大きな成果が出ることを夢見ます。例えば今日1日で仕上がりに程遠い一曲を暗譜する!などの、1週間の課題をこの日1回の練習でものにするというような行動です。

こんな大きな目標が達成出来たら本望ですが、たいていは成功せずに落ち込むことになります。この繰り返しを続けていれば「練習」が嫌いになるのも当然です。ではどうすれば良いのでしょう?

まずは自分の決めたことが自分自身の力で果たせるという体験をする。欲張らず、毎日2小節でもいいから弾いてみるといったような小さな目標から始めます(親も指導者も一つ成功すると欲が出てしまい、次のステップに進ませがちですが、ここはぐっと辛抱です)。そしてそんなちょっぴりの成功を本人だけではなく周りにいる人間も心から喜びましょう。「ほんの少し手を伸ばせば届くような小さな成功体験を喜べる体質」、その体質が出来ることによって、ゆくゆくは自ら目標を定めて挑戦することを楽しめる人間に成長できると思うのです。

まとめ

1.練習が嫌い=ピアノが嫌いとは限らない
2.導入期は音楽にポジティブなイメージや興味を大切にしている指導者を選ぶ
3.指導者や保護者は子供自身が音楽のイメージを持てるように声掛けする
4.練習は量より質を重視
5.「練習」をポジティブなイメージを持つ言葉に変えて声掛けする
6.「考える子」に育てる
7・小さな成功体験も喜べるも体質を作る

今回は私自身のピアノ指導30年を振り返り、自戒の念を込めて「ピアノは好きだけど練習は嫌い」という生徒に焦点をあてて今現在の考えをまとめました。

子育ても同様ですが、ピアノ演奏も指導方法も対象となる子の性質や環境が異なるため、答えは一つに絞れません。その都度「考える」ことが出来る子供たちを一歩離れたところからアドバイスすることが大切です。そして、ピアノの前に座って何のルールにも縛られず無心に音楽を楽しんでいた子供たちの可能性を思い出し、その可能性の芽を摘んでしまっているのは、もしかしたら周りにいる私たち大人なのかもしれないという事も頭の片隅にいれて頂きたいです。

筋感覚をきたえて自分の理想の音を作る

ピアノは指だけを動かして弾いているのではなく、常に身体全身の様々な部分を協調して動かしているという事は、もうご存じかと思われます。今回は音(楽)を作り上げるための、全身の情報を得ることに欠かせない「筋感覚」についてまとめてみました。

目次
1.筋感覚とは?
2.ピアニストが筋感覚を養うメリット
3.筋感覚を上げるには
4.まとめ

筋感覚とは

「筋感覚」は普段、あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、視覚・聴覚・味覚・触覚・嗅覚の5つの感覚に新たに足されるべき、六つ目の感覚とも言われています。

筋感覚・・・視覚や触覚など古くから言われる感覚からの情報が一切なくても、自分の身体の位置や動きを知ることが出来る、厳密な意味では感覚情報と呼べるものです。私たちの身体には、位置と動きに関する情報を集めることのできる特殊な※神経終末が(主に関節や結合組織の中に)存在しているのです。情報を脳に送るこの神経は、映像,匂い、音、味、手触りといった他の感覚情報を伝達する神経とは異なり、「運動」に関する情報を脳に伝達します。したがって、この感覚は「運動覚」あるいは「筋感覚」他・・と呼ばれています。※神経終末・・・筋肉や腱の伸長に反応して活動する、筋紡錘やゴルジ腱器官など、感覚神経の末端にある固有受容器   『ピアニストなら知っておきたい「からだ」のこと』より抜粋

このように私たちが普段当たり前のように使っている機能、例えば・・・目を閉じて頭の上に手をのせたり、手を見なくても思うような形に変えることが出来る、といった身体の様々な部分の位置や動き、身体の曲がり具合や筋肉の力の入れ具合を見なくても、感じることが出来る機能のことを言います。

※一般的に呼ばれる「筋感覚」という言葉は医学用語ではありませんが、深部感覚(深部知覚・深部覚)・固有感覚・固有受容感覚・自己受容感覚などとも呼ばれています。「身体内部の目」のような働きをさします。

ピアニストが筋感覚をきたえるメリット

「ある音楽をのイメージを思いついたとき、それがすぐさまイメージした音楽を奏でるのに必要な動きの筋感覚的な感覚に変換されるような(中略)音楽的な想像力を筋感覚的な想像力と統合できるかどうかは、筋感覚を育て、身体との一体感を養い、優れたボディーマップを獲得できるかにかかっています。『ピアニストなら知っておきたい「からだ」のこと』より抜粋」

上記にもあるように、身体への気付きを養うこと、そして筋感覚」を育てることは動きの質を高めることになります。筋肉の「トーン」や「張り」また「収縮度合い」のグレーディング(感度)を上げて、音楽的要素と結び付けられるようになれば遠回りすることなく、どこをどうやって、どのくらい使えばいいか?が分かるようになるのです。やりたい演奏を確実に引き出してくれるツールになるのではないでしょうか。もちろん、その選択肢は数多くあるので、観察➡実験➡結果を繰り返し自分に最適な選択をすることは必須です。

筋感覚を上げる方法

筋感覚を上げるには、今までの使い慣れてきた習慣をいったん手放すことも大切です。ピアノの前以外でも、普段から新しいやり方を挑戦し取り入れてみましょう。

例えば…聞き手ではない方でアイフォンの操作をしてみたり、人差し指ではなく薬指や小指で操作する。他にも、電車のつり革につかまらず脚や体幹の筋肉を意識して重心のバランスを変えてみたりするのも面白いですね。普段使い慣れないものを使った時に感じる違和感を✖とせず、まずは実験しそれを分析してみる。これは身体の内部に目を向けるきっかけとなり、普段使わない筋感覚を上げることにも繋がるでしょう。

まとめ

ピアノの前はもちろんですが、その時間だけではなく、こんな感覚を普段から磨くことも大切です。実験し検証することを楽しめる自分を育てることは、ピアノの成長に繋がるでしょう。

演奏者が自分の望み通りの演奏を作り上げるには、思考と身体を改革していくことが大切だと常々思います。そのためには音楽的な想像力を筋感覚的な想像力と統合できるようにすることが重要な要素の一つとなるのではないでしょうか。

自分の作り上げた音楽(演奏)が全ての人と共感し合えるかどうかは誰にも分かりません(自分の望みを無視することで、より多くの聴衆が好む演奏を作り上げることも出来るかもしれません)。ただ、自分の信じる演奏が聴衆の周波数と一致することはあります。あのゾーンにも似た感覚を全てのピアノ奏者に経験して頂きたいと心から願っています。