指が速く回るとか、ミスなく早いテンポで弾けることなどをピアノ演奏ではざっくりと「テクニック」、またそれが優れた演奏者をテクニシャンなどと呼ぶことが多いです。もちろん、誰もが欲しいスキルではありますが、これにばかり注目して構成された演奏は賛否両論あるのも事実です。
今日はテクニックをどう捉えるか?について考えてみました。
1.「テクニック」という言葉の由来
テクニックは、ギリシャ語の「テクネ(techne)」に由来する語。
「テクネ」は、内在する原理を正しく理解した上で何かをする(あるいは作る能力)といった意味や、金細工師が持っている実用以上の装飾能力という意味がある。
また、「テクネ」はアートの語源にもなっている。<語源由来辞典より>
2. 「テクニック」と「表現力」
そして一般的に「テクニック」の相対的に使われる言葉として「表現力」があります。
「表現力」は感情や思考などを伝達可能な形式に表す能力。特に、より効果的・印象的なものとしてそれを伝える能力<weblio辞書より>とあります。
テクニックではなく表現力のある演奏を・・・というような言われ方をよく耳にします。音楽業界ではあるある表現ですが、両者を分けて考えるものなのか?と私は疑問を持ちます。
3.演奏で伝えたい事を優先する (まとめ)
演奏で何より大切なのは演奏者のメッセージを込めることであり、イメージしている音を自分も含めたピアノという楽器で伝えることです。(精密で速い音を追求するのであればデジタルにはかないません)
ただ、伝えたい音楽(音色や構成力)を表すには思い描いた曲想を正確に紡ぎだす技術が必要になります。脳から筋肉に伝達する能力がスムーズに伝わらないようでは望む表現も伝えられないもどかしい状況となってします。「テクニック」はアクロバット的な曲芸を披露する目的のものではなく、思い描いた曲想(表現)を思い通りに表現することを可能にする不可欠な技術です。
「テクニック」という言葉がギリシャ語で「アート(芸術)」という意味の「テクニ」という単語から生まれたことからも、「テクニック」が一人歩きしないような演奏を心掛けたいものです。
テクニックとは・・・自分の望む表現を可能にするツールです。